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復活祭企画! テノールの高音:ロッシーニ:《スタバト・マーテル》 のハイD♭(Re♭) [テノールの高音]

 第二ブログに書きましたが、BBC Radio3から復活祭の嬉しいプレゼントがありました。ヴィットリオ・グリゴーロが歌っているロッシーニのStabat Materが放送されました。ローマのバジリカで2004年4月7日にジェルメッティの指揮で演奏されたライブです。
 ロッシーニの《スタバト・マーテル》のテノールのソロの部分"Cujus Animam"にはハイD(Re)♭がありますが、グリゴーロはファルセット(でしょうね?)で、非常に静かに弱音で歌っていました。これはかなりめずらしいのではないかと思います。ほとんどのテノールが(必死で)D♭を普通の声で歌っています。
 ファルセットで歌うと、だいたいが「避けた」とか「逃げた」とか非難されるのがおちなんですね。いいとか悪いとか、正しいとか正しくない...とかは抜きにしても、これは、なかなか聞けない歌い方だと思います。グリゴーロ自身がバチカンでソリストをしていた...という経歴もあるし、私の贔屓のテノールだし、こういう歌い方の方が、次の"inclyti"のフォルテも生きてくるし...聖母の悲しみ、苦しみを表現できるかな......でも、これを他のテノールがやっていたら、「避けた」とか「逃げた」とか言ってしまうのか.....グリゴーロ自身も毎回ファルセットで歌っているかどうかもわからないし......なんて、いろいろ思いますが.....興味のある方は、どうぞ....
☆ジュリーニ指揮:1967年ローマ ☆ジェルメッティ指揮:2004年ローマ
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これは、ファルセットではなく頭声ではないかとのご指摘をいただきました。ずいぶんと細い声なので、ファルセットかな...と思ったのですが......そうなると、胸声とか頭声とかファルセットというよりは、弱音で歌っているかどうかの違いなんですが、グリゴーロ以外は、どのテノールも思いっきりフォルテで歌っているということです.......つまり、フォルテでしか高音を出せないということかな.....ここは弱音で歌うことが可能であれば、その方がいいと思いますけど.....

 普通に歌っている音源はフローレスのがゴロゴロありますが、グリゴーロがまだボーイソプラノだった頃、パヴァッロティと共演してオペラ歌手に憧れたということなので、パヴァロッティのを選んでみました。グリゴーロ以外にファルセットのような静かな歌唱はないかといろいろ聞きましたが、ありませんでした。この部分だけをたくさん聞いていると、この高音を歌うためにけっこう構えているのがわかります。やっぱり、ハイD♭(Re♭)を出すためにかなり緊張するんですね。

◎グリゴーロの"Cujus Animam"、YouTubeで13分くらいから....



 別にもう一つハイD♭(Re♭)を端折って、H♭(Si♭)から歌っているのもあります。
☆プレヴィターリ指揮:1974年ローマ
私がチェックした演奏で2件ありましたから、これは、けっこう一般的なのかもしれません。これが、《スタバト・マーテル》初体験の人は、ロッシーニの楽譜では、D♭(Re♭)があるというのを知らない可能性もあると思います。

 いずれにしてもテノールの高音は、いろいろなにかと話題になります。今まで、keyakiのブログでも《ボエーム》《清教徒》《シチリアの晩鐘》《セビリアの理髪師》を取り上げています。

『テノールの高音』関連記事:
"冷たい手 Che gelida manina"の半音下げの移調は誤摩化し、賞味期限のつけかえみたいなもの...
《清教徒》の3点Re(D):二重唱"vieni fra le mie braccia"☆★MP3
パヴァロッティを偲んで:《清教徒》パヴァロッティ、RR共に初役☆MP3 おまけ3点F
は〜い、ハイDですヨ:ベッリーニ《Il pirata 海賊》
《シチリアの夕べの祈り》テノールの歌のカット ハイDの処理
《セビリアの理髪師》Cessa di più resistere ハイFあり

関連記事:
ロッシーニ の"Stabat Mater"(2004.4.7ローマ) BBC-Radio3で7日間オンデマンド放送
BBC-Radio3でロッシーニ の"Stabat Mater"放送:2004年4月7日ローマで収録
《スタバト・マーテル》放送 MP3
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コメント 4

みど

すごーい!!
テクニックと知性を感じる歌い方ですね!!!

