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新国《チェネレントラ》2009.6.16 [オペラ生舞台鑑賞記録]

 このところ夜の公演が続いていましたが、久々の『昼下がりのオペラ』。《チェネレントラ》の生舞台は初めてですし、原ポネル演出の舞台でしかも著名な歌手を集めた公演ということで、楽しみにしていた公演です。

 期待通り楽しかった....ソリストそれぞれとても個性的で表現力豊かで、心に響くものがありました。けっこう長いオペラですが、全くたいくつしませんでした....と言っても、開演前のワインが聞いたのか、一度だけ一瞬意識が遠のいたのですが、運良く「誰だ!(日本語で)」という叫び声に吃驚して、そこからは完璧に目が覚めました。

 カサロヴァ(1965-)は、もう40過ぎなんですね。サザランドかアンダーソンかというようなちょっといかつい顔立ちで、その上、背が高いので、若い時のような可愛らしいシンデレラというわけにはいきませんが、逆境にもめげず、卑屈にもならず...という強い肝っ玉チェネレントラで、これがロッシーニのチェネレントラの本来の姿なのではないかと思わせてくれました。後ろの席の男性が連れに、カサロヴァはロッシーニじゃない、カルメンだ...なんてうんちくたれてましたが、まあ、そんなかんじがしなくもなかったですけど....そういえば彼女の《カルメン》録画はしましたけどまだ見てないわ......

 王子様のシラグーザ(1964-)は、本当に安定していて気持ちいい歌唱でした。この日も客席からの"bis!"の掛け声に答えてくれました。どうやら10月にはトリノで《椿姫》のアルフレードを歌うようですが、これならいけるかな...と思いました。

 継父役のデ・シモーネは、意地悪父さんというよりは、頑固で融通のきかない真面目なかんじが、かえって笑いを誘うタイプで、ダンディーニのデ・カンディアは、体型も顔も動きも愛嬌があって、二人ともブッフォにピッタリの芸達者、こういうのはイタリア人歌手ならではだと思いました。

 王子の先生役のアリドーロ、ギュンター・グロイスペック Günther Groissböck は、新国のプロフィール紹介には載っていませんでしたが、けっこう目立ってました。1976年、オーストリア生まれの若手バス歌手です。素顔はなかなかの好青年(右写真)です。その上、ルッジェーロ・ライモンディ並に背が高くて(カサロヴァより10センチ以上は背が高い)、押し出しも良いとくれば、これは見た目も含めてバス歌手としての王道を行ける素質充分だと思います。今回の老哲学者の先生にもピッタリで、若いのに違和感無しでした。ネット検索で、なぜか私の第二ブログがヒット.....おや、ヴィットリオ・グリゴーロのロドルフォが評判だった2007年WNOの《ボエーム》で、コリーネを歌ってました。B組なので、グリゴーロとは共演していませんが、オペラの世界は狭いですね。
 男声合唱の素晴らしさは、もういつものことですが、演技的にもなかなかのものでした。意地悪お姉さんたちも◎でした。(1階6列で鑑賞)

 余談ですが、ルッジェーロ・ライモンディが、録音だけで舞台ではやってない役がドン・マニーフィコなんです。過去記事フランスラジオ放送出演1時間の独占特番!でドン・マニーフィコのカヴァティーナ"Miei rampolli femminini"が聞けます。ロッシーニのブッフォについても喋ってますので、興味のある方はどうぞ。

[New Production] G.Rossini:LA CENERENTOLA
【指 揮】デイヴィッド・サイラス
【演出・美術・衣裳】ジャン=ピエール・ポネル
【再演演出】グリシャ・アサガロフ
【演技指導】グリシャ・アサガロフ
      グレゴリー・A.フォートナー
【芸術監督】若杉 弘
キャスト
【ドン・ラミーロ】アントニーノ・シラグーザ
【ダンディーニ】ロベルト・デ・カンディア
【ドン・マニフィコ】ブルーノ・デ・シモーネ
【アンジェリーナ】ヴェッセリーナ・カサロヴァ   
【アリドーロ】ギュンター・グロイスベック
【クロリンダ】幸田 浩子
【ティーズベ】清水 華澄

