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モンテカルロ《ランスへの旅》レポート [ランスへの旅]

11月25日(金)と27日(日)に見て来たRRファン(イギリス人)のレポートです。
Salle Garnierは、カジノの中にある客席500席余りの小さな劇場(7〜800席だがオケが入ると客席は522席)で、楽屋が、更に贅沢で、ファンの人達は、来年やることになっている「愛の妙薬」のドゥルカマーラ(初役)とアディーナの二重唱を一緒に歌ったり、とても楽しんだようです。
RRは、この後12月4日(日)は、チューリッヒで「トスカ」の公演がありますが、ボローニャに寄ってチューリッヒ入りするとか。前にもお報せしましたが、この時、フィレンツェ5月音楽祭でファルスタッフに出演するという話が出たそうです。
※こちらのサイトで公演の写真が見られます。ずーっと下のほうにもあります。色彩が美しい舞台ですね。

モンテカルロ《ランスへの旅》

 このオペラを初めて観たのは英国のTVで放送したウィーンのロンコーニ演出のものだった。その時はあまりいいとは思わなかった。何年も後になって、前よりは好きになったが、今回のが、ずっと気に入った。
三つの明るい、広々とした、窓のたくさんある部屋というより、大きな温 室みたいなセットは、ヨーロッパの温泉町の「鉱泉水を飲む」場所を思い出した。普通より現実的なやり方で上演されるオペラはおもしろかった。

 開幕シーンのひとつの場面で、主要人物のうち二人が、バスタブのようなものに乗せられて、舞台を横切って運ばれていた。ひとつには女の人が乗っていて、もうひとつには、裸の男が乗っていたが、彼はバスタブから出て、両手で前を隠して、出口をさがして駆け回った。

 衣装は、どれもとても豪華で色とりどりだった。主要な女性たちは全員少なくとも二枚違うガウンを持っていた。
ドン・プロフォンド以外の男性旅行者たちは、金の組ひもなんかがいっぱいついた立派な正装だった。各々の役柄上の国籍に従って、異なるスタイルの、羽飾り付きのかぶりものをかぶっていた。
私が特に気に入ったのは、トロンボノク男爵とシドニー卿。トロンボノク男爵はドイツ皇帝ヴィルヘルムのように見える羽飾り付きのかぶとをかぶっていた(コリンナの最後のアリアの題として、彼はこの皇帝を指定した)。シドニー卿は、昔の植民地のどこかの総督みたいに見えた。

 RRは、クリーム色のスーツを着て、長ズボンをはき、折り襟と袖口が明るい金茶色のフロックコートに、暗褐色のチョッキ、それから、前にも言った、おかしな茶色のマッシュルーム・ハット。
彼は、小さな丸い厚いレンズの眼鏡も持っていた。終わりの場面では、黒いコートを着て、白いズボンをはき、シルクハットをかぶった。この人物は骨董品に非常に関心があると仮定されているから、登場するとまず、真ん中のテーブルの上にあった銀製のロシアの湯沸かしサモワールを念入りに吟味していた 。

 他に特におもしろかったのは、騎士のベルフィオーレが、コリンナに言い寄ろうと頑張っている間中、後ろで観察していた場面だ。召使いがお盆にデカンターを二本と、小さなグラスを四つ載せて持って来た。彼はデカンターをひとつ手に取ると、中身の臭いをかいで、グラスについで、飲むと、とても強い酒だったような反応を示した。それから、四つのグラス全部になみなみとついで、そのうち二つを飲み干した。
それから、残ったグラスのひとつをコリンナに渡して、最後のグラスから、ちょっとすすってから、それをベルフィオーレに渡した。
パーティーの場面の間にも、彼はシャンパンに見えるグラスをいくつか飲み干した。後で、実際には何を飲んだのか彼に質問したところ、一杯は本物のシャンパンだったが、後は全部、リンゴジュースだったという答えだった。

 一番笑ったのは、チロリアン・デュエットの終わりのところだった。その間、コルテーゼ夫人がスツールの上に立っていた。全員が手をたたいていたけど、彼はなんとかして彼女の胸を触ろうとしていた。私たちは長年観察しているけど、彼はいつでも相当熱心に、立派な胸を両手で触ろうとしている。

 他のキャストもなかなかよかった。本当にだれひとり文句のつけようがなかったと思う。
荷物の紛失を告げられる場面のフォルヴィルの伯爵夫人役のパトリシア・チョーフィーは、特に楽しかった。彼女の顔の表情は見ていてすばらしかった。特に、彼女の小間使いが、助かった帽子箱を持ってきて、彼女がその箱を開けて、その時彼女が着ていたライム・グリーンのドレスには全然似合わないひどい紫色の帽子を取り出したときがおもしろかった。

 メリベーア侯爵夫人の役は、かつてのルチア・ヴァレンティーニ・テラー二を思い出させる。彼女の公爵夫人は、独特の声だっが、今回この役を演じたサラ・ミンガルドの声は、私には、ルチア・ヴァレンティーニ・テラー二と似ているように思われた。特に「パーティーの曲」のところ。

 インヴァ・ムーラも、すばらしいコリンナだった。彼女の声の「ふわふわと漂うような」印象は、まさにぴったりの感じだし、ベルフィオーレとの場面はとてもおかしかった。このプロダクションはアルバート二世の戴冠を祝う意味もあったので、最後のアリアでは、シャルル十世ではなく、アルバート二世の名前に変えられていたし、他の旅行者たちの名前も全部変更されていた。シドニー卿は「エリザベス女王」、ドン・プロフォンドは「フランチェスコ・グリマルディ」だった。「フランチェスコ・グリマルディ」で笑いが起こりましたが、なぜでしょうか? ライモンディが笑わせた??