AUGURI di buona pasqua!!!!!
by みど (2010-04-05 07:50) 

keyaki

みどさん
いいですよね、こういう歌い方....
特にみどさんが賛成してくれると嬉しいです。
同じ楽譜を見て歌っていても、こんなに違うんですね。
声楽は奥が深い!!

by keyaki (2010-04-05 19:36) 

助六

このナンバーの公開初演を創唱したのはジョヴァンニ・マリオで1810年生まれ、胸声のハイCを定着させたと言われるデュプレより4歳年下。
超高音のある「清教徒」のアルトゥーロを創唱したルビーニのレパートリーを追いかけることから始め、明るくしなやかで、リリックな声の持ち主だったと言われます。Cは胸声で出し、その上Fまでファルセットで出したと言いますから、彼はこのDフラットもファルセットーネで歌った可能性が高いのではないでしょうか。

歴史的には、この高音をファルセットで出しても様式的根拠があることになります。

胸声・頭声・ファルセットーネ(混声)・ファルセットの区別はこだわると泥沼なので立ち入りませんが、グリゴーロのは「いわゆる」ファルセットではなく、頭声に近いと思います。

発声法が何であれ、重要なのは発声法の転換を感じさせないなだらかな旋律運びを堅持し、美しくニュアンス豊かに音楽性をもって歌ってくれることでしょうから、その意味でこの歌唱は私には大変説得的に聞こえます。

この曲の全曲公開初演は教会ではなく,名オペラ歌手を起用して劇場で行われたし、このナンバーは「剣で貫く」力強いイメージを受けて基本的に行進曲調だから、最後の高音をオペラっぽく勇ましく張り上げるのも理由がある一解釈とは思います。
でもこのナンバーは軍楽調の合間に悲しみも過ぎるヘンな曲でもありますから、当該歌詞を考えれば、高音を密やかに歌う方がより本来的とも言えると思います。

グリゴーロの発声は「いわゆる」ファルセットではないですし、若いしなやかな声だからこそ、ここを頭声のピアノで歌えたとも言えるわけで、他のテノールはピアノを出せないからフォルティッシモの胸声に「逃げた」と言うことさえ可能かも知れません。彼だっていつまでもはできない可能性が高いと思います。

by 助六 (2010-04-10 10:54) 

keyaki

助六さん
おっしゃる通り、発声法がどうのこうのは鑑賞する側にはどうでもいいことなんですが、とかくテノールの高音に関しては、ニュアンスなんて二の次で大声大会がいいような風潮がありますよね.....
なので、これは、復活祭の時期の教会で歌っているわけですから、教会で歌うのにふさわしい歌い方であって、高音を張るような歌い方をしていないということに、グリゴーロの豊かな音楽性を感じました。

この録音は、2004年 4月ですから、27才になったばかり、3年後の 2007年5月にシドニーで歌ったStabat Materも放送されているのですが、残念ながら、まだ録音を手に入れることができません。このときは、コンサートホールでの演奏ですが、どのように歌っているか知りたいものです。

チューリヒの《ホフマン物語》は、ずいぶんとフォルテの次はすぐにピアニッシモ....という歌い方が頻繁で耳障りというように、批判しているレビューがありましたが、ふと、これって、グレゴリオ聖歌のアルシスとテーシスで、三つ子の魂....かななんて思いました。
なにかのレビューでも、「高音では勢いがよくて、低音ではおとなしくなった....」とか書かれていましたが、これは当たり前のことで、音楽的にも一番自然なことだと思いますので、私には批判する理由が分かりません。
by keyaki (2010-04-10 14:15) 

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