マルセロ・アルバレス(ラダメス・ロールデビュー）のインタビュー(2010.4.23)：オペラ歌手のギャラについても一言...

　ここ数年の間に、次々レパートリーを広げているマルセロ・アルバレスですが、ロンドンで、4月27日プレミエ、マクヴィカー演出の《アイーダ》でラダメス・ロールデビューです。この公演を控えてのインタビュー、アイーダの演出のこととか、ラダメスについてのインタビューですが、本題よりも後半の部分が面白い.......オペラ歌手のギャラについて、具体的なことも書かれていたりで、興味を引かれました。
　世界的な不況に見舞われている昨今、オペラ歌手も例外ではないということでしょう.....

　1980年代、一声10万円(ドル?）と言われてたパヴァロッティの時代は終わり、今は、歌劇場のギャラの最高額は12年前に固定されたまま変わっていない......アルバレス自身は、トップクラスのギャラをもらっているが、40％は税金にもっていかれるし、エージェントの手数料、ホテル代、宿泊費、アパートメントの家賃の高騰、手元にはほとんど残らない.....貧しくはないけど....世界最高のテノールの生活かどうか......若い歌手たちは、月500ポンド（500×143円=71500円)で歌っているという現実....彼等はどうやって生き残れるんだろう.....



記事全文はこちら→Marcelo Alvarez: 'directors know I'm a little hysterical'

　M.アルバレスは2015年までスケジュールびっしりだそうですが、これもテノールだからこそのようです。私自身、テノールのヴィットリオ・グリゴーロ(1977.2.19生)に注目しはじめて、自然に他の同世代の歌手の動向が目につくようになって感じたことは、テノールは品薄、希少価値なので、トップレベルの歌手でなくても代役、穴埋め歌手ででも充分食っていけるようですが、バリトン、バスは供給過多のようで、かなり厳しいみたい...ということです。
　また、クラシックのCDは、2000枚〜2万枚も売れればいいほう(アラーニャ言)だそうですし、アルバレスの言うように今の時代オペラ歌手の億万長者はいないんでしょうね。ヴィットリオ・グリゴーロは、2006年にポペラのアルバムを出してヒットさせて、EBBAも受賞しています。オペラ歌手としては異例、ジャンルは違ってもオペラ歌手としてCD売り上げ桁違いのダントツ1位でしょう。今秋発売のアリア集はどのくらい売れるんでしょうね......

　このインタビューでM.アルバレスは、オペラ・ブロガーは、「百害あって一利無し....オペラ界の癌だ....」と断罪しています。M.アルバレス自身に起こったことではないが、実際にブログの執拗な攻撃、悪口によって、仕事を失った同僚もいるとか.....この手のブログに左右される劇場ディレクターもいるんだそうです。

　マクヴィカー演出の《アイーダ》ですが、ネット上ですでに舞台写真がいろいろ見られます。メル・ギブソンの映画『アポカリプト』を思い出して、気持ち悪くなりました。アルバレスのラダメスの扮装は、日本の戦国武将っぽい....あきらかにあれは日本刀です....ということは『ラストサムライ』＋『アポカリプト』、見た目は、血みどろ系《アイーダ》のようです。

メモ：
メトのトップクラスギャラが1公演＝1万5千＄×94円=141万....今は円高なので、150万円切ってます。

◎マルセロ・アルバレスと同世代の人気テノール：
マルセロ・アルバレス Marcelo Álvarez 1962.02.27- ［アルゼンチン］
ホセ・クーラ José Cura 1962.12.05- ［アルゼンチン］
ロベルト・アラーニャ Roberto Alagna 1963.06.07- ［フランス］
それぞれ、レパートリーが異なる部分もありますが、これで全員ラダメスを歌ったことになります。クーラはすでに両方ともレパートリーですが、今後アルバレスは《運命の力》、アラーニャは《トゥーランドット》を歌う予定です。

関連記事：。
オペラ歌手「使い捨て」？ 自己責任？ 歌手のギャラについての記載有り
マルセロ・アルバレス、天下のスカラ座を袖に.....
FT.com _ Arts - Tomorrow’s tenors.pdf

コメント 12

ブロガーはオペラ界の癌ですか〜〜。キツいなあ。
だけどブロガーって結局、それぞれの感想を言っているに過ぎませんよね？　それを真に受けてキャスティングの参考にするディレクターの方が悪いと思いますけどね・・・。

オペラ歌手の収入ですが、一晩１５０万円〜２００万円相当だったら、フローレス辺りでも決して「百万長者」ではないって事なんでしょうか？　グリゴーロ君みたいにポペラのアルバムがミリオンセラーになった人はそこで貯金ができるから確かに別格ですよね。
by babyfairy (2010-04-30 06:19) 

