新国シーズン開幕:《ドン・カルロ》新演出 [オペラ生舞台鑑賞記録]
書き忘れ! NHKがTV収録してました。(なんでぇぇーー選択基準はなんですかと言いたい)それで、かなり気合いが入っていたかもです。
9月13日、雨の中、新国立劇場に行ってきました。一時期、空席が目立って、寂しい時期がありましたが、最近は、客の入りもよくなってます。固定客がついたということでしょうか。
2006/2007シーズンは、新演出のヴェルディ《ドン・カルロ》で幕開けです。今回の舞台は、写真でわかるように抽象的かつシンプルなもので、小道具はほとんど無し、大きな壁が、上がったり下がったり開いたり閉じたり。色彩的にも地味なものです。この壁の隙間でつくられる十字架がキーワードでしょうか。こういう舞台ですと、歌手の動きが非常に目立ちます。演出家の指示通りに動いていますという感が強いですが、それはそれで、いいかなと。《ドン・カルロ》というオペラは、けっこう複雑ですが、舞台装置同様、シンプルで分かりやすい演出でした。たとえば、どう演出するか問題になる「異端審問火刑の場」、見ている方は、なにが行われているわかりにくいことが多いのですが。観客にそれほど不快感を与えることなく描かれていました。「天の声」が、民衆の一人としてか、はたまた、「幼子を抱いたマリアさま」なのか、舞台中央で、歌ったのも印象的でした。火刑用の薪を民衆がいやいやながら運んだり、最後にはエリザベッタもそれを手にする、、民衆も王家も教会に支配されているということでしょうか。
歌手陣は、外国人組は、いわゆる世界的に著名な歌手はいませんが、最初から最後まで全力疾走、ヴェルディだぞ!という感じでした。声が大きく感じられたのは、壁の効果があるのではないかと思います。横とか後ろ向きでも声が飛んできました。長いオペラを退屈せずに楽しみましたが、全体的にプラスαが、もうちょっとなにかが欲しいですね。
さて、歌手さんですが、《蝶々夫人》ではないのに、エリザベッタが日本人?と期待していませんでしたが、大村さんは、実に立派でした。見た目も、すらりとして気品もあり、エボリ役のマルゴルツァータ・ヴァレヴスカが、キツい感じの美人だったのですが、それと対照的でよかったです。
フィリッポ二世のヴィタリ・コワリョフは、深みのあるバス声で、堂々として立派。ドン・カルロのミロスラフ・ドヴォルスキーも全力投球。ロドリーゴのマーティン・ガントナーも、前回のベックメッサーとは別人(見た目も)のようで、ドヴォルスキーの大きな声に負けていませんでした。エボリ公女のマルゴルツァータ・ヴァレヴスカは、意地悪な感じの美人で、3幕のあの自分の美貌を呪う歌も違和感無しでした。修道士の長谷川さんの、第一声に吃驚、こんなに大きな声の出る人なんだと。前回は、フィリッポ二世でしたが、今回は宗教裁判長の妻屋さん、いつもながらうまいです。腰を90度曲げて熱演でした。(一階9列で観劇)
※左上の写真をクリックすると、その他の写真も見られますが、今回は特に写真がよくない、実際の舞台の方が、数段いいです。実際に見に行きたくなるような写真を掲載してほしいものです。
毎度ながら、新国の外国人キャストは、それほど知名度がある歌手さんではないので、出身地等ご紹介します。
■ヴィタリ・コワリョフ(フィリッポ二世):
ウクライナ出身。前歴は消防士という異色の経歴を持つ若手バス。ヴェルディを得意とする。最近はNYメトを中心に活躍している。新国初登場。というのが、新国のステージノートでの紹介文の抜粋。
モスクワで勉強して、1999年のドミンゴの Operaliaコンクールで入賞(下記参照)、同年ブッセートの第39回Voci Verdianeコンクールでも優勝。すでに40以上のレパートリーを誇り、ヴェルディだけでなくロシアものはもちろん、ドイツものも、フランスものも、バスの主要な役柄総なめ状態です。2003年に、パリ・オペラ座に、フランス版《シチリアの晩鐘》のプロチダでデビュー大成功をおさめる。これって、レイミーがキャンセルしたものだとすると、フルラネットとダブルキャストだったということですね (参考記事)。2004年NYメトにザッカリアでデビュー、同年、フィラデルフィアで《ドン・カルロ》フィリッポでデビュー、ヴェローナでもザッカリアとランフィスを歌っています。
■ミロスラフ・ドヴォルスキー(ドン・カルロ):
