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オペラ歌手と年齢(役柄と年齢) [オペラの話題]

 R・ライモンディの役柄と年齢を調べてみました。
テノールと違って、バス・バリトンの役柄は、年齢不詳(悪魔とかですネ)か老人の役がほとんどです。先の記事でもご紹介しましたが、63才でドン・ジョヴァンニというのはどうなんでしょ、もしかして、最高齢のドン・ジョヴァンニだったりして。まあ、ファンとしては、ファルスタッフを歌ってくれていた方が、なんといいましょうかぁ心中穏やかというか、複雑な心境です。

それはともかく、彼が、役柄と年齢について語っていることをちょっとご紹介。
◇ドン・ジョヴァンニは25才でデビューしました。最初から非常にやりやすかった。バスの役は、暗く、貪欲で、いやらしく、邪悪で、女に肘鉄を食らう老人の役、というのが相場ですから、そういう人物になるためには、歌うたびに少なくとも40才は年をとらなければならない。外観だけでなく、内面的にもです。それは決して楽なことではなかった。ですから『ドン・ジョヴァンニ』をやれと言われた時、これはいいと思いました。やっと自分の年齢のままに振る舞えるな、と。

◇『オテロ』のヤーゴは54才で初役でした。なぜこのように長い時間を必要としたのかという質問に対して、「50代になったときにこそ、こういう異常な役をやりうると常に考えていました。私は深いバスではありません。常にバッソ・カンタンテでした。勉強をはじめたときから、この役が可能な事に気付いていました。ある意味で、20年前に計画していたことです。」
(※シェイクスピアのオセロではヤーゴは28才ということでしたかしら)彼の見解では、ヤーゴのような「悪」を演じるのは若い時は難しいということでしょうね。

◇『ボリス』は31才で、若すぎると思われる時期に演じていますが・・という質問に対しては、「若かったです。あの役は非常に美しい役で、ヤーゴよりはずっと容易に同化できます。」

R・ライモンディは、16才というかなり早い時期から、オペラ歌手目指して勉強しています。男性歌手ではけっこうめずらしいかもしれませんね。非常に恵まれた環境にあり、幼い頃から指揮者のモリナーリプラデッリと親しく、何を歌うべきかとか、だれが信頼できるかとか、声をいかに維持し発展させるかとかの、重要なアドバイスをしてくれたそうです。 教師や先輩歌手達にも恵まれ、すでに第一線で活躍していたタッデイ、カップチッリ、パネライ、ブルスカンティーニとかが周りにいて、いつも適切なアドバイスをしてくれていたそうです。デビュー後も、よく知られているように偉大な指揮者、演出家との出会いにより、成長しキャリアを築いてきました。※簡単なプロフィール

主要な役柄を演じた期間、年齢 (1964年フェニーチェと5年契約、最初の2年は小さい役に専念)
◆プロチダ:シチリアの晩鐘(1964−2004)22ー62才代役で歌いプロデビュー
メフィスト:グノーのファウスト(1966−2004)24ー62才
◆フィガロ:フィガロの結婚(1967−1987)25ー44才
◆ドン・ジョヴァンニ(1967−2005)25ー63才
◆フィエスコ:シモン・ボッカネグラ(1968−1986)26ー45才
フィリッポII:ドン・カルロ(1968−2003)26ー61才
◆シルヴァ:エルナーニ(1968−2002)26ー60才
◆ザッカリア:ナブッコ(1968−1979)26ー38才
◆モーゼ:モーゼ(1968−1994)26ー52才
パガーノ:ロンバルディ(1969−1994)28ー52才 66才
◆アッティラ(1970−2001)29ー59才
◆ボリス・ゴドノフ(1972−1996)31ー55才
スカルピア:トスカ(1979−2008)37ー66才
エスカミーリョ:カルメン(1980−1984)39ー43才
ドン・キショット(1982−2003)40ー60才
◆伯爵:フィガロの結婚(1983−1994)41ー53才
ファルスタッフ(1986−2005)44ー63才
セリム:イタリアのトルコ人(1986−2007)44ー65才
◆ムスターファ:アルジェのイタリア女(1986−2007)45ー65才
悪漢4役:ホフマン物語 (1995−2004)53ー60才
イヤーゴ: オテロ(1996−2004)54ー62才
◆ドン・パスクアーレ(1997−2004)55ー63才
ベケット:大聖堂の殺人(2000−2007)58ー66才
◆ドン・アルフォンソ:コジ・ファン・トゥッテ(2003−2006)61ー65才
◆ドゥルカマーラ:愛の妙薬(2006−)64ー予定

