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ミラノ・スカラ座 2013/14シーズン 開幕公演「椿姫」☆ マーラ・ザンピエリがアンニーナ ☆ ベチャワのスカラ座ボイコット宣言(問題のカーテンコールの一部アップ) [オペラの話題]

 ちょいちょい取り上げている毎度お馴染みの "La Barcaccia"(Rai3)で、ジュリーニ指揮、ヴィスコンティ演出、カラス&ステファノ&バスティアニーニ以降の「椿姫」をとりあげて放送していましたので、一部アップします。ムーティ指揮のファブリッツィーニ&アラーニャ(1990年4月)、今回のガッティ指揮のダムラウとベチャワです。
iPhone/iPad用:ファブリツィーニ、ダムラウ
iPhone/iPad用:アラーニャ、ベチャワ

 この番組でも「ベチャワは、イタリアにはもう来ないんだって、バカンス以外は....」なんて言われてます。ベチャワがイタリアの劇場に出なくてがっかりするのは彼のファンだけだし、困る劇場なんてないのに.....
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BSプレミアムシアター
◇ミラノ・スカラ座 2013/14シーズン 開幕公演/歌劇『椿姫』
12月23日(月)【12月22日(日)深夜】午前0時30分~午前4時40分


 12月7日のスカラ座開幕公演、特に今シーズンは「椿姫」、何が起こってもおかしくないはずでしたが、たいした波乱も無く終わっちゃいました(公演は1月3日まであります)。
 レビューとかネットの噂では、ダムラウのヴィオレッタは、デブデブで衣装もぜんぜん似合ってないけど歌と演技は申し分無し、ベチャワのアルフレードは、料理をさせられて気の毒な面はあるとしても、ちょっと何かが足りない、チェルニャーコフの演出はもちろん一般受けするはずがないのは分かっていることで、ヴィスコンティの伝統のあるスカラ座のやることじゃないでしょ....みたいな感じですかね。観客の反応はダムラウとザンピエリとルチッチには拍手喝采、ベチャワと指揮のガッティと演出には buuuが天井桟敷から浴びせられたそうです。
 私は、アルフレードがピョートル・ベチャワということで、興味を失ったので、まったくのノーチェック、BSでも放送があるけど見ないかも.....だったんですが、マーラ・ザンピエリがアンニーナということに気付いて、俄然興味がわいて来ました。それと、ベチャワが buuuされたことに腹をたてて、facebookに大人げない発言をアップしたということですので、ベチャワの出来をBSの放送で確かめてみたくなりました。録画するのを忘れないようにしなくては。

*参考:12/7スカラ座開幕公演カーテンコールの一部の録画(ベチャワ、ダムラウ、演出家チーム)
 ベチャワは10秒で退散、ダムラウは40秒、花が投げ入れられて歓迎されてました....まあ、アホ演出の同情票もあるのかもしれません。

Zampieri_annina2.jpgZampieri_annina3.jpg

 ベチャワは、歌手の中で1人だけ(多分)ブーされたのが悔しかったんでしょう、facebookで「僕は大人だから(アラーニャのように舞台放棄はしないってことかな....)今回の椿姫は最後まで歌うけど、今後スカラ座で歌う事はない」とスカラ座ボイコット宣言をしちゃいました。「イタリア人歌手だけでやってりゃいいんだ」とか差別的発言までするという念の入れようで、なんとも子供っぽい、47歳のおっさんのすることかいな.....しかも内輪でぶーたれているならともかくネット上でやっちゃったので、この発言が世界を駆け巡ったというわけです。しかし、ベチャワは、今までブーされたことがないんだとか.....これは信じられませんけど、トップクラスの歌手になると、観客の評価も厳しくなりますから、ブーされることがあるのが当たり前だと思いますよ。それがブーされたことがないって、いつもなにも期待されてないっていうことで、ドイツの評論家が書いていた二番手のテノールってことなんでしょうね。それが、スカラ座の開幕公演に出て一番手に仲間入りしたということなんで、一部の観客のブーなんて気にすることはないと思いますけど。それに7日のできはいいとは言えないというのが大半の感想のようです。
 ベチャワは、自分がイタリア人じゃないからブーされたと思っているようですが、イタリアの劇場は多分どこも外国人歌手には寛大だと思います。端役のザンピエリが拍手喝采だったのは、彼女のキャリアに対する敬意であって、イタリア人だからではないでしょう。ヴィットリオ・グリゴーロも「スカラ座は、他の劇場とはちょっと違う....(観客の)要求が厳しくてなかなか満足してくれない」というようなことを言っていますよ。
Data dello spettacolo: 07 Dec 2013
Violetta Valery:Diana Damrau
Flora Bervoix :Giuseppina Piunti
Annina :Mara Zampieri
Alfredo Germont :Piotr Beczala
Giorgio Germont :Željko Lučić
Gastone:Antonio Corianò
Barone Douphol :Roberto Accurso
Marchese d'Obigny:Andrea Porta
Dottor Grenvil:Andrea Mastroni
Giuseppe, servo di Violetta :Nicola Pamio  
Domestico di Flora :Ernesto Petti
Commissionario:Ernesto Panariello

