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スチュアート・ニール、ハイCの着地に失敗しました! "Di quella pira l'orrendo foco" [テノールの高音]

verdi09.jpg ジュセッペ・ヴェルディは1813年10月10日に生まれました。
 Googleイタリアでは、ヴェルディの生誕を記念して左のようなしゃれた絵文字になっています。
(2009.10.10追記)
以下2009.10.9の記事
 昨年のミラノ・スカラ座開幕公演《ドン・カルロ》のテノール首事件で一躍時の人となったアメリカ人テノールのスチュアート・ニール(Stuart Neill -44才)、9月にはスカラ座来日公演でもドン・カルロを歌ってますから、日本でも、ちょっとは名が売れているのではないかと思います。
 テノール不足なのか相変わらずイタリアで活躍しているようで、フィレンツェで《トロヴァトーレ》に出演。マンリーコのあの有名なカヴァレッタ、『母さ〜ん 助けに行くから待ってろよ〜 "Di quella pira l'orrendo foco" 見よ、恐ろしい炎を"』 の最後のアラーールミ!のハイCの着地に失敗....これがたまたま中継放送されました。劇場ではこういう失敗は、日常茶飯事だと思いますが、放送されるのはなかなかないと思います。舞台では、ボエームの"Che gelida manina" 同様、半音下げが当たり前になっていますので、移調しないで歌っているのも貴重といえます。しかも、ニールは、余程自信があったのか、完全版の繰り返しヴァージョンで歌っています。それで結局はスタミナ切れで、最後でつぶれちゃった....というわけです。自分を過信しすぎたということでしょうか.....失敗しましたが、観客は同情の拍手でこたえています。

★メーデー!メーデー!コントロール不能!頑張れ! あぁ〜墜落....
スチュアート・ニール
フィレンツェ 2009.10.4(正調/完全版)
♬iPhone/iPad用 mp3

 ニール自身もこんな自分が女にもてる二枚目役をやらせてもらえるのは、「高音がある」からだ...と自覚しているんでしょうか。半音下げでやりたい...と言えなかったとしたら.....ちょっと同情しちゃいますが、いずれにしてもこれでは太っている言い訳にはならないじゃないですか。
  このカヴァレッタも、ボエームの”Che gelida manina" と同様、楽譜通りに歌えば、ハイCなんてないんですけど....移調してでも最後を上げて、ハイCではなくハイBでも、とにかく最後を上げて終わりたい....またそうしないと観客が納得しないということのようです。実際にホセ・クーラが楽譜通りに歌って、観客ともめたことがあります。
 新国でも、ランド・バルトリーニのマンリーコを見ましたが、最後のアラーールミ!は、剣を高く上げてハイCで盛り上がって終わるのがお約束ですが、不発だったので、剣も下がっちゃったみたいな...記憶が....

 生の舞台では、本当のハイCにこだわるよりも、用心して半音下げで歌って、観客に失望を味あわせないことも大切なことなのかもしれません。テノールって、いろいろ大変ですね。