マルセロ・アルバレスはデビュー直後から注目のテノールです。経歴もインタビューなどでの発言も個性的でおもしろいですね。デビューCDから聴いていますけど、とてもいいと思ったのはコヴェントガーデンでのマントヴァ公です。ラ・ヴォーチェのエドガルド＠ルチアを劇場視聴できましたが、最高^^+でした。

オペラ歌手の報酬について
もうオオムカシの話ですけど、P.ホフマンの伝記からの記事をいくつかTBします。よろしく。ホフマンは、バレー（ダンサー）なども低報酬でこき使われていると感じていたようです。

もう記憶があいまいですが、ムカシ読んだ本によれば、コヴェントガーデンなどの研修制度もけっこう奴隷労働的側面があるみたい・・

オペラ歌手に限らず、
世界中、あらゆる分野で、労働条件がよくなるどころか、
ワーキングプアという言葉が一般化してしまったように、
格差拡大、使い捨て、
大げさに言えば、これも本からの受け売りですけど、
古代国家に逆戻りとさえ言えるようです。お先真っ暗。
どうすればよくなるのでしょうねぇ・・
by euridice (2010-04-30 10:28) 

babyfairyさん
最近は、音楽評論家たちもブログで発信してますからね.....
まあ、トップクラスの歌手は、ちょっと叩かれようが悪口書かれようが、仕事に支障はないでしょうけど.....

フローレスもオペラの公演だけだとそれほど収入にならないと思いますけど、けっこうコンサートをやってますし、ちゃんと儲けていると思います。

グリゴーロは、ポペラのアルバムがヒットする前ですけど、2004年のインタビューで、すでに「お金持ち」発言があるんですよ。ルーチョ・ダッラ（カウンタトーレの大物)と"Tosca Amore Disperato"というミュージカルかオペラを共同制作したかららしいんですけど、これで相当収入があったみたいです。
ライモンディなんかも映画に出てますし、モナコ国民ですし、お金には不自由してないでしょう.....

by keyaki (2010-04-30 11:04) 

euridiceさん
TBありがとうございます。

>一回の出演につき18,000マルク
は、円換算でだいたい150万〜200万ですから、今と大差ないということですね。

>コヴェントガーデンなどの研修制度もけっこう奴隷労働的側面があるみたい・・
アルバレスが月7万じゃ食っていけないよ....と言っているのは、きっとROHの研修生さんたちのことでしょうね。
by keyaki (2010-04-30 17:18) 

＞クラシックのCDは、2000枚〜2万枚も売れればいいほう(アラーニャ言)
レコードの売れ具合についても、TBしました。TB先からHPの「伝記」のその部分にリンクしています。1980年代の話ですし、誤訳無しの保証はしませんけど、興味のある方はどうぞ。
by euridice (2010-04-30 17:41) 

>アイーダの演出のこととか
ちょっとSFドラマ「スターゲイト」みたいだ、と言っていますね。舞台写真を見ると納得、です（＾＾）日本と中国が混ざったようなラダメス像ですが、一応将軍に見えますし、アルヴァレスには似合っている衣装だと思います。あと、アイーダの青いドレスは素敵ですね。ご存知の通りマクヴィカー好きなので、この演出はとっても気になっています。

>若い歌手たちは、月500ポンド（500×143円=71500円)で歌っている
それでも、歌える場所があるだけでもラッキーな状況なんでしょうね。どこの世界も、厳しいですねぇ。
by Sardanapalus (2010-05-01 23:46) 

euridiceさん
ありがとうございます。
「クラシック・レコードだったら最終的に2000枚売れればいい方だ....」
とあります....クラシックとポップ系はやっぱり桁違いのようですね。
Sonyから出す、オペラのアリア集もプラチナディスクになって欲しいですね。
by keyaki (2010-05-02 01:04) 

Sardanapalusさん
私もマクヴィカーの演出は、ユニークで舞台美術も独特で好きです。
このアイーダは写真でみると、ニッポン、中国、マヤ文明っぽい....戦勝祈願に若者を生贄にするというのが可哀想....戦力になるのにもったいない......

>「スターゲイト」
見たような気もするし、見てないような気も....
見てみようかな......