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

3.jpg
グロイスベックとカサロヴァ

新国HP掲載の主要キャストのプロフィールを転載
【指揮】デイヴィッド・サイラス  Conductor : David  Syrus
1971年より英国ロイヤルオペラでヘッド・オブ・ミュージックとして『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』『皇帝ティトゥスの慈悲』『魔笛』『さまよえるオランダ人『椿姫』『ファルスタッフ』『イエヌーファ』『カーチャ・カバノヴァー』『サロメ』『エレクトラ』『ナクソス島のアリアドネ』『カルメン』『売られた花嫁』『ねじの回転』など数多くの作品を指揮しているほか、コンサート指揮者としてもBBC交響楽団、バンベルク交響楽団、ロンドン・シンフォニエッタなどを指揮している。リサイタルの伴奏ピアニストとしても定評がある。新国立劇場初登場。

【演出】ジャン=ピエール・ポネル  Production : Jean-Pierre Ponnelle
1932年パリ生まれ。ストラスブールとソルボンヌ大学で哲学、文学、美術史を、後にベルリン自由大学で演劇学を学ぶ。50年よりオペラとバレエの舞台装置と衣裳デザインを手がけるようになる。62年に、ライン・ドイツ・オペラで、初めてのオペラ・プロダクションとして『トリスタンとイゾルデ』を演出。 1968/1969シーズンにザルツブルク音楽祭で演出した『セビリアの理髪師』により、オペラ演出家として国際的な名声を得る。81年にバイロイト音楽祭で演出した『トリスタンとイゾルデ』は、バイロイト史上、もっとも美しい作品の一つとして知られている。ヘルベルト・フォン・カラヤン、クラウディオ・アバド、ダニエル・バレンボイムといった著名な指揮者と、メトロポリタン歌劇場、バイエルン州立歌劇場、パリのシャンゼリゼ劇場など各地で仕事をともにした。また、カール・ベーム指揮の『フィガロの結婚』など、数多くのオペラ映画も残してる。88年にミュンヘンで没。

ドン・ラミーロ:アントニーノ・シラグーザ  Don Ramiro : Antonino Siragusa
2002年『セビリアの理髪師』アルマヴィーヴァ伯爵に続いて2回目の新国立劇場登場となる。1964年、イタリアのメッシーナ生まれ。同市のコレッリ音楽アカデミーで学ぶ。96年に『愛の妙薬』のネモリーノでオペラデビュー。その後イタリア各地の歌劇場に出演し、ミラノ・スカラ座には『ドン・ジョヴァンニ』ドン・オッターヴィオでデビュー。これまでにウィーン国立歌劇場、ベルリン州立歌劇場、ローマ歌劇場、バイエルン州立歌劇場、メトロポリタン歌劇場などで歌っている。『セビリアの理髪師』『ドン・パスクワーレ』エルネスト、『ジャンニ・スキッキ』リヌッチオ、『セミラーミデ』イドレーノ、『アルジェのイタリア女』リンドーロ、『チェネレントラ』ドン・ラミーロ、『夢遊病の女』エルヴィーノなど幅広いレパートリーを誇る。

ダンディーニ:ロベルト・デ・カンディア  Dandini:Roberto de Candia
1999年『マノン・レスコー』レスコー、2002年『セビリアの理髪師』フィガロに続いて3回目の新国立劇場登場となる。イタリア生まれ。当初はチェロを学んでいたが、声楽に転向。96年にリッカルド・ムーティ指揮の『アルミーデ』でミラノ・スカラ座にデビュー。グラインドボーン音楽祭、ベルリン・ドイツ・オペラ、英国ロイヤルオペラ、メトロポリタン歌劇場、ザルツブルク音楽祭、ザクセン州立歌劇場(ドレスデン・ゼンパー・オペラ)など世界各地で活躍。レパートリーは『マノン・レスコー』レスコー、『ラ・ボエーム』マルチェッロ、『運命の力』メリトーネ、『チェネレントラ』ダンディーニ、『セビリアの理髪師』フィガロ、『愛の妙薬』ベルコーレなどが挙げられる。

