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《シチリアの夕べの祈り》テノールの歌のカット☆☆ナタリー・ドゥセのボレロ [シチリアの晩鐘]

 前の記事で取り上げた《シチリアの晩鐘/シチリアの夕べの祈り》、このアリーゴという役は、テノール殺しの難役といわれているそうです。この高音のRe(D)のカデンツァのある歌をカットしても,尚、難役なんでしょうが、今回のパレルモ・マッシモ劇場来日公演の《シチリア島の夕べの祈り》の公演でもあまり話題にされないのは、馴染みのないオペラのせいなのでしょうか。ちなみに、ご覧になった方にお尋ねしたところ、ばっさりカットで、残念!ということでした。
 たまたま、ルッジェーロ・ライモンディには因縁のある演目ということで、私には、まあまあ親しみのあるオペラですので、このテノールのアリアについて、わかったことをメモしておきます。
(写真右上:Segalini著"Ruggero Raimondi"から1978年フィレンツェ:レナータ・スコットとRR)
第5幕:
騎士や娘たちが中庭で、エレナ公女の結婚を祝って合唱し、エレナはそれに応えてボレロ"Mercè diletti amici友よ、ありがとう"を歌う(この曲は、コロラトゥーラお得意のソプラノがコンサートでも取り上げて歌ったりしている)。続いてアリーゴが、永遠の愛を誓うシェーナとメローディア"La brezze aleggia intorno "を歌い、 途中からエレナも加わり、最後に、アリーゴが「父の元にちょっと行くことをお許し下さい。すぐに戻ってまいります」するとエレナが「すぐに戻ってきてくださいね。Addio」アリーゴが「Addio,Addio」と舞台から退場するシーンです。このアリーゴの最後のAddioのカデンツァに高音のRe(D)があります。さて、このアリーゴの3分程度のアリアをどうするかですが以下の三つのパターンがあります。

・楽譜通りにちゃんと歌う
・ばっさり完全にカット
・最後のカデンツァだけをカット、つまりAddioが一回だけになる


私が聴いたり、見た(映像)ものの結果は、以下の通りです。
♪1964年、ローマ歌劇場、ガヴァツェーニ指揮、リマリッリ[完全カット]
♪1970年、ミラノ・スカラ座、ガヴァツェーニ指揮、G.ライモンディ[完全カット]
1973年、スタジオ録音、レヴァイン指揮、ドミンゴ[歌っているが高速で通過]
1974年 パリ、サンティ指揮、ボニゾッリ[歌っている]
1978年、フィレンツェ、ムーティ指揮、ルケッティ[辛うじて歌っている]
1986年、ボローニャ歌劇場 シャイー指揮 、ルケッティ[カデンツァだけをカット]LD
♪1989年、ミラノ・スカラ座、ムーティ指揮、メリット[歌っている] 映像
♪2003年 ブッセート・ヴェルディ劇場、ランザーニ指揮、ズリアン[完全カット] 映像
2004年 チューリヒ歌劇場、サンティ指揮 M.ジョルダーニ[歌っている]
♪2004年、メトロポリタン歌劇場、シャズラン指揮、カサノヴァ[完全カット]
♪2007年 パレルモ・マッシモ劇場来日公演、ランザーニ指揮、ヴェントレ[完全カット]

※ムーティ指揮フィレンツェでは、ルケッティは、最後のカデンツァがちょっと妙なかんじですが、ボローニャでは、この部分だけをカットして歌っています。こうして見てみますと完全カットの方が、伝統的なようですが、私は、完全カットより、いいと思います。

※メリットはロッシーニ風ヴェルディに批判が出たためか、このシチリアのあとで、もう二度とヴェルディは歌わないと宣言したそうです。

※前記事でボニゾッリとM.ジョルダーニの歌唱が聴けます。


 ところで、不思議なのは、ドミンゴなんですが、高音は得意ではないので、舞台では、曲目によって、半音下げて歌うと彼自身が言っています。トロヴァトーレの録音の時は、あの"Di qella pira l'orrendo foco"の最後のハイCに、何回も挑戦して、やっときれいに決まった時は、合唱団、オケ、共演者共々感激して彼の努力を賞賛した、というような 話があるんですが、いとも簡単に、このカデンツァを歌っています。

