オペラファンならニヤリ！とする映画（３）トスカの接吻

ダニエル・シュミット監督《 IL BACIO DI TOSCA》1984年
老人ホーム「ヴェルディ憩いの家」の住人である引退した音楽家達のインタビューを交えて、彼等の現在の姿をとらえたドキュメンタリー。
彼等が語るのは過去のことだけだが、もう声が出ないわ・・・といいながらも歌うアリアは、声もかすれ、音程も不安定だが、微笑ましく、淋しく、感動的。

ラーリ館長談： 「.......この"家"が建てられた理由を説明するのは、ごく簡単なことです。.....ジュセッペ・ヴェルディ先生とジュセッピーナ・ストレッポーニの人生最後の贈り物なのです。 ......晩年に二人は後世にも続くものを残したいと思いました。....先生がよく言っていた"私より幸運に恵まれなかった音楽家たち"の役に立つものを残したかったのでした。 ....先生が亡くなったのが1901年で、1902年に開館です。もう80年以上経っています。長い間この"家"は、先生の作品の著作権収入だけで運営されていました。ここで暮らす人々の生活を著作権収入で賄えるように、先生が配慮してくれたのです。でも先生の著作権はすでに20年前に失効してしまいました。.....この"家"の財政は非常に困難になっています。....」 初老の女性談：「ヴェルディは人間として非常に立派でした。この"家"を見れば、彼の心の素晴しさは明らかでしょう。『ファルスタッフ』が完成した時に、この"家"を建てる決心をしました。建築中も熱心に作業の進み具合を見に来たのです。そして。"この家こそ私の最高傑作だ"と言ったの。"私の最高傑作だ"って」********************************** 写真左上)サロンで、レオニーダ・ベロンともう一人の元テノール歌手がトスティの"マリア"を歌う。ベロンが、カルーソの歌い方はああーだこーーだと説明しながら歌っている**********************************写真右上)玄関ホールの電話ボックスから、元バリトンのサルヴァトーレ・ロカーポ出たところに元ソプラノのサラ・スクデーリが通りかかる。ロカーポが《トスカ！ついに私のものだ！》、スクデーリもそれを受けてナイフで《これがトスカの接吻よ》と二人で演じてみせる。ロカーポはトスカに続き、リゴレットを歌いはじめスクデーリに「あなた、死んだはずよ」と言われる。**********************************ビデオクリップの歌手： ◇サラ・スクデーリ(ソプラノ)：1906年生、スカラ座で、ジーリら著名な歌手と共演 ◇レオニーダ・ベロン(テノール)：1905年生、1924年デビュー、世界各国で活躍 ◇サルヴァトーレ・ロカーポ(バリトン)：1919年生、スカラ座で７シーズン歌う

ついでの話：
1980年サン・ステファノ教会でのヴェルディ『レクイエム』のリハーサルに、この"家"の音楽家達が招待されています。こちらでビデオクリップが見られます。
アバド指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団　合唱団
ソリスト：フレーニ、オブラスツォワ、パヴァロッティ、ライモンディノ

コメント 5

オペラが好きで、特にオペラ歌手に興味があると、一段とおもしろくなる映画かもしれませんね。

NHKで、この映画の焼き直しみたいな、ごく最近のヴェルディの家のドキュメンタリーを放送したことがあったけど、やっぱりこの映画にはかなわなかったですね。当たり前かもしれませんけど。
by euridice (2005-11-24 07:46) 

>オペラ歌手に興味があると
ここで、みなさんのお世話をしているヘルパーさんが、「私は、彼等の過去に興味を持っています。私生活ではなく、芸術家としての生活に興味があるのです。だから、彼等の話が大好きで、一生懸命聞きます。出演した劇場の話とか・・・」
と言っていますが、私も同感です。

>NHKで、この映画の焼き直しみたいな
ありましたね。そっくりなことやってる・・と思っただけで、印象に残ってないです。
by keyaki (2005-11-24 20:40) 

ん！これ、確か今こちらのCD屋でセールになってました。面白そうだし、買ってみようかなぁ。

>ロカーポはトスカに続き、リゴレットを歌いはじめスクデーリに「あなた、死んだはずよ」
あっはっは（＾o＾）素敵な会話ですね～。アップしてくださった「トスカ」の途中でも「もう起きて良い？」って聞いてますね、ロカーポさん。
by Sardanapalus (2005-11-24 21:30) 

え？これってどこかで買えるんですか？
by みど (2005-11-26 22:53) 

みど さん
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もちろんネットでなくてもCD、DVD屋さんでも買えますし、レンタルでもあると思います。

《ランスへの旅》の記事にnice!をありがとうございます。
by keyaki (2005-11-27 00:04)