ドン・マニフィコ:ブルーノ・デ・シモーネ  Don Magnifico :Bruno de Simone
ブルガリアのスタラ・ザゴラ生まれ。4歳よりピアノを始め、当初はピアニストを目指していたが、声楽に転向し、ソフィア音楽アカデミーで学ぶ。1989年にドイツのコンクールに優勝したのをきっかけにチューリヒ歌劇場と契約。91年にザルツブルク音楽祭に初出演。続けてウィーン国立歌劇場に『セビリアの理髪師』ロジーナでデビュー。瞬く間に人気を博し、ミラノ・スカラ座、英国ロイヤルオペラ、バルセロナのリセウ劇場、バイエルン州立歌劇場、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座など世界各地の著名歌劇場に招かれる。モーツァルト作品、ベルカント・パート、フランスオペラには特に定評があり、ニコラウス・アーノンクール、小澤征爾、リッカルド・ムーティといった著名な指揮者と共演している。新国立劇場初登場。
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コメント 7

euridice

楽しくてわくわくしました。成り行きで2度行きました。はじめはもったいない・・とか思ってましたけど、得した気分です。

>カサロヴァはロッシーニじゃない、カルメンだ..
こういう類型化もあるんでしょうけど、
私はあざといカルメンは嫌い。ロージーの映画のようなせいぜい小悪魔的な
可愛いカルメンが好きですから、カサロヴァはカルメンじゃない・・
と言っちゃいます^^+
ロッシーニの「シンデレラ」はシンデレラじゃなくてチェネレントラ!
どこかから幸せが降ってくるのを待っている受け身娘ではないんですよね〜〜〜

先生役は概して影が薄いと思うのですが、
今回は存在感大でしたね。ユーモラスなところもあって
喜劇の中にしっかりはまってたし・・

お父さんの「ぼくと結婚したい?!」のところはほんとケッサクでした。
こんなこと言ってましたっけ? 

by euridice (2009-06-21 07:35) 

keyaki

euridiceさん
ドン・マニーフィコとダンディーニのあのやりとりは、アドリブかと思えるくらい現代にピッタリはまってましたが、どっちなんだろう....

カサロヴァがカルメンをレパートリーにしたのは最近ですが、年齢的にもチェネレントラは、ぎりぎりの線で、新国が最後かもしれませんね。歌唱も若い時のようにはいかなくなってきているでしょうし....テクニックより、表現力で聞かせる年齢になったということかな....フィナーレの歌は感動的でしたもの。
by keyaki (2009-06-21 10:07) 

tsukune☆彡

お久しぶりです(^^)/
私は初日と14日に2回観ました。
主役の2人はもちろん、その他のキャストも合唱もとても素晴らしくて、ポネルの美しい舞台にピッタリ。
映画版のシュターデは、シンデレラそのもののような美しさと柔らかな美声がステキでしたよね。
カサロヴァがあの映画と同じ衣裳で歌い演ずるというのはどうかしら...なんて思ったりもしたけど、全く違和感がないどころか、心暖かで人間的な優しさが感じられる役作りがとてもハマっていて、難しいパッセージを歌うときの百面相 ^^; もご愛嬌でした。最後のロンドの音楽が始まると、本当に良かった! 幸せになってね!っていう気持ちが自然とこみあげてきて、すっかり幸せな気分に。(^^)
名舞台と言われるだけ合って、シンプルながらとても効果的にできていて、舞踏会に黒のシックなドレスで現れる場面など、劇場の全ての目が自然とチェネレントラに吸い寄せられていくのが感じられて思わずドキドキしちゃいました。
by tsukune☆彡 (2009-06-22 14:12) 