♫ Mercè diletti amici
ただ、ボニゾッリとかジョルダーニとは、全く違って、Reの音を延ばさず通過しているだけです。高音が得意とはいえ、ロッシーニ歌手であったクリス・メリットも同じような歌い方に聞こえますが、こういう歌い方だと高音も簡単に出せると言うことでしょうか? 
 参考までに、ドミンゴが、舞台でDo(C)を歌うのは、《マノン・レスコー》《仮面舞踏会》《トゥーランドット》の二重唱、《ボエーム》《ファウスト》《トロヴァトーレ》のアリアは移調することにしているそうです。

 この際、せっかくですから、ナタリー・デゥセ Natalie Dessayの"Mercè diletti amici"をアップしました。→

ソプラノ歌手のコンサートでも、音域が広くコロラトゥーラの技巧も要求されるエレナ公女のボレロを取り上げて歌うことも多いようです。

※過去記事で、クリスティーナ・ドイテコムレナータ・スコットのボレロも聴けます。☆歌詞

関連記事:
《シチリアの晩鐘》ボニゾッリのアリーゴとか...M.ジョルダーニも..
レナータ・スコット(1934- ) ☆シチリアの晩鐘アリア
RRのエピソード:オペラ歌手デビュー(21)一か八かのプロチダ"O tu Palermo"
ヴェルディ「シチリアの晩鐘」1964ー2004主な公演
藤原の「アドリアーナ・ルクヴルール」
マルチェッロ・ジョルダーニがマウリツィオ


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《シチリアの晩鐘》ボニゾッリのアリーゴとか...M.ジョルダーニも.. [シチリアの晩鐘]

 ヴェルディ作曲《シチリアの晩鐘》は、序曲だけ演奏されることが多く、オペラ全曲は、あまり上演されないものの一つですが、イタリアオペラのバス歌手にとって、愛国の志士ジョヴァンニ・ダ・プロチダは定番ともいえる役です。歌手を揃えるのが難しいということもあるのかもしれませんが、各劇場、ほぼ10年に一回程度のペースで上演しているようです。ライモンディも公演回数こそ少ないですが、23歳でローマ歌劇場(歌手デビュー)、その後、スカラ座、フィレンツェ音楽祭、パリ・オペラ座、NYメト、そして、2004年には、歌手デビュー40周年記念公演ということでチューリッヒで歌っています。CDもライブ,スタジオ録音両方ありますが、このたび、1974年11月のパリ・ガルニエの録音を聴くことができました。なかなか面白いキャスティングで、テノールが、フランコ・ボニゾッリです。ライモンディは、リーバーマン時代に、1974、1975、1978年とプロチダを歌っています(写真右:Segalini著"Ruggero Raimondi"から)。


I VESPRI SICILIANI (Giuseppe Verdi)
1974年11月パリ・ガルニエ/ジョン・デクスター演出/ヨーゼフ・スヴォボダ舞台美術
Elena: Cristina DEUTEKOM クリスティーナ・ドイテコム(1932.08.28- )
Arrigo: Franco BONISOLLI フランコ・ボニゾッリ(1937.05.25- 2003.10.30)
Monforte: Peter GLOSSOP ピーター・グロッソップ(1928.07.06- )
Procida: Ruggero RAIMONDI ルッジェーロ・ライモンディ(1941.10.3)
指揮:Nello Santi ネロ・サンティ (1931.09.22- )


♪4重唱

♪シチリアーナ(ボレロ)

♪ La brezza aleggia..
☆写真左からグロソップ(ケネディではありません)、ドイテコム、ボニゾッリ

4幕:アリーゴの裏切りで、エレナ公女とプロチダはモンフォルテに捕らえられる。アリーゴは、モンフォルテが実の父だと知らされ、どうしていいかわからず迷って裏切ったことを告白する.....プロチダは、アリーゴがモンフォルテの息子と知らされ驚く。ここで歌われる、それぞれの心情を歌う4重唱♪プロチダ→モンフォルテ→アリーゴ→エレナの順に歌います。 ☆歌詞