最近のマンリーコ君は、どんなかな.....
ロベルト・アラーニャ
パリ・バスティーユ 2003(半音下げ/完全版)
♬iPhone/iPad用 mp3


ホセ・クーラ
コヴェントガーデン, 2002.4.27(半音下げ)
♬iPhone/iPad用 mp3


マルセロ・アルバレス
2009.2.28メトロポリタン(半音下げ)
♬iPhone/iPad用 mp3


マルセロ・アルバレス ロールデビュー
パルマ, 2006.(正調 ハイC)
iPhone/iPad用 mp3

参考:Il Trovatore スコア

★プラシド・ドミンゴの見解『テノールに要求される高音について』
『ドミンゴにとって、高音の"do"は楽ではないし、全盛期のクラウスやパヴァロッティには及ばないところもあるが、"Si" の豊かさにかけては天下一品である。.........
「高音の"do"を歌うのは、《マノン・レスコー》第4幕のソプラノとの二重唱、《仮面舞踏会》の二重唱、《トゥーランドット》の謎かけのシーン、それに《オテロ》も一回出てくる。《ボエーム》と《トロヴァトーレ》《ファウスト》では、アリアを移調することにしている」そして、時がたつにつれて"do"には自信を持つようになったとドミンゴは付け加えた。』
『1969年の《トロヴァトーレ》の録音で、"見よ、恐ろしい火を"の最後の二つの"do"を出すのに悪戦苦闘したことを共演したバリトンのミルンズは覚えている。最初の"do"はうまくいったが、次が問題だった。「ドミンゴはタオルを首に巻いて、男性コーラスの前に立っていた。40人の男はみんな、たぶん自分のほうがうまくやれると内心思っていたに違いない。プラシドだって、彼らの腹の内はわかっていた。」 ドミンゴは、汗まみれで何小節か前から繰り返してくれるよう頼んでは、何度も何度も挑んだ。そうこうするうちに、突然、ほんとうに美しい声が出た。ずいぶん昔の話だが、ミルンズはその話になると今でも感嘆のあまり顔を輝かせる。「彼のガッツには恐れ入るばかりだった。いってみれば世界を前にして気力で立ち向かったんだ。汗ぐっしょりで、とうとうやってのけたんだから」』
"ドミンゴの世界 ダニエル・スノウマン著"から抜粋

関連記事:
またまた事件〜スカラ座開幕公演《ドン・カルロ》
カラヤンの《トロヴァトーレ》ドミンゴは、半音下げなら...ということでボニゾッリの代役で歌った
アルフレードとマンリーコ
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コメント 10

euridice

^^+++ひっくり返ったとかじゃなくて
まさしくコントロール不能→失速→ふにゃ〜〜と墜落ですね^^+++
生命に関わらない墜落ですから、楽しかったです。
それから、写真、ユーモラスですねぇ・・

新国のランド氏もとても楽しませてくれました。
剣を下げたのがなかなかの愛嬌でした。

マルちゃんはさすがですね!

ホフマンの伝記に
高音とマンリーコに関連したパヴァロッティの言葉が引用されてます↓

「観客は、テノールが輝かしい高音、高いドの音を出せば、他のところでさんざんひどい歌い方をしても許してくれるが、ある晩の公演で、天使のようにすばらしく歌いながら、最高音を一つ失敗して、すべてをぶちこわす可能性もあるのだ。どんな公演にしろ、高いドの音を出し損なったら、立ち直れない」

「テノールが年を取ったら、声が以前より暗くなるのは、自然なことだ。もちろん私が強調したいのは、これは、その高音が失われるということを意味せず、単に声が自然により暗い音色を帯びるようになるだけだということだ。こういうことは、だいたい年齢が、四十歳ごろ起こる。だから、私は四十歳まで待ってから、マンリーコを歌ったのだ」
by euridice (2009-10-10 11:49) 

Sardanapalus

あららら~出だしは勢いがいいのに、途中から失速していますね。なんとかごまかして頑張っていたのに、最後の最後に息切れしちゃった感じ…。一生懸命Cにぶら下がろうと努力しているのが余計に観客の同情を誘ったのかしら?確かにこういう状態が放送されるのは珍しいと思います。こういう歌唱になってしまう恐れがあるなら、
>生の舞台では、本当のハイCにこだわるよりも、用心して半音下げで歌って、観客に失望を味あわせないことも大切なことなのかも
しれませんね。観客の反応を考えると楽譜どおりに歌う勇気のある歌手はあまりいないでしょうし、実際の劇場で半音下げにすぐ気付く人なんてごくごく一部でしょうから。ここで失敗すると舞台としての緊張感がなくなってしまいますものね。
by Sardanapalus (2009-10-10 12:54) 

シャンティ

ニールファンの方が読まれたら怒られるかもしれませんが、 この人の歌い方、先日TVのドン・カルロを聞いたときにも感じましたが、”ぶち切れうどん”。~うどんを手作りして失敗し、ぶちぶちと切れちゃったという感じではないでしょうか。歌のメロディーの美しさが聴こえてきませんね。CDで デルモナコ、コレッリになじんでいるので本当に今 マンリーコあたりからさらに重い役の人手不足を感じました。
by シャンティ (2009-10-10 14:33) 