ギリシャとかポルトガルもオペラが盛んなようですが、影響がないってことはないでしょうね。
by keyaki (2010-05-02 01:27) 

アルバレスは昨年１２月、バスティーユの「アンドレア・シェニエ」で久しぶりに聴きましたが、初期の彼の長所だったスタイリッシュな繊細さは維持しながら、力強さも必要十分にはあって立派な出来でした。役デビューだったよう。
舞台姿はさすがにもう０２年にシャトレでチョーフィ(キャンセルしたドゥセの代役だった）と一緒に「ルチア」の仏語版歌った時の「スタイリッシュな！」面影は皆無でしたが（笑）。

昨年１０月９日付の仏フィガロ紙がオペラ歌手のギャラについて記事を載せてましたので、大要を紹介しましょう。
当時離婚最中だったアラーニャのインタビューもあって、パリ郊外移民地区から実力だけで這い上がってきた彼らしい率直な返答ですが、まあアルバレスが言ってることと大差ないようですね。

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０９年１０月現在、バスティーユでネトレプコ（愛の妙薬）、コヴェント・ガーデンでアラーニャ（カルメン）、メトでマッティラ（トスカ）が歌っているが、３人とも同一ギャラで１晩税込み１万５０００ユーロ。１文の上乗せもなし。
航空券、ホテル代など滞在費は歌手負担。
負担圧縮のため、例えばドゥセはマンハッタンに、フレミングはパリにマンションを保有し、同僚に貸したり交換し合ったりしている。

ネトレプコは１０月１０日から始まる「愛の妙薬」に出演のため、９月２５日にパリに到着したが、自分と旦那のシュロットと子供のベビーシッターの航空券は彼女が自分で払った。

超高級ホテルや専用ジェット機を要求するシャーロン・ストーンやミック・ジャガーの類のスターに比べれば、オペラ・スターの金銭感覚は常識的。

オペラ公演は常に赤字であり、公的補助やメセナに頼っている以上、歌手側からの過剰要求は難しい。
オペラ劇場監督がお互い協議している結果、ギャラはロンドン、ニューヨーク、パリで同一。これはショウビズ界では例外的事態。
劇場監督は常に電話で情報交換し、パリ・オペラ座は年に２回アーティストごとのギャラ一覧表を作成している。

ギャラ・トップ歌手１５人に与えられている「トップ・フィー」は１晩１万５０００ユーロ。
ダムラウ、コッシュなど中堅クラスは、１晩５０００－１万２０００ユーロ。
端役は１晩１０００ユーロ以下。

サルスエラ（マドリッドのレアルの誤り？）とビルバオは高額補助金のおかげで、現在１晩２万ユーロのギャラを支払える唯一の劇場。
以前は、こうした約定破りをするのはイタリア劇場で、しかも袖の下がプラスされていた。（この話は以前ラジオでも聞いたことあり。イタリアは劇場数が多く、競争が激しいためとのこと。）

結局、歌手にとっては収入上乗せの道は、ディスクとリサイタルを重ねることしかない。
リサイタルは民間プロデュースが大半のため、市場論理でギャラが決まり、歌手により１晩３万―２０万ユーロ。
ゲオルギューなど多くのトップ歌手はオペラとリサイタルのバランスを考えているが、バルトリだけはリサイタルに集中、オペラはギャラ公演にしか出ない。
「しかし、プレスティージュがあって契約獲得の後押しになるのは結局オペラ。長い目で見ればリサイタルだけでは客は飽きる」（メトのゲルプ総監督）。

０９年１０月現在、ゲルプは２０１４－１５年のシーズンを準備中だが、歌手の５年後の声を押し測るのは難しい。
アメリカではメセナ資金が後退し、米オペラはメトを含め、プログラム縮小を強いられている。米音楽家労組も事情を鑑み、オペラの映画館中継についてはノーギャラを承諾した。
バスティーユのプログラミング担当者は言う。「アメリカのプログラミングには穴が開き始めている。ユーロ高もあり歌手の欧州への流出が起こりかねない」。

アラーニャ・インタヴュー：

「恵まれてるけど、皆が考えてるほど金持ちじゃ全然ないよ。スイスに住んでるけど、税金はフランスに払ってる。実業家じゃないから財産の正確な額はわからない。
ギャラ公演では１晩６万ユーロもらう。カネが要るときはアブダビや日本に行くね。１０万ユーロもらえる。ディスクの著作権料は１枚につき２５セント・ユーロ。ＤＶＤやオペラの映画館中継はノーギャラだよ。
オペラのギャラは１晩税込み１万３０００ユーロだけど、結局何も残らない。半分は税金、後の半分はマネージャー代と必要経費で消えちゃう。ロンドンにはカルメン２公演（これは多分間違い）のため１ヵ月半いた。コヴェント・ガーデン近くのマンション借り賃が週１５００ポンド。助手が料理と洗濯をしてる。
ロンドンではカルメン出演の同僚も同じ建物に泊まってて窓越しに挨拶したり家族みたいで快適だった。僕の唯一の贅沢は住み心地の良い場所を見つけること。ニューヨークでは本当に大変で、メトのギャラは全部経費で消えちゃう。