(本、ネットで調べてわかる範囲ですので、正確ではないかもしれません)

※写真右)1972年(エルナーニ)シルヴァ役ライモンディ(30才) コレッリ(50才) カップチッリ(42才) リガブーエ(43才)
老人のシルヴァが30才、エルナーニが50才、でもコレッリですからね・・・・

※写真左上)一番最近の公演は2002年、ライモンディ60才、シコフ52才、ヌッチ59才、コズロフスカ43才、ベテラン総出演というかんじで、年齢的には釣り合いがとれていますが、若手も入れろ!とブーが聞こえそうな気もしますね。


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TARO

前からずっと気になってたんですが、ライモンディの本来の持ち役はフィガロですよね。彼の声域から言っても、主にカヴァリア・バリトンによって歌われる伯爵じゃなくて、バス・バリトンによって歌われる方がふさわしいフィガロを持ち役にするのは当然だと思うんです。(実際はバリトンがフィガロを歌うことも多いですが。)

それがなぜ伯爵に変えたんでしょう?このリストだと並行して歌っていたのは2~3年しかなくて、あとずっと伯爵なんですね。キャラクターが伯爵の方が似合うと判断したということでしょうか?
by TARO (2005-04-15 01:09) 

keyaki

TAROさん、新国のフィガロに行ってきました。
久々の2階席だったにですが、悲しいくらいガラガラ...平土間はだいたい埋まってました。
知ってる歌手さんはブレンデルとムラーロ、ムラーロはバスなんですね。最初はギョェでしたが、慣れてくると伯爵のバリトンと区別がついていいかなぁとおもいました。

さて、ライモンディが伯爵を歌いたがった理由は、
「フィガロの結婚の伯爵を歌うべきだと、ライモンディに1973年に最初に提案したのはレンネルトだったが、諸々の理由で、ジュネーヴでこの役のデビューを果たしたのは十年後だった。この時の忘れられないスザンナはマリア・ユーイングだった。その後、彼はフィガロ役に戻るつもりはなかった。」
ということで、1985年メト、1987年ザルツで歌ったのはすでに契約してたからでしょうか。(※フィガロの最後は1987年でした)

「伯爵は態度も性格付けも非常に複雑で豊かだが、フィガロは敗者で、演じる方法は三種類しかない」
そうです。(よくわからんことをおっしゃってます)
とどのつまり、まあ、キャラクターとして、伯爵が好きなんですね。
それに、TAROさんがどういう意味かわかりません・・・・とおっしゃった、
「伯爵はドン・ジョヴァンニの父であり、ドン・アルフォンソは土にかえったドン・ジョヴァンニなのだ。」
ということからも伯爵こそ演じがいがあるということでしょう。
by keyaki (2005-04-15 04:10) 

euridice

凄い!! それにしても、キャリアの進み方がよくわかりますね。こういうことは歌手一人一人の巡り合わせや個性、好みなどによって作り上げられて行くもので、誰一人同じなんてことはないだろうと思います。
by euridice (2005-04-15 08:24) 

keyaki

そう、その通りです。
特に歌手に関しては、十把一絡げの考えはおかしいし、「細く長く」「太く短く」「太く長く」「細く短く」いろんなタイプがあるのが当然。みなさん、自分で選んだ道を進んでいるのヨ! 
とかく、固定観念に捕われ、その枠からはみでると叩きたがる人が多いですからね。
あまり他の歌手さんのことは追っかけてないので知りませんが、フレーニは最高に「いきの長い」歌手の一人ですけど、当然自分の声に合ったものを歌っているからで、しかも彼女が自分の声に合っていると判断したのが一番自然なつまりノーマルな声で歌えるリリコというやつでしょ。
コロコロ系とかドラマティコが向いている歌手もいるし、リリコというのは特に声のアクロバットがないかわりに「表現力」が勝負なんです。これも誰でもできる訳ではないので、リリコでいれば長持ちするかもわからないけど、ここはドラマティコで勝負!ってことになるばあいもあるでしょう。
それを若い時はヴェルディは歌うなといってもねぇ、若い時っていくつぐらいかしら? ヴェルディにもいろいろありますしね。
そういえば、ライモンディも16才の時に、オペラ界では超有名なマエストロのレッスンを受けて、初っぱなから「当分ヴェルディはダメヨ」と言われて、「クソ面白くねぇ」と数ヶ月でトンズラしてます。お父さんは、せっかく大先生の教室に入れたのに・・とカンカン。
ということは、若い時=16才ですかしら。
なんの話でしたっけ??
一般論でいえば、日本の教育が多様性を認めないから、もともと「みんな一緒」が大好きな国民性を助長してしまうのね。トイウコトデマトメテミマシタ、シリメツレツ
by keyaki (2005-04-15 10:41) 