Madokakip

私個人的には、この音源で聴く限り、ニールの声質そのものはこの役には必ずしも悪くはないと思うのですが、
リズムのつかめていなさ・大体さ・適当さが、
ここで紹介されている他のテノールと比べて、とても気になりました。
アルヴァレス(の特にパルマ)は、高音もさることながら、その点でもとても優れていますよね。
ということで、ニールの場合は、半音下げてみても、やっぱり聴いている方が満足できない、ということになってしまうのかもしれないな、と思ったりしました。
あらためて、興味深い音源をご紹介いただき、ありがとうございました!
by Madokakip (2009-10-10 15:42) 

ペーターのファンです。

聴いてみましたが、ホントにコントロール不能→着地失敗・・・ですねえ。
拍手の感じが「よしよし、お疲れさんだね~、頑張ったね~」と聞えます。

ニールの歌はデカイ声がぶつ切りに吠えてるだけで、リズムをつかまえることもオケに乗ることもできず、歌の美しさ皆無の大雑把・・・。吠えずに歌えないのか本人に聞いてみたくなりました。まぁ、無理だからこうなってるわけですが。

声も歌唱技術も抜きん出ていれば容姿には片目どころか両目もつぶるかもしれませんが、この歌いっぷりにこの姿では許してもらえないでしょう。
シャンティさんの「ぶち切れうどん」にはまったく同感です。こねてる時点ですでに失敗した極太うどん一丁あがり~とか。

他の三人はそれぞれ良いですが、やはりパルマのマルちゃんが素晴らしいです。これなら丸くても太っててもOK!です。
by ペーターのファンです。 (2009-10-10 23:20) 

keyaki

euridiceさん
パヴァロッティの
>どんな公演にしろ、高いドの音を出し損なったら、立ち直れない
は重みのある言葉ですね。
でも、スチュアート・ニールは、あのあともたらふく食って悩むこともなく寝ちゃったんでしょうね。

>私は四十歳まで待ってから、マンリーコを歌ったのだ
グリゴーロのマンリーコは10年先......聞くことができるかな....
by keyaki (2009-10-11 01:22) 

keyaki

Sardanapalusさん
世の中、ランクが上の歌手には厳しいですからね。最初から期待してない歌手には、やっぱりね....ですんじゃうようですね。
スチュアート・ニールも、繰り返し無しで歌っていれば、あそこまで失速はしなかったでしょうに.....
by keyaki (2009-10-11 01:26) 

keyaki

シャンティさん
スチュアート・ニールが、なぜスカラの開幕で歌うことになったのか、まったく分かりませんが、イタリアのフォーラムでは、プロではないとまで言っている人もいます。もちろんこの高音の失敗をあげつらってではありませんよ。ドン・カルロを聞いても、確かに、稚拙....としか言いようがないです。
ヴェルディを聞く楽しみ、躍動感ゼロですよね。
by keyaki (2009-10-11 01:40) 

keyaki

Madokakipさん
声がひっくりかえるというのは、けっこうありますけど、こういうコントロール不能で最後が決まらない...というのははじめて聞きました。
これがメトだったら、観客爆笑ってなことになったりして....(笑
自分の実力を知ることがプロとしての第一歩ですよね。

by keyaki (2009-10-11 01:51) 

keyaki

ペーターのファンさん
こういう見た目がどうしようもない上に歌もたいしたことないという歌手には誰も期待してないからずいぶん甘くなる...得てしてそんなものなんでしょうね。
これが、アラーニャとかクーラとかアルバレスだったら、それこそレタスが飛んで来るんじゃないかしら。(笑

スチュアート・ニールのマンリーコなんかさらさら聞く気はなかったのですが、オペラフォーラムで、かわいそうなニール....とか話題にされていたので、好奇心で聞いてみたのですが、ほんと、面白いものを聞かせてもらいました。

by keyaki (2009-10-11 02:02) 

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