5幕:終幕での婚礼の場面のシチリアーナ ☆歌詞
この《シチリアーナ》は一般に《ボレロ》として有名。このオペラの中でエレナ公女が歌う唯一の幸せと喜びに満ちあふれたソロで、コロラトゥーラの技巧が要求されます。

※エレナ公女はレナータ・スコットも得意としていますが2006-02-08の記事で、4幕の"Arrigo! ah! parli a un core...それでもアリーゴあなたを愛しています"と歌う至難のアリアとこのボレロが聴けます。
エレナのボレロに続いてアリーゴが永遠の愛を誓って歌うアリア"La brezza aleggia intorno"。
最後のカデンツァは高音のRe(D)まで登りつめます。この高音のRe(D)のせいかどうかは知りませんが、舞台ではカットされることが多いようです。もちろん、ボニゾッリは、思いっきり延ばしています。カットした場合は、エレナのボレロの後、すぐにプロチダがエレナに、結婚の鐘を合図に、シチリア人が一斉に暴動を起こすことを伝えます。☆歌詞

※2004年のチューリヒのライモンディ40周年記念の公演では、マルチェッロ・ジョルダーニが、カット無しで歌っています。

GiordaniとMarrocuの
La brezza aleggia intorno
同年、めったに上演しないこの演目をメトでも上演していますが、この部分はカットしています。プロチダはレイミーが歌っていますが、声の揺れが顕著で聞き辛く、ラドヴァノフスキーのエレナもやっとこさで、放送で聞いた限り、とてもレベルの高い公演とはいえませんでした。ちなみに1982年ライモンディが出演した公演以来12年降りの《シチリアの晩鐘》でした。


先頃、パレルモ・マッシモ劇場来日公演でも上演しましたが、このテノールの歌は、歌われたのでしょうか?
せっかくですからマルチェッロ・ジョルダーニの歌をアップします。(2004年5〜6月チューリヒ歌劇場《シチリアの晩鐘》から、ジョルダーニとマーロック)

※マルチェッロ・ジョルダーニ:1963年シチリア出身。1986年スポレートのコンクールで優勝、《リゴレット》マンドヴァ公爵を歌ってデビュー。2005年来日《アドリアーナ・ルクヴルール》のマウリツィオを歌った。

関連記事:
レナータ・スコット(1934- ) ☆シチリアの晩鐘アリア
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夏の音楽祭:ロッシーニ・オペラ祭 [シチリアの晩鐘]

 各地で開催されている夏の音楽祭もそろそろ終わりです。R.ライモンディは今年の夏は、アレーナ・ディ・ヴェローナで《トスカ》、昨年は、エクサンプロヴァンスで《COSI` FAN TUTTE》、その前は、マチェラータで《ホフマン物語》、その前はザルツブルグで同じく《ホフマン物語》........
 ところで、音楽祭にもそれぞれ特徴があるわけですが、ペーザロのロッシーニ・オペラ祭は、1980年からはじまった比較的新しい音楽祭で、ロッシーニの知られていない作品の復活を目的としているということで、他の音楽祭とはちょいと違うようです。

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ヴェルディ「シチリア島夕べの祈り」1964ー2004主な公演 [シチリアの晩鐘]

「シチリア島夕べの祈り」は、それほど上演されるオペラではありませんが、R・ライモンディにとっては、記念すべきオペラです。
1964年ローマ歌劇場で「シチリア島夕べの祈り」のプロチダをロッシ・レメニの代役で歌い絶賛され、プロデビューのきっかけをつかみ、その後、順調にキャリアを積んできました。
1970年にはミラノ・スカラ座で、10年後の1982年にはメトでも同役を歌って絶賛されました。
その時の様子がヘレナ・マテオプーロス著「ブラヴォー」で紹介されています。
彼のプロチダは傑作との定評をえている。

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