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ヴェルディ《イエルサレム》のソプラノのアリア [ロンバルディ/ジェルザレム]

婚約者のガストンが生きていることを知り、エレナが有頂天になって歌う歓喜の歌"Quelle Ivresse! Bonheur Supreme!"この歌が無い! 先日入手した1975年フェニーチェ座公演、イタリア語版ですが、数回聴き流して、あれれ、、と気づきました。この歌、けっこう目立つのに無いバージョンがあるとは意外です。
1995年のトリノ公演と、2000年のジェノヴァ公演は両方ともありますが、これまた長さが違います。
追記)このアリアについて興味深い解説のコメントをもらいました。ありがとうございます(2006.5.7)

2000年ジェノヴァ公演
Veronica Villarroel


1995年トリノ公演
Maria Dragoni
◇第2幕1場:パレスチナのラムラの洞窟:
エレナは、ガストンが生きていることを知り、喜びの歌を歌う。
♪生きているのね なんてうれしいことでしょう これ以上の歓びはありません 神様はおまもりくだっさたのですね あの方は潔白だったのです 私の魂はあの方のことを呼び あの方を想い続けました 私の心は喜びに満ちあふれています♪
▼キャスト詳細は、ジェノヴァのサイトでどうぞ。舞台や豪華な衣裳の写真もあります。
▼トリノ公演の方は、間に侍女との会話が入っていて、アリアが2回繰り返されています。キャスト詳細はトリノのサイトでどうぞ。
これは、2006-05-03にご紹介したリハーサルの音源ではありません。ライブ放送の録音です。※録音レベルが低いので、マックユーザーは、shift+コマンド(アップルマーク)、ウィンドウズは、shift+altキーを同時に押して、画面の左のスピーカーマークをクリックして音量を倍にして下さい。
▼あらすじ、CD紹介等は、オペラ御殿をご覧下さい。

関連記事:
▼2006-05-03 ヴェェルディ《イエルザレム》
▼2006-04-28 1965年ライブ《Verdi:ジェルザレム》
▼2005-11-02 ザッカリア. .ほか(2)パガーノ-
▼2005-11-03最新の「ロンバルディ」と余談

▼ビデオクリップはQuickTimeで視聴できます(下記サイトでダウンロード)
ウィンドウズ:http://www.apple.com/jp/quicktime/download/win.html
マックユーザー: http://www.apple.com/jp/quicktime/download/mac.html
注意! QuickTime7がインストールできないシステムの場合は一部再生できないものもありますが、QuickTime6をダウンロードして下さい。
ウィンドウズ:http://www.apple.com/support/downloads/quicktime652forwindows.html


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コメント 4

助六

またまた貴重な記録をありがとうございます。
「批判的校訂版」とやらを使ったことになってるジェノヴァ上演の方が短いのには参りましたが、まあこの種のことは現実の舞台では多い。「オリジナル版ドン・カルロ」と称する上演・録音が典型ですが、「XX大先生校訂原典版」とか書いてあっても実態はインチキであることも多く、「学問的」とかうっかり持ち上げない方が無難ということですな。

このアリア大変難しいから近年までカットされる方がフツーだったみたいで、流布してる楽譜・台本には最初から載ってないものまであるというから、この65年フェニーチェ上演だけじゃなくて、75年のガヴァッツェーニ指揮リッチャレッリ、カレーラスの録音でも歌われてないようです。でもリッチャはともかくゲンジェルも歌ってないのかぁ。

このアリア「Quelle ivresse」は「エール(アリア)」ではなく「ポロネーズ」と題されていて、「ロンバルディア人」4幕2場のジセルダの「Visione(幻視): Oh! di sembianze eteree」に続くカバレッタに当たる「アリア: Qual prodigio」を転用したものです。仏オペラのためにカバレッタのみを独立アリアに転用したわけで、「ポロネーズ」という名称もその事情に由来してるのでしょう。
元々カバレッタで、中間部となる侍女の介在も書かれてるようですから、繰り返すのがスジでしょうが(まあイタリア・オペラのカバレッタでも現在でも繰り返しは省くことも多いですよね)、ジェノヴァ上演が省いている理由は恐らく歌手が負担が増えるのを嫌ったせいだろうとは思いますが、使用した校訂版では侍女の介在と繰り返しが何らかの理由で削除されてる可能性も否定はできません。