Direttore e concertatore:Daniele Gatti
Regia e scene:Dmitrij Černjakov
Costumi :Yelena Zaytseva
Luci:Gleb Filshtinsky
Maestro del coro:Bruno Casoni
Zampieri_annina1.jpg
  ザンピエリのアンニーナの写真を集めてみましたが、もともと普通体型だったのにこれだけ太ると全然わかりません、よく見ればギョロっとした目とツンとした鼻に面影がありますけど。
 ザンピエリは、シノーポリ指揮、ブルゾンの「マクベス」とかスカラ座の「西部の娘」の映像が印象に残っていますが、ルッジェーロ・ライモンディとは、「アッティラ」(1985年ボローニャ、1988年ウィーン、1998,2001年チューリヒ)、「シモン・ボッカネグラ」(1986年ウィーン、1987年ベルリン)で共演しています。こちらの記事 "オペラファンならニヤリ!とする映画(5)「オペラ座の怪人」ではなく「アッティラ」" で1985年ボローニャの「アッティラ」のプライベート録画をアップしていますが、ザンピエリのオダベッラがちょっと聞けます。

スカラ座の公演記録:
・Mara Zampieri(1951年パドヴァ出身):西部の娘(1990-1991)、ドン・カルロ(1978-1979)、トロヴァトーレ(1977-1978)、群盗、仮面舞踏会、ドン・カルロ(1977-1978)
・Diana Damrau(1971.5.31 ドイツ):リサイタル(2008-2009,2006-2007,2005-2006)、フィガロの結婚(2005-2006)、見出されたエウローパ(2004-2005)
・Piotr Beczala(1966.12.28 ポーランド):リゴレット(2005-2006、第一キャストはマルセロ・アルバレス)、ボエーム(2011-2012)


参考:
Milano - Teatro alla Scala: La Traviata - spettacolo inaugurale della stagione operistica 2013-2014
http://www.artsjournal.com/slippeddisc/2013/12/booed-tenor-will-not-return-to-la-scala.html
http://operachic.typepad.com/opera_chic/2013/12/corriere-della-sera-has-excellent-screenshots-here-who-diana-damrau-soprano-piotr-beczala-tenor-daniele-gatti-condu.html
Polish tenor hits back after a 'fanatical minority' boos La Scala production
http://www.theoperacritic.com/reviewsa.php?schedid=miltravia1213&offset1=0

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コメント 7

masi

昨日みてきました。
初日の中継では仰る通りかなりのブーイングがベチャワとガッティに浴びせられましたが、今回は皆盛大なブラヴォーを受けました。まあ初日には熱狂的なファンが何かにつけブーブー言うのは毎度のことですが。スカラのファンには外国人歌手をその発音が故を嫌っている人が少なからず居ます。言ってみれば外国人が歌舞伎を演じたら違和感を感じる様なものです。ですから、今回、よりによって椿姫のキャストで主役3人が外国人であることに非常に驚き、ブーイングは予想していました。それにもかかわらず初日に盛大なブラヴォーを浴びたダムラウは凄いと思って居ましたが、今回生で接してその声楽的テクニックと多様な表現力に感動しました。ベチャワは初日に比べリリックな歌い方で、良かったです。皆初日は緊張するのだな〜と思いました。今回の演出で最も大きなポイントは、第二幕の終わりで アルフレードがヴィオレッタの事を好きで無くなってしまう点です。この点につぃて友達のイタリア人は大変気に入っていました。私の読んだドイツの批評の一つでは、今回ガッティがブーイングを恐れて、暗闇の中に現れいきなり指揮し始めた、なんて書かれていましたが、それが演出家の意図である事は明らかでした。批評家がいかにいい加減かの証しです。
by masi (2013-12-23 18:36) 

