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ヴェルディとアレーナ・ディ・ヴェローナ(1913〜2000) [オペラ関連書籍&雑誌]

 右の本"VERDI e L'ARENA" は、1913年〜2000年までにヴェローナ音楽祭で上演されたヴェルディのオペラの記録です。実は、そそっかしいもので、全部の公演記録かと思って買ったのですが、ヴェルディだけでした。全部の公演記録を出版してくれればいいのに....
 この音楽祭は、1913年から毎年夏に、野外劇場(アレーナ)で開かれています。ローマのコロッセオに次ぐ大建築アレーナ(円形闘技場)は、円形の直角軸が、152.4mと 128m、高さが30.48m。前方の1/3が舞台、残りが観客席(1万5千人収容)という巨大な野外劇場ですが、音響効果が極めて良く、最も人気のある野外オペラ祭です。演目は、イタリアオペラが中心で、今年2007年は、第85回に当たります。
 ライモンディもちょいちょい出演していますが、ヴェルディ以外では、1996年《セビリアの理髪師》、1998年以降は、スカルピア専門、昨年の《トスカ》は、DVDで発売されました。
 公演の統計が掲載されていましたが、やっぱりアイーダがダントツですね。野外劇場にぴったりの演目ということでしょうね。


★ヴェルディの作品の公演統計表(1913年~2000年)

演目 シーズン  公演回数  
アイーダ41396
ナブッコ1298
リゴレット1066
運命の力963
椿姫868
トロヴァトーレ852
仮面舞踏会638
オテロ630
マクベス318
ドン・カルロ216※(3)1969年岡村喬生出演
エルナーニ151972年、RR出演
アッティラ18
ロンバルディ161984年、RR出演
シモンボッカネグラ 11
コンサート/ Requiem 810※(1)1980年、※(2)1997年 RR出演
"V" come...141977、バレー、M.ベジャール
Te Deum 111971

※(1)キャスト詳細 8月7日、ムーティ指揮で「世界中の飢餓と暴力の犠牲者に捧げる」レクイエムでしたが、直前の8月2日に起ったボローニャ駅爆弾事件の犠牲者に捧げられることになりました。
■1980年8月2日、ボローニャ駅の待合室とスイス行き国際列車で爆弾テロがあり、85(84)人死亡、200(190)人負傷、日本人も一人犠牲になった(早稲田大学学生20歳)。フランス、英国、スイスなどの家族連れが多数巻き添えとなり、戦後ヨーロッパでは最も悲惨な無差別テロ事件の一つである。

※(2)キャスト詳細 マリア・カラスのアレーナデビュー50周年を記念して捧げられた。マリア・カラスは、1947年《ジョコンダ》に出演して大成功をおさめました。

※(3)キャスト詳細 岡村喬生著「ヒゲのオタマジャクシ世界を泳ぐ」にもこの時のことが書かれています。修道僧の役ですが、ヴェローナで歌えるチャンスをものにした経緯がとても面白いんです。
 リンツの第一バスとして3年目を迎えたある日、ヴェローナの芸術監督のメディチ氏が突然やってきた。来年のヴェローナ音楽祭でトゥーランドットを歌う歌手を探していて、リンツで歌う予定のソプラノを聞きにきたのだ。メディチ氏は、ドイツ語がダメで、劇場側にはイタリア語ができる人がいなかったため、両方できる私が通訳をすることになった。(ニルソンとダブルキャストの歌手を探していたようです)
 私は、このチャンスを逃す手はないと、この劇場の第一バス歌手ですが、ぜひとも歌を聞いてもらいたい....とメディチ氏にお願いして、強引にオーディションをしてもらった。すると、メディチ氏が、私はトゥーランドットを探しに来ましたが、来年ヴェローナで、《トゥーランドット》の他に、《アイーダ》と《ドン・カルロ》をやります。《ドン・カルロ》のカルロ5世(修道僧)の役がまだ決まっていませんが、あなたにピッタリだとおもいます。歌ってくれますか.....小さい役とはいえ、幕開けにアリアもある重要な役だし、しかも夢のヴェローナ、異存があるわけはない、でも、ずうずうしく、フィリッポは? ブルガリアのペトコフという新人と契約しました。宗教裁判長や、ランフィスは? 他のバス役はすべて決まっています。おそかったか....だが、カルロ5世で御の字だ。念のためヴェローナでカルロ5世のアリアをもう一度聞かせてもらってから契約します....とメディチ氏。
 いろいろな偶然が重なり、ついにヴェローナに出られることになった。ヴェローナは素晴しかった。ドミンゴが、ドン・カルロでヨーロッパデビューを果たし、エリザベッタがカバリエ、エボリがコッソット、ロドリーゴがカップチッリ等々、世界の一流が揃い、それにフィリッポのペトコフと私の、二人の新人バスが名を連ねていた。......
 多分ヴェローナでは初めてであろう東洋人歌手で、しかも新人、そんな私が、世界の超一流に混じってどんな評価を得るか、心配だったが、幸いなことに批評は大変良かった。ほとんどの紙面が、最後にではあるが、主役の一人として私を扱ってくれた。田舎劇場で歌ってきた私は大いに自信をつけた。ヴェローナでの最大の収穫は、この自信であった。
 切符は連日売切れ。3万人の大観衆の万雷の拍手。町はオペラ一色に塗りつぶされ、私のブロマイドまで世界的なスターたちのそれと混ざって売られている。リンツとは何たる違いだろう。なんとかいつもこういう晴れの大舞台で歌いたい。
 しかし夢のうようなヴェローナでの6週間が過ぎて、私はこれから2年間の契約を結んでいるドイツの北の果ての町キールへ、すぐ向かわねばならなかった。
※岡村氏、フィリッポは?なんて聞いていますが、この時は、フィリッポはまだうまく歌えなかっそうです。こちらの記事にドイツの北の果ての田舎町キールの劇場で、ついにフィリッポを歌った経緯を紹介しています。→『ヒゲのオタマジャクシ世界を泳ぐ』《ドン・カルロ》フィリッポII
参考:
ヴェローナでの公演記録1972ー2006

関連記事:
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タグ:ヴェローナ
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コメント 3

euridice

巨大な野外空間で音が通るというのが凄いというか、
不思議というか・・経験がないので信じられない気分です。

「ヒゲのオタマジャクシ世界を泳ぐ」に、
奥さんと声が届くか、確かめた話が載ってましたね。
by euridice (2007-11-08 09:01) 

keyaki

私も経験ないですけど、行った人は一様に素晴しい!っていいますよね。

そうそう、ブラヴォー屋さんの話しとか...そういうのを払ってもいいくらいだから、ギャラは相当いいんじゃないかしらね。
by keyaki (2007-11-08 20:03) 

サンフランシスコ人

2020年 ヴェローナ音楽祭...

http://operawire.com/anna-netrebko-jonas-kaufmann-sonya-yoncheva-placido-domingo-highlight-arena-di-veronas-2020-festival/

Feb 14, 2020

Anna Netrebko, Jonas Kaufmann, Sonya Yoncheva & Plácido Domingo Highlight Arena di Verona’s 2020 Festival
by サンフランシスコ人 (2020-02-15 02:50) 

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