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エピソード:声楽授業初日(1)そこに至るまで [ L.Magiera著:RR]

ブログ仲間のedcさんがペーター・ホフマンの声楽個人授業初日の面白いエピソードを紹介されていますので、私も便乗してRRの「はじめてのお歌のレッスン」の様子をご紹介しましょう。

その前にそこに至までのエピソードを・・・・

RRは、オペラ愛好家の父チェーザレの影響で、幼い頃から、オペラのレコードを聴いて育ちます。二人の兄達は、父がレコードをかけると外に遊びに行ってしまいましたが、末っ子のルッジェーロは、いつも父と一緒に聴いて、歌をすぐに覚えてしまうのです。
こういう時の父親の反応は世界共通かもしれません。
もしかしたら息子に音楽の才能があるかも知れない!
そこで、知り合いの指揮者モリナーリ・プラデッリに相談します。 プラデッリは、「とりあえず、ピアノを習わせなさい・・・」これが5、6才の時の話。

その後はだいたいお決まりのコースで、ピアノは嫌いだったのか数年でやめてしまい、普通の子供の生活をしていたわけです。
唯一他の子供と違うのは、10才から父のお伴でボローニャ歌劇場に通っていたことでしょうか。父はその日の演目について息子に語り、帰り道では、父と息子はその日の歌手についてあーでもないこーでもないと話しながら手をつないで家に帰ります。(イタリア映画のひとこまのようですね)
はじめてのオペラは、1951年11月のマスネの『マノン』(オリヴィエロ・デ・ファブリツィース指揮、Elena Rizzieri,Cesare Valetti)、その後、「シモン・ボッカネグラ(ゴッビ、クリストフ」)「愛の妙薬」・・・「メフィストフェレ」を見た帰り道での親子の会話は、こんなかんじだったようです・・・

父「今日のバスは最高だったね、ルッジェーロ。こんな力強いバスは今まで聴いたことがないヨ」
ルッジェーロ「本当にそうだね、パパ、でも"Ecco il mondo"の高音のFが、ちょっとぶら下がり気味だったよね」
父「んーー、あそこはとても難しいところだからね」
ルッジェーロ「パパ、調子笛持ってる?」
父「ああ、ポケットにあるよ」
(影の声:キャッ、調子笛(音叉)を持って、オペラに行くんだぁ)

父は、ボローニャで手広く事業をしていましたので、三人の息子に家業を継がせるつもりでした。
13才になったルッジェーロも会計士の専門学校に入学します。夏休みのある日、ローマの海岸で、ルッジェーロが『オテロ』の"クレド"を口ずさんでいるのを聞いた紳士が、「素晴らしい声を持っている・・・」プロの声楽家のところに連れて行くようにと両親に奨めました。しかし、その時、父は、家業を継がせるつもりでしたし、プロの歌手にするつもりはなかったのです。
(この時すでに声変わりしていたそうです)
その後、祖母の奨めもあり、父は、再びモリナーリ・プラデッリに相談します。彼は、ルッジェーロの歌を聴き、即座に有名な声楽教師のエットーレ・カンポガッリアーニのレッスンを受けるように手配してくれたのでした。そして、父に歌手としてものにならなければ、それまでにかかった費用は全部返しましょう・・・とまで約束したのです。
会計士の勉強が嫌になっていたルッジェーロは、渡りに船、16才で会計専門学校を中退、歌の道に進むことにします。
さあ、いよいよエットーレ・カンポガッリアーニ先生のレッスンを受けることになります。
長くなりましたので、続きは次回ということで・・・・

※写真左上)ライモンディ三兄弟(左から、末っ子のライモンディ、5才上の長男のラファエッロ、3才上の次男のロベルト)
メモ:
ティート・ゴッビ(1915.10.24-1984.03.05 イタリア)
ボリス・クリストフ(1918.05.18-1993.06.28ブルガリア)
ルッジェーロ・ライモンディ(1941.10.3 イタリア)
エットーレ・カンポガッリアーニ(1903-1992 )
モリナーリ・プラデッリ(1911.07.04-1996.08.07 イタリア

※"RUGGERO RAIMONDI" Leone Magiera、"Bravo"ヘレナ・マテオプーロス著、その他インタビュー記事を参考にまとめました。


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コメント 20

euridice

左の写真、三兄弟ですか? みんな、ハンサムじゃねぇ・・;
歌手向きの子って、ピアノ嫌いが共通点? なんて、二つの例だけで言うなって・・!??^^;?