1960年4月16日生まれ、スロヴァキア出身。祖父が歌手で、父はアマチュアながらヴァイオリン奏者、母は、合唱団員、5人兄弟のうち長兄以外、4人がプロの歌手という音楽一家です。日本でもよく知られている、ペーター・ドヴォルスキーが9才年上の兄で、Pal'oと弟のJaroslavも歌手です。
ウィーン国立歌劇場等、ヨーロッパの主要歌劇場で活躍、新国は、《マクベス》のマクダフに続いて2回目の登場。
■マーティン・ガントナー(ロドリーゴ):
ドイツ・フライブルク生まれ。カールスルーエ音楽大学で学ぶ。89年「フィガロの結婚」アルマヴィーヴァ伯爵でデビュー。以来「魔笛」パパゲーノ、「ウェルテル」アルベルト、「スペードの女王」エレツキー侯爵、「タンホイザー」ヴォルフラム、「セビリアの理髪師」フィガロ、「ラ・ボエーム」マルチェッロなどをレパートリーとして、ミラノ・スカラ座、バイエルン州立歌劇場、ザクセン州立歌劇場など著名な歌劇場に出演を重ねている。本年10月には、バイエルン州立歌劇場にてオペラ「ドン・カルロ」ロドリーゴ役での出演も決定している。(新国サイトより)
《マイスタージンガー》のベックメッサーに続き新国2回目の登場。2005年バイエルン州立歌劇場の宮廷歌手 Kammersängerの称号を贈られる。
■マルゴルツァータ・ヴァレヴスカ(エボリ公女):
ポーランド出身、1991年デビュー、ワルシャワ、ブレーメンでキャリアを重ね、96〜98年は、ウィーン国立歌劇場に契約歌手として出演。2005年デリラでNYメトデビュー、ボローニャ、ベルリンドイツオペラにも出演。主なレパートリーは、エボリ、カルメン、アムネリス、フェネーナ、クイックリー夫人など。こちらにHPがあります。
【指揮】 ミゲル・ゴメス=マルティネス 【演出・美術】 マルコ・アルトゥーロ・マレッリ 【衣裳】 ダグマー・ニーファイント=マレッリ キャスト 【フィリッポ二世】ヴィタリ・コワリョフ 【ドン・カルロ】ミロスラフ・ドヴォルスキー 【ロドリーゴ】マーティン・ガントナー 【エリザベッタ】大村 博美 【エボリ公女】マルゴルツァータ・ヴァレヴスカ 【宗教裁判長】妻屋 秀和 【修道士】長谷川 顯 【テバルド】背戸 裕子 【レルマ伯爵/王室の布告者】樋口 達哉 【天よりの声】幸田 浩子 | ドミンゴのOperalia 1999 1) Orlin Anastassov, B (Bulgaria) 2) Rolando Villazón, T (Mexico) Giuseppe Filianoti, tenor (Italy) 3) Yali Marie Williams, S (Puerto Rico) Pepita Embil 賞: Mariola Cantarero, soprano (Spain) Plácido Domingo Sr.賞: Rolando Villazón 特別賞: Joseph Calleja, T (Malta) Vitalij Kowaljow, B (Ukraine) 大衆賞: Rolando Villazón |
keyakiさん、こんばんは。
新国の新シーズンが《ドン・カルロ》で開幕、ですか。
いいですねえ。
もうすぐ東京のほうに行く予定があるんですが、
時期が合わずに何も見れないんですよ。
とても残念です。。。
前に出したパヴァちゃんの《ドン・カルロ》の記事で
TBを送らせていただきました。
by Orfeo (2006-09-14 19:45)
>今回は特に写真がよくない
同感です。あれじゃ、お客を逃がしますよ<|( ̄0 ̄)o>
写真より良かったと思うほうがいいのか、それとも、逆がいいのか?? どっちでしょうねぇ・・・^^;
by euridice (2006-09-14 19:47)
おや、東欧中心キャストだったのですね。聞いたことの無い方がいっぱいです~。Orfeoさん同様、なかなか新国のオペラに行けない身としては、こういったレポートがとても楽しみです。いつかは行ってみたいんですけどね、地方在住だと予定が合わせ辛い…今シーズンは「セヴィリアの理髪師」のアルマヴィーヴァ伯爵を歌うローレンス・ブラウンリーがぜひ聴きたいです。
by Sardanapalus (2006-09-14 20:25)
Orfeo さん、せっかく上京されるのに残念ですね。
