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エピソード:声楽授業(4)ミラノ編 [ L.Magiera著:RR]

7月26日の記事の続きです。

カンポガッリアーニ先生のもとでは、とりあえずは聴講生ということでしたが、たまには歌わせてくれました。でもいつもバルダッサーレが、娘の死を悲しんで歌う「星は空に」です。(悪魔ロベルト歌いたい!)

しかし、授業は、目新しくて刺激的で、注目に値するものでした。この教室のレッスン生達はほとんどが普通の入学者ではなかったのです。たとえば、数ヶ月後には、ミラノ小劇場(Piccola Scala)でジョルジョ・ストレーレルのもとで歌うことになっている、ルイジ・アルヴァ、ローランド・パネライ、グラツィエラ・シュッティもその勉強のために来ていたりするのです。

ミラノで過ごしたこの期間は、決して無駄ではありませんでした。彼の芸術的且つ文化的向上に非常に役立ったのです。ここには、ジョルジョ・ストレーレル、ルキーノ・ヴィスコンティ、アントニーノ・ヴォット、ジャナンドレア・ガヴァッツェーニのような著名な芸術家がいたのです。
また、ミラノ・スカラ座で、「西部の娘」を見ることができました。同郷の有名なミニー役のジリオラ・フラッツォーニとマリオ・デル・モナコ主演です。
父チェーザレのボローニャの友人の実業家が、チケットを手に入れてくれましたし、そして、ある時、ミラノの社交界のWally Toscanini, Nandi Ostali, Giovanna Lomazziを紹介してくれたりで、それなりにミラノライフを満喫していました。

しかし、数ヶ月が過ぎるとともに彼の不満は、つのってきました。
カンポガッリアーニ先生の学校は、相変わらず正規の通常の生徒とそうでない生徒、聴講生と様々な志願者であふれていました。
その上、ミラノの街は、とても寒くて霧が深く、気管支になんらかの異常をもたらしただけでなく、北の暗い雰囲気の景色は、彼を陰鬱な気持ちにさせました。(ミラノの霧は確かにすごい!)
そんなある日、芸術家達がよく出入りするレストランで、偶然ジュセッペ・タッデイ(当時41才)と知りあいになり、彼に悩みをを打ち明けたのです。
「もし、本気で声楽の教師を捜しているのなら、ローマのギバウド先生に問い合わせてみたらどうかな」
ルッジェーロは、そのアドバイスを躊躇することなく全面的に受け入れ、会いに行くことにしたのです。

ローマに行く前に、ボローニャに帰って、このことを両親に報告しようと考えました。
ママはなんて言うかな! と気楽に考えていました。
「何を言っているんだ! 誰も聞いたことがないグリッパウドとやら言う新しい教師のためにカンポガッリアーニ先生のところで勉強するのを投げ出すのか。カンポガッリアーニ先生は、イタリアで最も偉大な声楽教師なんだぞ!」父は厳しい口調で猛反対したのです。
「ギバウド先生だよ、パパ、」とルッジェーロは、反論しました。彼女は、エンリーコ・カルーソーと「アドリアーナ・ルクブルール」を初演した有名な歌手だったのですが、本当に誰もその名前を聞いたことがなかったのです。
家族全員が、食卓に集まり、両親はルッジェーロに考え直すように説得を試みました。
こういう難しい問題に巻き込まれたくないので、二人の兄達は、部屋から出て行ってしまいました。
「ルッジェーロ、今は、聴講生だけど、来年は、ミラノのヴェルディ音楽院でちゃんとお勉強できるようになるし、ディプロマも取らなくてはね、個人レッスンだけなんて・・・」と母は、落胆し、ミラノに戻るようにやさしくさとしました。
「そのことは、心配しないで、ママ、いつでも個人的に試験を受けることができるから。」
「誰が、この新しい先生を紹介してくれたんだ」
ギバウドが非常に評価されている音楽家で、チレアの初演歌手ということがわかった後は、父の態度はちょっとやさしくなりました。
「特に、ジュセッペ・タッデイが薦めてくれて、カップッチッリ、パネライ、ブルスカンティーニ先輩達もすばらしい先生だって言ってるよ。」
「ルッジェーロ、お前の幸運を願っているよ。」 両親は、息子をローマに行かせることにしたのです。ー続くー

※エドヴィージャ・ギバウド Ghibaudo, Edvige, Alt, *1870 (?), † (?))、チレアのアドリアーナの初演の歌手 カルーソーと共演(1902年) した。

◇Giuseppe Taddei (1916ー ) 
◇Sesto Burscantini(1919ー 2003)
◇Rolando Panerai (1924ー )
◇Piero Cappuccilli (1929 11.9ー 2005.7.11)


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コメント 2

にぃにぃ

>ある時、ミラノの社交界のWally Toscanini, Nandi Ostali, Giovanna Lomazziを紹介してくれたり、
>レストランで、偶然ジュセッペ・タッデイ(当時41才)と知りあいになり、
>ルイジ・アルヴァ、ローランド・パネライ、グラツィエラ・シュッティ…
って、さらりとすごい人たちの名前が出てきますねぇ…(*o*;) びっくりするような人脈。名歌手の現役時代に私淑できたなんて、RRはいい時代にめぐり合わせたんですね。
今のRRを見れば納得!です(^^)♪
by にぃにぃ (2005-08-03 22:38) 

keyaki

にぃにぃさん、読んで頂いてありがとう!
歌手さん同士ってライバルに見られがちですけど、「仲間」意識の方が強いとおもいます。
数年前のインタビューでもレオ・ヌッチがスランプの時に、ライモンディに先生を紹介してもらって助かった・・・というような話をしてましたね。
by keyaki (2005-08-08 10:04) 

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