RRとPHの場合:
父親がオペラ好きってのも、共通点ですね。
ホフマンは父親がレコードかけても、興味はしめさなかったらしいけど・・・ 心には残ってたって。
by euridice (2005-07-22 07:32) 

ガーター亭亭主

いやぁ、ライモンディ親子のオペラ帰りの会話、すごいですねぇ。

しかし、モリナーリ・プラデッリと知り合いのお父さんって、、、、やっぱり生まれるべくして生まれたルッジェーロのような気もします。

ところで、初めてのオペラの指揮者は、もしかしてオリヴィエロ・デ・ファブリティースでしょうか。懐かしい。。。ワタクシが初めていたオペというものを認識した70年代半ばのNHK招聘「イタリア歌劇団」の指揮者だったと思います。
by ガーター亭亭主 (2005-07-22 07:44) 

TARO

>(イタリア映画のひとこまのようですね)

まるでヴィットリオ・デ・シーカかピエトロ・ジェルミの。
いや、「家族日誌」のヴァレリオ・ズルリーニあたりでしょうか。
それにしてもポケットに音叉って・・・
by TARO (2005-07-22 09:13) 

euridice

>「家族日誌」
この映画には・・・ 原作まで読んじゃいました。
でも、ライモンディ家は裕福なのが、違うかな?
by euridice (2005-07-22 10:07) 

TARO

euridiceさん

思い出の映画なんですね?
ズルリーニはこの後の「国境は燃えている」も良かったですね。「家族日誌」や「鞄を持った女」「高校教師」は発売されたのに、「国境は燃えている」だけLDでもDVDでも出てないんですよ。欲しいんですが。
by TARO (2005-07-23 00:06) 

euridice

>「国境は燃えている」
これは見てないような気がします。
「家族日誌」のジャック・ペラン、後に(「Z」がはじめ? 出演もしてましたけど)映画プロデューサーとして、登場してちょっと驚きました。見てないんですが、渡り鳥の映画もそうだそうですね。
by euridice (2005-07-23 00:42) 

keyaki

ガーター亭亭主さん
イタリアのオペラ愛好家って、いつも音叉を持って歩いているのが普通なんでしょうね。
日本のオペラファンでも劇場に持って行っている人いるかも・・・今はチューナーとかで、即座に音が分かるのもあるんですよね。

>モリナーリ・プラデッリと知り合いのお父さん
祖母の友達・・と書いてある記事もありますし、お父さんが息子のことを相談して知り合いになったというように書いてある本もあります。いずれにしろ、彼の歌を聴いて、歌の勉強をするように奨めたのはプラデッリということです。

>オリヴィエロ・デ・ファブリティース
1971年のNHKのイタリア歌劇団の「ファヴォリータ」と「リゴレット」には、ライモンディも出演していて、「ファヴォリータ」がファブリティース指揮ですね。
ライモンディのオペラデビューは「シチリアの晩鐘」の代役で、指揮はガヴァッツェーニでした。
by keyaki (2005-07-23 02:44) 

NO NAME

euridiceさん

渡り鳥の映画、おさかなさんのサイトに詳しくのってますね。
http://blog.so-net.ne.jp/osakana2005/2005-04-29

少なくとも日本で公開されたものとしては、「Z」がはじめじゃないかと思います。あの映画テオドラキスの音楽も良かったですね。
ペラン、今やすっかりヨーロッパ映画界を代表する、大プロデューサーですね。
by NO NAME (2005-07-23 11:08) 

にぃにぃ

ボローニャのテアトルコムナーレには、ライモンディ家の桟敷があるそうですよ。
以前『オペラ歌手のことを書いて~』シリーズに登場した評論家 黒田恭一氏は、RRがボローニャで初めて『ドン・ジョヴァンニ』をうたった時に招待されて、この桟敷でライモンディ家の皆さんと観劇したとか。(羨ましい!)
劇場に専用の席を持ってるなんてかっこいいな~(^o^)
by にぃにぃ (2005-07-23 13:10) 

keyaki

にぃにぃさん、
また、歌劇場が自宅から近いんですよ。多分自宅のテラスから見えるんじゃないかな。
by keyaki (2005-07-24 00:55) 

おさかな♪

keyakiさん、こんばんは~♪
RRさんの、子供時代のこの写真は何度見ても可愛らしいです。
>歌劇場が自宅から近いんですよ・・・
近くの劇場にお父さんと二人でぷらっと徒歩で出かけて、いろいろお話するなんて、ホントに素敵です。イタリアの野外オペラなどは、観光客が観るのは難しいと聞きました。事前のチケット入手がいろいろ難しく、その分地元の人は観やすいようです。RRさんは小さいときから素晴らしい音楽に触れてたんですね♪

NO NAMEさん
渡り鳥の記事を読んでくださって、ありがとうございます。
by おさかな♪ (2005-07-24 19:27) 

ライモンディ3兄弟、はじめて見ました!この左端の少年が彼ですね?って思ったとたん、あれ、あれ、三人ともそっくり~。でもやっぱり、左端の少年でいいんですね。末っ子ちゃんなんですもんね。
姉が覗き込んで、「えっ、ライモンディより背が高い人がいるの?」ですって。子供のときの写真ですってば。
しかし、海岸でヤーゴのクレドを口ずさむって~!只者じゃないんですねホントに!