稼いだ分は自分が愛着のある芸術プロジェクトに回し、また自分の家族や友人の面倒もみてる。自分のためには何も使わない。
２９歳で最初の妻のフローランスに死なれてから、物質的財産に興味はない。でも大学入学資格試験に通ったばかりの１７歳の娘オルネッラのためには何かしてやりたい。
ＥＭＩを辞めたとき、協力者と一緒に自分の録音カタログを８０万ポンドで買い取った。預金とシチリア・アルバムの著作権料前借りでまかなった。娘に残してやるためだけど、マイケル・ジャクソンとは桁違い。クラシックのディスクは世界中で２万枚売れれば良い方だからね。」

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世界的不況で、欧州でスペイン・ギリシャ・ポルトガルは特に深刻ですが、民間資金への依存度が高い米劇場の方が、直ちに影響を受けやすい状況はあるかも知れませんね。
by 助六 (2010-05-02 06:01) 

助六さん
いつもありがとうございます。
こういう情報すっごく興味がありますので、今後ともよろしくお願いします。

アルバレスは、イタリアでも人気者ですが、どこでも好意的に受け入れられていますね。
アンドレア・シェニエは、2007年にスカラ座でロール・デビューだったのを、スカラ座と喧嘩して出演拒否、でも、昨年ちゃんとトリノで歌っています。スカラ座に出なくてもローマとかトリノ、ヴェローナの音楽祭とか常連ですから、痛くもかゆくもないんでしょうね。
スカラ座はNHKと同じでギャラが破格に安いようですし、スカラ座でプレミエで歌ったという実績だけ残ればそれで充分ということでしょうね。

>カネが要るときはアブダビや日本に行くね。１０万ユーロもらえる。

あらら、アラブと日本が同列....今は日本じゃなくて中国かな.....
10万ユーロなんて武道館とかスタジアムでのコンサートでしょうけど、オペラ歌手では集客に無理があると思いますけど.....一晩で10万ユーロ（今だと1200万円）は絶対無理、全国各地をどさ回りしていただかないと。

グリゴーロは、若いですけど、もしかしたらトップクラスのギャラかも....というか、トップクラスのギャラでしか契約しないのかも.....メトもコヴェントガーデンもやっとここにきて出演することになってますから、安売りはしないってことかも.....チューリヒでは五つ星ホテルに滞在していると書かれていましたから、相当ギャラがよくないとできませんよね。

クラシックのCDはよく売れても2万枚.....厳しいですね.....印税が 30円程度なんですか.....作曲作詞家にも印税を支払う場合は、歌手は、CD代の1％ということもあるようですから、その点ではオペラは有利ですね。
なにもしなくても売れれば毎年小銭が入ってくるということで、やっぱり引退後のためにもなるべくたくさん出しておきたいでしょうね。

グリゴーロは今回SONYと契約しましたが、前のポペラのアルバムの時のように１〜２億円で契約ということではないようですので、クラシックのCDは、べらぼうには売れないので、出来高払いということなんでしょうね。

ご紹介して下さった記事と、今までの情報をまとめて記事にしたいと思います。

アラーニャのアルバム「美しきシチリア」は売れているんでしょうか....ポップ歌手のようにプロモーション・ツァーをやっているようですが。
これは、買い取ったわけですから、売れればまるまる自分の儲けということですね。
by keyaki (2010-05-02 10:22) 

ギャラ・契約関係情報をメモしておきます。
１４年１１月２１日付仏フィガロ紙記事内容の横流し。
執筆者のクリスチアン・メルランは本職は大学の独文教師で、批評家としても音楽ジャーナリストとしても仏で一番まともな部類という印象ですので。