TBありがとうございます。
>パヴァちゃんの《ドン・カルロ》
これもスカラ座の開幕公演でしたね。
どこかで目にしましたが、世界の12のオペラハウスに、新国立劇場が選ばれているんだそうです。選択基準はわからないそうですけど。
でも、ちょうどいい大きさで、オペラ鑑賞には最適です。
by keyaki (2006-09-14 21:25)
euridice さん、
ほんとに、こういう舞台って写真写りが悪いみたいですね。全然期待してなかったので、かえってよかったのかなぁ。
by keyaki (2006-09-14 21:33)
Sardanapalus さん
今シーズンの「セヴィリアの理髪師」は、バルッチェローナとマウリツィオ・ムラーロの著名イタリア人が出演だな、と注目していましたが、ローレンス・ブラウンリーも注目なんですね。
ちょっと顔写真を見に行ったら、このテノールさん、DVDになっているマドリードの「セヴィリアの理髪師」のBキャストの伯爵やってますね。この時は、熱意はあるが、まだ未熟というよな評価でしたが、どれだけ成長しているか楽しみですね。
by keyaki (2006-09-14 22:03)
ふわ~ん、、、NHKが収録ですかー。いいなぁ。
放送を楽しみに待ちます。
ドヴォルスキー兄弟についてまとめてくださってありがとうございます。
今、ビデオクリップも見てきました。あのあとふたりは形見の交換?をするんでしょうか。
by (2006-09-14 23:40)
NHKの収録はもう年間計画で決まってるみたいですよ。。。
いろいろあったおかげで藤原と二期会は半分ずつになってしまったらしいけど。。。。
by みど (2006-09-15 00:20)
りょーさん
そうなんですよ。席のすぐ横に、デカイ録画機器があったので、???収録すると場内放送でお知らせがあって、なんでこれなの!て、無性に腹がたったりして......ね。(笑
>あのあとふたりは形見の交換?をするんでしょうか。
しましたよ。まわりに何もないので、二人の動きに目が集中、はっきりとわかりました。
チューリヒのドン・カルロも現代風なんですよね。
by keyaki (2006-09-15 00:29)
みど さん、いつもNice!をありがとうございます。
>いろいろあったおかげ
あら、何があったのかしら。
NHKも近いんだし、毎回収録してもいいのにね、
地方の人達だって、見たいと思いますよ。
by keyaki (2006-09-15 02:25)
過去に資料として録画してあるものも順次放送してもらいたいわ....
>毎回収録してもいい
どうせいろいろな利権やメンツ関係ですんなりとはいかないんでしょうけど、関係者は本質を重視して行動してほしいものです。
by euridice (2006-09-15 07:58)
えー、収録したんですか。
>地方の人達だって、見たいと思いますよ。
>過去に資料として録画してあるものも順次放送してもらいたいわ....
そうですよー!
何のために視聴料徴収してるのよ・。・゜゜・(≧◯≦)・゜゜・。・
by ヴァラリン (2006-09-15 08:37)
最終日に重い腰を上げて、行って来ました(^^;
keyakiさんの仰る通り「億劫でも一度行けば、楽しくなりますよ」かもしれません。予想以上に楽しめた自分に吃驚。なにはともあれ、新国デビューです。
TBさせて頂きました。
by ヴァラリン (2006-09-22 12:02)
TBありがとうございます。こちらからもさせていただきますね。
引越し公演のファルスタッフはとても楽しめましたが、ライモンディならなんでも良いんだろう、と言われればそうなんですけど、でも、やっぱり、チケット代は高すぎだし、不透明もいいとこですものね。私は、直前に買って、ずいぶん得をしましたけど、これって本当はおかしな話ですよね。
新国も安いとはいえないかもしれませんが、許容の範囲ですものね。
昨日の朝日新聞の夕刊に寸評が出てましたが、フィリッポ役のヴィタリ・コワリョフがよかった、、、というようなことが書いてありましたし、日本では知名度のない歌手さんたちに接する機会も、新国のいいところかもしれませんね。
また、機会がありましたら、ぜひぜひ、会場でお目にかかれるかもしれませんし、、ね。
by keyaki (2006-09-22 14:20)