助六

15日の上演を見ましたが、3回目の上演となるともちろん客は大人しく、ダムラウにはすでに1幕終わりのアリアの後や3幕の「Addio del passato」の後から喝采、カーテンコールでも1番の大喝采を受けてました。
ベチャワにもルチッチにもブラヴォーでブーはゼロ。ベチャワも満足気な表情でした。
ガッティもブラヴォーと喝采をもらってましたが、ブーらしき声を一声だけ聞いたような。

>イタリアの劇場は多分どこも外国人歌手には寛大

スカラの初日のロジョニスタはスターだけ狙って意地悪だけど、やはり外国人スターにはとりわけ意地悪だと思います、バルツァ、メリット、グレギーナ、フレミングとか皆やられてますよね。
確かにベチャワじゃなくて、ベルティやパロンビの類だったら通常の初日ならそのまま通過しちゃったでしょうが、12月7日のヴェルディとなると別かも知れません。

ザンピエーリはかつてはバカ声が出るというだけで重宝されてましたけど、今はそのバカ声がなくなれば当然何も残っておらず、脇役とてもちょっと辛い出来でした。
それでもブラーヴァもらってたから完全に名誉賞ですね。悪いことではありませんが。
でも彼女は目玉役のマクベス夫人はスカラで歌ったことはなかったんですね。

私は変わった演出大好きな方なんですが、チェルニャーコフにはモルチエ時代のパリで見たオネーギン(国際的にも一致して高く評価されましたが)にもマクベスにも感心しませんでした。
今回のトラヴィアータは彼としては大人しいし、現代の醒めたカップルのすれ違い劇という設定は非難さるべきものでも素晴らしくオリジナルなアイデアでもないけれど、料理とか薬はじめ小ネタの集積に終わってて、全体的劇解釈としては限りなく薄っぺらなのが「読み替え」系としても私は不満でした。

ダムラウは出だしのプロジェクションがまるで薄い発声に当惑、「やはり独系コロラトゥーラ・レジェロの類型的ヴィオレッタということかいな」とか思いましたが、2幕終わり「Alfredo, Alfredo」は大きく弧を描くような堅固な旋律造形でコンチェルタートをしっかり支え、3幕幕切れの「Prendi, quest'è l'immagine」は声もしっかり出て、内的緊張感のある表現は大変説得的、最終的には決して悪くないヴィオレッタだと思いました。
アップして下さってる録音だと細部の強調と緊張が目立ちますが、私が聞いたガレリアからだと倍音が掛かってはるかになだらかで余裕がある歌唱に聞こえました。

ベチャワはまあ合格点と言っていいんでしょうが、音色が単調でフレージングもちょっと異質なのが僕は引っ掛かりました。録音は実演の印象に近いです。
アラーニャは若いときからやはり格調が一段高いですね。

ルチッチは表現も単調で旋律線の張りがまるでなくて、ヴェルディ・バリトンとしてはちょっと問題外の感。

ガッティは色々聞いたけど本当に感心したことはなかったんですが、今回は僕は好意的。
テンポが遅いのがしばしば非難されてますが、旋律的・リズム的形式感は正確で重く引きずることはないし、悠揚とした暗い悲劇性のある演奏として評価したいと思いました。

リコルディのデッラ・セータ新校訂版使用とかで、細部に少し違いがあり繰り返しも多分全部実行してたような。

新聞評も割れてて、コリエーレ・デッラ・セーラは全員クソミソですが、レプッブリカは逆に全員絶賛。
独紙もダムラウはSZもFAZも絶賛してますが、演出はSZが絶賛でFAZは否定的。ガッティには独両紙とも不満。

by 助六 (2013-12-24 08:38) 