－ヴィーン総監督のメイエによると、人気歌手の契約は３～４年前。
－メイエによるとプログラミングの手順は「まず人気歌手４０人のスケジュールをチェック。例えばニーナ・ステメがこの日に空いていると分かれば、何を歌いたいか彼女の意向を聞き、それから劇場のプログラムとの両立性を考える」。
－独オペラ劇場会議はギャラ最高額を決めており、メト、ロンドン、パリはギャラ一覧表を定期的に交換している。だいたい良識が守られているが、ミュンヘンなどはギャラをつり上げているとの噂がある。
－現在の「トップフィー」は１公演１万７０００ユーロ程度。
－メトは経費削減プランに従ってスター歌手にギャラ７％引き下げを依頼した。
－パリ・オペラ座総監督のリスネールによると「カウフマンがパリで歌う場合は『トップフィー』でそれ以上ではない」。
－トップフィーは劇場により差がある。メイエによると「最高ギャラはヴィーンとロンドンでは同額だが、ミュンヘンではそれより４０００ユーロ、チューリッヒでは１万ユーロ高い」。
－源泉徴収の税率が国によって大きく異なる事情を顧慮する必要がある。スイスでは１５％だが独では４０％。
－新演出の場合、歌手はリハーサルで１カ月、上演で２～３週間、計約２カ月間拘束される。一部劇場は練習にも手当を払うが、パリはその限りではない。
－交通費は払われるが、練習期間中に往復する場合の費用は出ない。
－宿泊費は出ない。
－リスネールによると、スター歌手を引き付けるにはギャラに加え、芸術的内容が重要。「エージェントでなく、歌手と直接相談している。歌手がこれから歌いたい役を顧慮して長期プロジェクトを組んでいる」。
－その場合、４年後の声の変化を予測するのは難しいから当然柔軟さが必要。リスネール：「ディドナートはパリでの「ばらの騎士」契約にサインしていたが、自分の今のレパートリーに合わなくなったので役を放棄すると言ってきたので受け入れた」。
－ミュンヘンもネトレプコには柔軟な態度で応じた。１４年１１月の「マノン・レスコー」のキャンセルを受け入れ、代役にオポライスを起用する代わりに、１５年７月のミュンヘン・オペラ祭での「オネーギン」では予定されていたオポライスに替わってネトレプコが歌うことになった。
－メイエによると「仏サッカー・チャンピオン・リーグの中級選手の稼ぎは歌手のそれよりずっと多い」。リスネールによると、歌手の平均ギャラとトップフィーの差は１対３に過ぎないが、大企業従業員と経営者の給与差は最高１対１００。従ってスター歌手のギャラはべらぼうとは言い難い。
－歌手にとってはオペラ公演よりリサイタルの方が実入りはよい。一部の国ではリサイタルのギャラは数字６桁に達する。
－従って猜疑心を呼ぶケースも出てくる。カウフマンが１４年７月に「運命の力」を健康上の理由でキャンセルし、その２日後にペララダでカタルーニャの太陽の下で絶好調でリサイタルを歌ったことなどはその例。
－仏地方劇場ボルドーの最高ギャラは１万ユーロだが、それが適用されるのは１シーズン１～２回のみ。しかし、ステメの仏での最初の契約はボルドーだったし、メトの契約を得たヴァン・デン・ヘーヴァーもボルドーで歌っている。
－ボルドーのフケ監督とマセ芸術助役は毎年１回米を訪問し、サンフランシスコ、メト、ヒューストンのヤング・アーティスト・プログラムで若手歌手を発掘している。
－ギャラは名声だけでなく、特定種の声に関する需給関係でも吊り上がる。ジークフリートを歌えるヴァーグナー歌手は僅かなため、無名でもギャラをつり上げるのは容易。
－仏にはないが独墺には存在する座付歌手の場合はギャラは月給の形で支払われるが、独立ソロ歌手のギャラよりずっと低額。

http://www.lefigaro.fr/musique/2014/11/20/03006-20141120ARTFIG00263-le-casse-tete-d-un-casting-de-reve.php （ネットで読めるのは記事の頭のみ）
by 助六 (2014-12-15 13:17) 

助六さん
ありがとうございます。

>－現在の「トップフィー」は１公演１万７０００ユーロ程度。

円換算すると1€=148円として約250万円
ちょっと前のメトの150万円からずいぶん上がっているのかな....
為替の関係かな。
2012年の平均が1€=101円なんで、171万円
為替の影響もありますね。

オペラ歌手ってそんなに儲かる商売じゃないですよね。
メトのオケとか合唱の団員の年収が2000万という方が、すごいですよね。しかも福利厚生が充実していての金額だそうです。
オペラ歌手で純益2000万円稼ぐのってけっこう大変だと思います。

>－歌手にとってはオペラ公演よりリサイタルの方が実入りはよい。一部の国ではリサイタルのギャラは数字６桁に達する。カウフマンが１４年７月に「運命の力」を健康上の理由でキャンセルし、その２日後にペララダでカタルーニャの太陽の下で絶好調でリサイタルを歌ったことなどはその例。

カウフマンのスケジュールはすごいですよね。リサイタルを目一杯いれてますから、一つや二つキャンセルしたって大金が稼げるってことですね。
でも、オペラ歌手としてもキャリアで客がくるわけですから、オペラにもちゃんと出ないとダメってことなんでしょうけど。
by keyaki (2014-12-15 14:41)