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《ボエーム》コリーネ:中くらいの役(6) [ボエーム]

バス歌手が歌う、小さい役より、ちょっと大きい、中くらいの役シリーズ第6。
プッチーニ作曲《La Bohème ボエーム》、ロドルフォの仲間の一人、哲学者コリーネもその一つでしょう。あまり歌う場面はありませんが、最後に、ミミのために自分の外套を売りに行くときに『古い外套よ、さらば、金や地位に惑わされず信念を曲げることなく、今まで自分をかばってくれた古い友に感謝する、さらば、さらば...』と淡々と歌うアリアがあります。ライモンディにとっては、とても縁のあるアリアですが、恐らく、御本人は、好きな歌ではないのではないかと思います。知人に言わせれば、この歌が好きって歌手がいるの?....なんて言われてしまいましたが.....
■参考:《ボエーム》:コリーネ 公演記録1964〜1974

《ボエーム》コリーネのエピソード
1964年ボローニャ音楽院での勉強も3年目となる。ルッジェーロ(22才)は、音楽院の発表会は大成功で拍手喝采を受けた。次はスポーレートでのコンクールに挑戦した。
予想通りに、ルッジェーロは、スポレートのコンクールで優勝、そして《ボエーム》で、ウンブリアの市民劇場でオペラデビュー、1964年9月23日22才、新人として最高のコリーネだった。
(レオーネ・マジエラ著"ルッジェーロ・ライモンディ"より) 
このスポレートの"il Concorso di Canto Adriano Belli"で優勝すると、オペラに出演させてもらえるという特典があって、それが《ボエーム》でした。ソプラノのPaola Bornignaはミミ、テノールのFranco Castellanaは、ロドルフォ、そして、バスのライモンディは、コリーネ、この3人の歌手が、デビュー、マルチェッロを歌ったのは、1961年の優勝者レナート・ブルゾンでした。この写真の記事では、コリーネという脇役にもかかわらず、ライモンディを写真入りで紹介しています。この時から注目されていたんですね。(あとの二人の新人歌手のその後は、ちょっと調べましたが、わかりません。)

コリーネのアリア"VecchiaZimrra"のエピソード
ライモンディは2、3才の時から、オペラ愛好家の父チェーザレ所蔵のレコードを聴いて育ち、10才からは、父のお伴で劇場通いをするという、彼自身が子供の頃からのオペラ愛好家でした。家業を継ぐために、会計専門学校に入学しますが、彼には天性の素晴らしい声があるということがわかり、経理の勉強は大嫌いだったので、即、勝手に退学、16才で、ミラノ音楽院のカンポガッリアーニ先生の教室で歌の勉強をすることになります。はじめてのレッスンでのことです。
「ルッジェーロ、何を歌ってくれますか?」
「悪魔ロベルト"Suore che riposate"を歌ってもいいですか?マエストロ」
「ちょっ、ちょっとまって、君は、いくつかね。」
「16才です。マエストロ」
「だったら、もっと静かで、穏やかで、メロディーの美しいカンタービレな曲を歌わなくてはね。"外套の歌Vecchia Zimarra "とか、ファヴォリータの"星は空にSplendon piu` belle in ciel le stelle"はどう? 歌えるかな?」
「はい、多分、2番目のは覚えています。でも僕にはその曲は・・・」
「大丈夫、大丈夫。歌えると信じてますよ。」とカンポガッリアーニ先生は、ハ長調で短い前奏を弾きながら笑った。先輩全員の注意が、彼に向けられたが、ルッジェーロは、実に堂々と歌った。ドニゼッティのメロディーは、下の"fa"が他の音と同じように美しくなかったかもしれないが、楽々とよどみなく流れ出た。最後の"fa""mi"の音符のような 低音の声域は、彼にとってしばしば満足のいくものとはいえなかった。しかしカンポガッリアーニは、そのことをあまり重要とは考えていなかったようだ。
「とてもよかったですよ、ルッジェーロ。今は、このジャンルに専念しなさい。当分の間は、ヴェルディとマイヤベーアは禁止ですよ!」
(レオーネ・マジエラ著"ルッジェーロ・ライモンディ"より) 
やっぱり、"外套の歌Vecchia Zimarra "は、興味のない歌だったんですね。
※関連記事:
・ミラノでの最初の勉強(1)会計士高等専門学校自主退学
・ミラノで最初の勉強(2)カンポガッリアーニ先生
・いよいよ歌手デビュー(20)スポレート〜ローマ歌劇場へ

ついでの話:
《ボエーム》は、ボヘミアンと呼ばれる若い芸術家達の物語ですから、普通は、若い歌手たちによって歌われますが、まあ、オペラのことですから、それを得意のレパートリーにしているヴェテラン歌手が、歌うこともよくあります。
日本では、1999年にミレッラ・フレーニ(1935.02.27- )が、64歳でミミを歌っています。その時に、ニコライ・ギャウロフ(1929.09.13- 2004.6.2)も一緒にコリーネを歌ったそうです。69歳の老哲学者ですね。大喜びのファンといくらなんでも....というファンに意見は別れたようですが。まあ、脇役にわざわざ大御所を引っ張り出すこともないと思いますけど、フレーニと夫婦だったのでそういうことになったんでしょうね。


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コメント 4

euridice

64歳のミミ、69歳の....
舞台だから、夜目、遠目だし、うまくだましてくれればオーケーということですね。
他のお仲間がおいくつだったかによりますが....
年の差なんて!もありにしても、あんまり凸凹に見えちゃうと
とんでもなく興醒めかもしれません。
そのまんまで、熟年ボエームだろうが、老年ボエームだろうがいいと言えばいい話とも言えます。
by euridice (2006-10-03 08:37) 

ヴァラリン

うふふ。取り上げて下さるのでは…?と、期待してました(^^!
若いバスにとっては、貴重な、年齢に相応しい等身大の役なんですよね。大きな劇場にデビューする時には、うってつけの役だったりとか。
実はこのアリアよりも、アンサンブルで、ボソボソつぶやいているようなところのほうが好きかも(^^;

歌手本人にとってはいざ知らず、私にとっても、色々と思い入れのふか~い役です。やっぱり、歌う時期が近づいてくると、なんとなく取り出して聴いてしまいますね…
by ヴァラリン (2006-10-03 09:23) 

ヴァラリン

便乗記事を作りましたので、TB&リンクさせて頂きました。
by ヴァラリン (2006-10-09 22:59) 

keyaki

ヴァラリン さん、TBありがとうございます。
リアルタイムで聴けるヴァラリンさんがうらやましいです。
ライモンディも、子供の頃はこの歌に興味がなかったようですけど、
男ばっかりの3人兄弟ですから、きっと地でいける役で、舞台は好きだったと思いますよ。
by keyaki (2006-10-10 16:57) 

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