 ロックウェル・ブレイクは、ボローニャの「ドン・ジョヴァンニ」のビデオで見たことがあっただけだった。彼は、ドン・オッターヴィオだったが、私は彼の声の感じがあんまり好きじゃなかった。でも、今回はとてもよかった。彼はロシアのリーベンスコフ伯爵だった。
日曜日のカーテンコールで、彼に対してブーイングがいくつかあったが、全く理解できなかった。私はブーイングを消し去ろうと「ブラヴォー」と叫んで、いっそう激しく拍手した。

 キャストの多くはRRのようなヴェテランの演者たちだった。主要人物の中では、シドニー卿のマルコ・ヴィンコが多分一番若いと思う。良い声をしているし、将来を期待される人だろう。

 ところで、この二人のバス役の間には、短いやりとりがある。ドン・プロフォンドが、フィンガルの刀、アーサーの鎧の胸当て、アルフレートのハープはどこで見つけることができるかと英国紳士に質問するところだが、これはカットされていた。 やっぱりそうだったんですね、これは相手がある会話の部分ですから、RRが失念したわけではないですね(笑)

 コルテーゼ夫人がジューン・アンダーソン、騎士ベルフィオーレがラウル・ヒメネス、トロンボノク男爵がフィリッポ・モラーチェ、ドン・アルヴァ ーロがマヌエル・ランツァ、、、、最初の公演ではだれがだれだかわからなかった。二度目の公演でも一人、二人は、確認できなかった。
金曜日の夜、私たちは2列目の席で、舞台装置で、視界がわずかに制限されたことが数回あったが、RRが私達のすぐ前にいることが多かったので、非常に幸福だった!  日曜日は中央の席だったので、全体がよく見えた。
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※関連記事 :2005-11-24 モンテカルロ《ランスへの旅》突撃インタビュー
※関連記事 :2005-11-25 モンテカルロ《ランスへの旅》14声によるコンチェルタート
※関連記事 :2005-11-21 ドン・プロフォンド(オペラ、ランスへの旅)-Ruggero Raimondi Mensch und Maske- 
※《ランスへの旅》公演記録

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コメント 5

助六

>フランチェスコ・グリマルディ
ライモンディは「Francesco Grimaldi La malizia!」と言ってますよね。これは、ジェノヴァのグリマルディ家のフランチェスコ・別名「悪賢王」が、13世紀の終わりに僧侶に化けてモナコを奪取したという故事を踏まえたものです。普通のフランス人やイタリア人が知っているのは、今のモナコ王家はグリマルディ家の末裔だということだけで、「La malizia」なんてことまで知っているとは思えません。「グリマルディ!」の後ではなく、「ラ・マリーツィア!」の後に笑い声が起こっているところを見ると、それに合わせてライモンディが何らかのジェスチャーをしたのかも知れませんね。
by 助六 (2005-12-03 11:04) 

keyaki

助六さん、ありがとうございます。
どなたかが、回答下さるとひそかに期待してました。

>普通のフランス人やイタリア人が知っているのは、今のモナコ王家はグリマルディ家の末裔だということだけで
私もそのことだけしか知りませんでしたので、なんで、"La malizia!"なのかな? と思っていました。そういう故事があるんですか。勉強になりました。

どうやら、ドイツ人を2回歌ったのは、放送収録の時だけのようですから、これは貴重ですね。(笑)
by keyaki (2005-12-03 11:31) 

TARO

ミンガルドの声がヴァレンティーニ=テッラーニと似ているというのがちょっと意外な感想でした。
二人とも大好きな歌手なんですが、そういう意識で聞いたことがなかった・・・
by TARO (2005-12-04 00:08) 

Bowles

>二人とも大好きな歌手なんですが、そういう意識で聞いたことがなかった・・・

TAROさん、私も意外だったんですが、このランスを聴くかぎり、ミンガルドのメリベアには、一瞬ヴァレンティーニ=テッラーニを彷彿とさせるところがあります。しかし、私にはこのランスは全体としてダメでした...。やはり指揮者の問題がかなり大きいと思います。
by Bowles (2005-12-04 11:55) 

TARO

Bowlesさん

>一瞬ヴァレンティーニ=テッラーニを彷彿とさせるところがあります。

ほお、ちょっと面白いですね。同じような役作りを目指した場合は、声自体も似たようなものになるのかもしれないですね。

ベニーニについては良く知らないのですが、アバドで耳に染み付いてるオペラですから、ほかの指揮者は誰が振っても分が悪いですよね。(笑
それでもガッティとかジェルメッティ、カンパネッラあたりだったら、また違ったのかもしれませんが。
by TARO (2005-12-05 12:37) 

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