keyaki

tsukune☆彡さん、お久しぶり〜
なかなかお会いできませんね。
>映画版のシュターデ
これは美しすぎ....お人形さんみたいですもの。
カサロヴァくらい個性的な方が、このお話には合っていますね。
スタイルがいいからああいう衣装もとてもお似合いです。
ああいう衣装だったら、ヒールのパンプスが普通ですけど、ペッタンコの靴をはいていたので、裾さばきが難しくて、苦労してましたね。
ポネルの簡素な舞台は、人物をひき立たせてとても効果的なのには感心しました。
オペラにはめずらしく素直に心温まるお話で、私もフィナーレでは感動してほろりときました。
by keyaki (2009-06-23 00:44) 

サンフランシスコ人

サンフランシス歌劇場の《チェネレントラ》に一度行きました。

CAST
Conductor
Carlo Rizzi
Production
Jean-Pierre Ponnelle
Stage Director
Christopher Alden
Designer
Jean-Pierre Ponnelle

Olga Borodina
Cenerentola
Nicolle Foland
Clorinda
Elizabeth Bishop
Tisbe
Dale Travis
Alidoro
Simone Alaimo
Don Magnifico
Kurt Streit
Don Ramiro
Lucio Gallo
Dandini


by サンフランシスコ人 (2009-06-23 05:03) 

チャッピー

こんばんわ。ここでは「初めまして」です。

>アリドーロ、ギュンター・グロイスペック Günther Groissböck は、新国のプロフィール紹介には載っていませんでしたが
1000円のパンフには載ってました。オーストリア人で、今後メトにも出るらしいです。
サインもしてもらいましたが、ラリエー王子ほどではないけど、長身のイケメンさんでした。
この役はイケメンがやる役なのでしょうか?

それにしても、王子とアンジェリーナって遭った瞬間、恋に落ちる設定だったのですね。全然、そんな風に見えなかった@メト
だから、ブラウンリーがハイCアリアを歌ってるのを聴いて、「えー、こいつ主役なの~!」と思ってしまったのです。
シラグーザ、決してイケメンでも長身でもないけど、王子に見えた(パタリロ王子に似てるw)し、恋に落ちた瞬間も上手く演じてました。

NYでワーグナーの「指環」の合間に見た時は、滅茶苦茶軽く、短く感じたのですが、今回は丁度良い長さに思えました。ワーグナー、重すぎ・・・
by チャッピー (2009-07-06 22:12) 

keyaki

チャッピーさん
ようこそ、いらっしゃいませ。
アリドーロは、重要な役ではありますが、専属がいれば専属歌手でもいいような役ですよね。イケメンがやっても、ヒゲなんかつけたりして分からなくなりますし。
今回のキャストは新国としては大盤振る舞いでしたね。

バス歌手は背が高くないと役柄的におかしなことになりますよね。主役級はりっぱに見えることが必要ですし、小さい役の場合は、テノールとの凸凹コンビ、ファルスタッフのピストーラとバルドルフォ、ボリス・ゴドノフのワルラームとミサイルとかありますし。

ブラウンリーと比べたらシラグーザがお気の毒。彼はけっこう舞台映えのする顔、まあ歌舞伎役者みたいなもんですか。カツラが似合うし。
ブラウンリーって、背が低くて、とてもハンサムとはいえない容姿で得をしているかんじがしますけど...なんちゃって(笑

>ラリエー王子
John Relyea? この方かしら?
ヴィットリオ・グリゴーロが表紙の雑誌に載ってました。抜粋記事ですけど↓
https://www.opernglas.de/aktheft/interview/intw_05_frame.html
今後、グノーのファウストとか、アッティラとかホフマン物語とかロールデビューするみたいですよ。バス歌手の王道を行ってるようですね。王子というよりは、王様かな....
by keyaki (2009-07-07 03:21) 

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