>>歌手向きの子って、ピアノ嫌いが共通点? なんて、二つの例だけで言うなって・・!??^^;?

ホセねたですみませんが、彼も、小さい頃ピアノを習いに行かされたものの、「この子は音楽には向かない、他の事をさせたほうがいい」って送り返されたって話です(^^;
by (2005-07-24 20:15) 

euridice

りょーさん
イラストが可愛い!

>>>歌手向きの子って、ピアノ嫌いが共通点? 
>ホセねたですみませんが、
とんでもない、情報、うれしいです。
これで三例になりましたね^^; 

>渡り鳥の記事
私も、おさかな♪さんの記事で、この映画を知りました。
残念ながら、まだ見てないんですけどね・・・
ジャック・ペラン、凄いです。
by euridice (2005-07-24 20:27) 

TARO

すいません。NO NAMEはTAROです・・・
今まで全然気づかなかった・・・
by TARO (2005-07-24 23:57) 

keyaki

おさかな♪さん Nice!ありがとう!
ライモンディさんは、いつもお父さんが見守っていてくれたので、今日の自分がある・・・と言っています。

>りょーさん
お父さんもハンサムなんですよ。
お父さんはキャバレーで歌ってたとか話しているビデオがあるんですよ。ジョークかもしれませんけど。

クーラもピアノすぐにやめちゃったんですか。
クーラ、ホフマン、ライモンディ、まだいるかしら?

>TARO さん
NO NAME、TARO さんってわかりますよ。
by keyaki (2005-07-25 02:40) 

>>お父さんもハンサム

血は争えないか~・・・。写真が見てみたいですー。

>>クーラもピアノすぐにやめちゃったんですか。

http://www.josecura.com/NewFiles/BioFiles/quick.html
ここにも書いてありますけど、
DID YOU KNOW . . .In 1970, at age 8, Cura’s first piano teacher sent him home with a note saying: “Little José is not very interested in music so it might be better if you find him another hobby.”
だそうです^^;
でも後から、12歳でギター、15歳で合唱指揮デビュー、16歳からピアノを再開してるんだそうです。

>>まだいるかしら?

だれか他にもいそうですよね~^^;
by (2005-07-25 09:11) 

ミン吉

こんにちは。
大スターが歩み出す最初の一歩って、誰のものでも興味深いエピソードですね。

ところで
> 「パパ、音叉持ってる?」
> 「ああ、ポケットにあるよ」
ですが、これはひょっとしたら、パパ・ライモンディが
「Fの音なら、音叉がなくたって、お父さんはわかるよ」
って意味かもしれませんね。
原文はどう表記してますでしょうか?
by ミン吉 (2005-07-25 17:39) 

euridice

りょーさん
>でも後から、12歳でギター、15歳で合唱指揮デビュー、16歳からピアノを再開してるんだそうです。

なるほど、なるほど・・・

ペーター・ホフマンも「ピアノのおけいこ挫折、そして、ギターへ」だったので、それについて、TBします・・・m(_ _)m
by euridice (2005-07-25 18:53) 

keyaki

ミン吉さん、ようこそ。
もしかして、訳して下さるとか・・今度質問してもいいですか。
知りたい一心で必死で訳してますが、日本語にするのが難しい!
公開するのもおこがましいのですが、まあ、その辺は、もう怖い物無しの・・・ですので・・
けっこう??の部分もあって、その辺は、適当にごまかしてます。
ご要望の部分です。
-Hai il diapason in tasca?
-Certamente.
-Dammi quel "fa"acuto,per favore.
Cesare cercò lo strumentino e soffiò la nota desiderata.
"diapason"というのが、調子笛のほうが妥当のようですね。

ついでにお願いなのですが、まだいつかはわかりませんが、
「イエルザレム」の記事を書くつもりでいますが、
その時リンクさせて頂いてもよろしいでしょうか。
by keyaki (2005-07-25 20:55) 

ミン吉

keyakiさん

原文ありがとうございます。
しっかり strumentino を soffiare って言ってますね。
これだと、おっしゃる通り、音階の出る笛のようなものでFを確認したということですね。
お手数おかけしました。

《イエルザレム》へのリンク、もちろんどうぞ!
まだ新しいCDも、楽譜もないころに書いたので、今となっては情報不足でお恥ずかしいです。
いつか書きなおさにゃと思っています。
by ミン吉 (2005-07-26 08:36) 

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