一般にカバレッタの繰り返しを行うべきかには色々な意見があって、
1)繰り返し賛成派の理由は、A-B(脇役の介在)-A'(装飾ヴァリアント付き)という古典ベルカントを引き継ぐ静的「均衡様式」を保つために繰り返すべき。
というものですが、
2)繰り返す必要なし派の理由は、
 a) 装飾ヴァリアントを付けないのならば、繰り返しても退屈なだけ。
 b) 初期ヴェルディは既にベルカントのABAの静的な「均衡様式」は脱して、ダイナミックな様式に移行している。繰り返しは省いた方が前進的エネルギーの解放は直裁。
といった感じだけど、現場では当然歌手の意向・能力が大きくものを言うでしょうね。

しかしビラロエルに比べるとドラゴーニの方が4倍くらい良いですね!19世紀仏オペラでは天才的な大指揮者(と小生は確信してます)プラッソンの伴奏もリズム的造形完全欠如のどん底振り。テンポもダレてるのは歌手の能力を配慮したのとプラッソンの様式感覚のなさ両方が理由でしょうね。やはりベルカントの専門家カンパネッラの指揮はソツがなくて、一見単純そうなこの種の音楽の伴奏がいかに難しいかを改めて痛感させられます。

しかしこんな難しいアリアを歌えた歌手が当時グラントペラ全盛だったフランスにいたのかという疑問が湧きます。
1847年の初演でエレーヌを歌ったのはジュリアン=ヴァン=ジェルデルという当時28歳のフランス人歌手ですが、後にヴェルディ夫人となる大歌手ストレッポーニが46年に31歳で引退後パリに移住し47年から声楽教師をしていて、彼女のレッスンを受けていたそうですから、イタリア・ベルカントのテクニックはマスターしてたんでしょう。ストレッポーニはアビガイーレの創唱者で(それで声をツブしたといわれる)、正に「ロンバルディア人」も歌ってますから。
でもジュリアンの歌唱は、「Quelle ivresse」のダイナックなアジリタよりもリリックな部分に秀でてたと言われ、実際彼女は後半の上演は降板し、当時32歳のフランス人歌手ジュリエンヌ=デジャンに交代しています。初演の時から難しかったんだ!初演は成功とは言えず、ヴェルディは歌手、合唱、オケの悪口を言ってます。「合唱は今まで聞いたことがないほど凡庸で、オケも似たようなもの」とか。
後半を歌ったジュリエンヌは、ドニゼッティ・マイヤベーア・アレヴィなどをレパートリーにし、ヴェルディは12年後の59年の「仮面」の初演に、インプレッサリオの推薦に押されて起用してるのですが、既に58年には声を失っていたという証言があります。
要するに当時フランスに一応ヴェルディを歌えた歌手はいたけれど、ヴェルディ自身の評価も今ひとつだったわけで、やはりこのアリア、ヴェルディ時代から難しく、歌った歌手は声つぶしてるということみたいね。クワバラクワバラ。
by 助六 (2006-05-06 11:31) 

うさぎ屋店主

VDクリップ観ましたよ。といってもすべてではありませんが、久しぶりに彼のあまやかな良い音色の声を聴きました。やっぱり素敵。言葉がちゃんと生きて伝わってきます。それにしても、この情報を集める努力が素晴らしい。これからも期待して!
by うさぎ屋店主 (2006-05-06 13:51) 

keyaki

助六さん、私の疑問に詳しく解説してくださってありがとうございます。
ということは、このトリノの公演は貴重ですね。こちらをDVDにして欲しいものですが、なかなかうまくいきませんね。
1998年のウィーンでの公演はソプラノが誰かも知らないのですが、きっと歌ってないですね。誰も話題にしてないのでもしかしたらコエリヨさんだったのかも、、、(笑)テノールはKeith Ikaia-Purdyだったようで、この人もウィーンの専属のようなものですよね??
話題になっていたのは、ライモンディがキャンセルした日に
当たってしまったファンの人が、代役がクルト・リドルで、隠者になってから、上半身裸だったけれど、ライモンディの時はどうだったのかしら?という質問に、ちゃんと長いローブを羽織っていました、、という回答でした。リドルには動きがとれないくらい長過ぎたのかしら、と笑っちゃいました。
by keyaki (2006-05-07 12:28) 

keyaki

うさぎ屋店主さん
お時間があるときにゆっくり見て下さい。
いつのまにか、いろいろ集まってしまいましたが、パソコンとネットのお蔭で、整理しながら、自分も楽しめる、そして更に、関心のある方にもご覧いただけて、嬉しいです。
by keyaki (2006-05-07 12:34) 

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