euridice

ホフマンなんて、歌の勉強開始もRRに比べたらとっても遅いですよね。はじめて声楽の先生のところに行ったとき、何か歌ってと言われて「オランダ人」とか「闘牛士の歌」をやろうとして、「もっと軽いものはないの?」て先生にあきれられたそうです。「重い」「軽い」の意味も知らなかったって。その時、21歳。先生は魔笛のパパゲーノを聞きたがったそうですが、知らなかったから、とりあえず「闘牛士の歌」を歌ったんですって。
by euridice (2005-04-15 10:43) 

TARO

2階席ガラガラですか。「フィガロの結婚」なんてもういいや、「ルル」なら聞きたいけどというオペラ・ファンの方が多いのかも。
こういう客席の現状が、民間のプロモーターが海外の歌劇場を呼んで「真珠取り」や「アッティラ」や「ルイザ・ミラー」や「アリオダンテ」を上演するというのに、国立の劇場があいも変わらぬポピュラー路線という退嬰的な劇場運営に、楔を打ちこむものだといいのですが。

>「伯爵は態度も性格付けも非常に複雑で豊かだが、フィガロは敗者で、演じる方法は三種類しかない」

むむむ!よく判らないけど、考えてみる必要はありそうな、示唆に富んだ言葉ですね。

>「伯爵はドン・ジョヴァンニの父であり、ドン・アルフォンソは土にかえったドン・ジョヴァンニなのだ。」
ということからも伯爵こそ演じがいがあるということでしょう。

あ、これですね。喜劇もうまいけど、やはりシリアスな解釈により面白みを感じる人なのかもしれませんね。
by TARO (2005-04-15 12:16) 

euridice

>『ちゃんとした音楽教育』
何を持ってこう言うのかわかりませんけどね。『若い頃から大きい役をバリバリ歌いまくった』同様、一人の歌手のキャリアを研究したうえでの発言なのか、適当言っているのか、どっちなんでしょう。もうひとつの常套文句に『楽譜が読めない』ってのもありますね。
by euridice (2005-04-15 18:43) 

keyaki

イタリア人歌手には、『ちゃんとした音楽教育』なんて、そういうことあまり言わないですね。

もっと可笑しいのは、動物学者だとか、ケンブリッジ卒だとか自慢にもならないことを自慢する音楽評論家もどきとかファンがいますね。

『楽譜が読めない』ってのはパヴァちゃんのことのようだけど、これって褒め言葉じゃないのかしら。
フレーニも音符が読めず音楽を耳から学んでいるそうです。前夫のマジエラさん(指揮者、ピアニスト、ヴォーカルコーチ)がピアノを習わせようと考えたそうですが、ピアノを習うことで、彼女の天才的な能力が殺されることを恐れてやめたそうです。
ピアノを習わせるということは、音符が読めるようにしようとしたということなんでしょうね。
by keyaki (2005-04-15 23:50) 

ユルシュール

keyakiさん、先日は弊Blogの記事に温かいコメントを下さり、ありがとうございます。こちらにおじゃまするのが遅くなってしまい、本当にごめんなさい。

ライモンディ氏、とてもお元気そうですね。六十三歳のドン・ジョヴァンニ、ライモンディさんは実際の年齢よりも若く見えますし、舞台姿も写真で拝見する限りではまだまだ颯爽としていますから、OKなのでは?ヴァランシエンヌさんのおっしゃるとおり、渋い魅力のドン・ジョヴァンニになりそうです。
アルマヴィーヴァ伯爵を比較的遅くレパートリーに入れていたのが意外でした(TAROさんのBlogでも申しましたとおり、私にとって初めてのアルマヴィーヴァが彼だったのです)が、次の記事でのkeyakiさんのご解説で納得いたしました。
by ユルシュール (2005-04-21 22:38) 

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