助六

書こうと思ってて書き忘れました。

よいクリスマスを。
昔、「アッシジのクリスマス」を楽しませて頂いたのを思い出します。
by 助六 (2013-12-24 08:45) 

keyaki

masiさん
22日の公演をご覧になったんですね。
イタリアでクリスマスですか。いいですね。

私も23日がお休みでしたから、なんか面白そうだし、録画を見ました。
まあ、全体的に、私にはなにも心に残るもののない、「椿姫」でした。
どんな演出でもエログロでなければ、受け入れられますが、なんかオペラの基本的要素をぶちこわしている点、つまりアリアは演劇でいえば独白にあたるものだと思いますが、これをすべて、誰かを相手に、ヴィオレッタの"Che strano..."はアンニーナに、アルフレードは、“De' miei bollenti spiriti”を召使いたちに話して聞かせているし、2幕の終りのヴィオレッタの歌だって、アルフレードの面と向って歌うものではないでしょう。舞台とか衣裳も感心しませんでした。パリ郊外のヴィオレッタの屋敷の場面なんて、ヴィオレッタがシンデレラか、グレーテルかと思いました。
スカラ座の今までの、ヴィスコンティ、ゼッフィレッリ、カヴァーニという伝統に添った演出を捨ててまでやるようなものなのか、こんな演出にお金を払うのはもったいない....と思いました。
ガッティもずいぶん老けましたね。

by keyaki (2013-12-24 14:28) 

keyaki

助六さん
>よいクリスマスを。
ありがとうございます。

録画を見ましたが、ベチャワが天狗だってことと、チェルニャーコフってなんで評価されているのか分らないことが分ったという程度で、ぜんぜんよくなかったです。だいたい初演の失敗はヴィオレッタが太り過ぎだったからって言われてますよね。
ダムラウは、この先グリゴーロとの共演も予定されているのに、なんだかな.....です。

NHKの放送では、ベチャワへの天井桟敷からの盛大なブーもカットされていませんでした。その時は、顔色一つ変えず平気な顔で、フレーニのように抗議の態度も示さずに、facebookですねるとは.....
演出家チームも出て来ましたが、チェルニャーコフって、さえない男....演出も同様、チンケなホームドラマ(コメディー)にしちゃいましたね。つまんないデイテールで笑いをとろうという魂胆か....メトだと笑いがとれそう。
札束を投げる場面でも、ここにもあそこにも、まだあるよ..といろんなところからお札を出したり、落ちぶれて死にそうな、ヴィオレッタのところに花束とリボンをかけた大きな箱、何が入っているのかと思えば、たくさんのケーキ(モンブランかな?)....アルフレードのアホさを表現してるわけなの? テレビを見ていない知人には、いくらでも面白可笑しく喋るネタにはことかきません。
ザンピエリもどういう理由で出てもらったのか、(もしかしたらブー対策の一環かも?)召使いというよりは、親代わりの付き人で、ヴィオレッタは高級娼婦ではなく元女優なのか....もうこういう演出って、ほんとめんどくさくて嫌です。

パリもメトもスカラも伝統的演出からおさらばしちゃいましたから、あとは、ロンドンだけですね。
by keyaki (2013-12-24 15:06) 

タツ

3泊5日オペラ弾丸ツアーを決行して、12日の舞台を観てきました
。設定・衣装・演出はちょっと?でしたが、ダムラウの透明感のある力強いソプラノ、ルチッチのやわらかい歌声は本当に素晴らしくて、2幕で早くも涙が出てきてしまいました。ベチャワは力が入りすぎてなんかテンポがずれている感じで二人には負けてしまっていたかな?幕が終わらぬうちに桟敷から拍手と声が飛んだのにはびっくり、同じバルコニー席の方も「シッ!」と怒っていました。ガッティの唸り声もすごい!オペラファンになって日も浅いのですが、毎日繰り返し仕事場で流しているトラヴィアータをスカラで観られて、幸せでした。
by タツ (2013-12-26 16:13) 

keyaki

タツさん
>3泊5日オペラ弾丸ツアー
他のオペラもご覧になられましたか?
あの演出は、なんか意味ありげな小道具がいっぱいで大きな舞台では分かりにくい、アングラの小さな劇場か、テレビ向みたいですね。
ダムラウは、変な演出も平気なタイプなので、けっこうはりきってましたが、ベチャワとかルチッチは、納得しないでやっていたのかもしれませんね。
でも、とても楽しまれたようでなによりでした。


by keyaki (2013-12-27 01:13) 

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