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《ドン・カルロ》5幕版の1幕について:ジョルジュ・プレートル指揮 [ドン・カルロ]

 アバド指揮のスカラ座創立200年記念《ドン・カルロ》イタリア語5幕特別版の1幕について、前の記事で紹介しましたが、これと同様の形態、つまりヴェルディが初演前に削除した冒頭部分を復活させた演奏が、すでに1975年ミュンヘンで上演されていました。プレートル指揮、シェンク演出の《ドン・カルロ》です。
 イタリア語5幕版といっても、1886年版またはモデナ版を基にしてはいますが、いろいろあるようですし、ミラノ版または4幕版といわれるものもロマンツァの二節目がカットされたり、ロドリーゴが死んだ後、カルロとフィリッポの二重唱が復活されたり......とにかく見てみなきゃ、聞いてみなきゃわからん....ということのようです。

 たとえば、ウィーンでは、今も1989年プレミエのピッツィ演出の《ドン・カルロ》が上演されていますが、プレミエの時はアバド指揮でイタリア語5幕版でしたが、一昨年の公演は、4幕版だったそうです。同時期にフランス語版が上演されていたので、あえて4幕版にしたのかもしれません。
 また、NYメトにしてもDVDで発売されている1983年レヴァイン指揮、デクスター演出の《ドン・カルロ》は、一般的なイタリア語5幕版ですが、その後、同じレヴァイン、デクスター演出で4幕版だったり、2006年の公演は、イタリア語5幕版にヴェルディが初演前に削除した冒頭部分を復活させた演奏でした(ネット放送で確認)。

 1975年ジョルジュ・プレートル指揮、オットー・シェンク演出《ドン・カルロ》イタリア語5幕版の1幕冒頭の音声ファイルをアップします。
★Pretre指揮 :Ricciarelli,Cossuta,Wächter,Fassbänder,R.Raimondi,Roni
♪音声ファイル:5幕版1幕冒頭部分:きこりたちの重苦しい嘆きの合唱で始まり、エリザベッタが登場して貧しい人たちに実際に語りかける
 カーティア・リッチャレッリ
上の写真は適当に頂いてきたので、エリザベッタかどうかは不明です。

ついでに♪音声ファイル:フィリッポのアリア:"Ella giammai m'amò!"
 ルッジェーロ・ライモンディ
R.ライモンディは1968年、27歳から、フィリッポをレパートリーにしています。ミュンヘンでは、開幕前には、若すぎるという向きもあったようですが、はじまってみれば、ライモンディは、まさにフィリッポその人だったということでしょう。アリアの後の拍手、すごいです...延々3分以上も続き観客の熱狂ぶりが伝わってきます。
『1975年、ミュンヘンで、シェンクは彼の俳優としての当時の可能性を最大限引き出した。そして、なによりも年齢的な障害を見事に克服することで、劇的な信頼性を大幅に高めた。声、外見、演技の間に、何ら断絶感がなかった。』 Ankenbrand著-Ruggero Raimondi Mensch und Maskeより
★参考Don Carlo 楽譜


参考:
フィリッポII(ドン・カルロ)主な公演 1968ー2003
ヴェルディ:ドン・カルロ録音

関連記事:

フィリップ二世《ドン・カルロ》-Ruggero Raimondi Mensch und Maske-
RRと指揮者(10)ジョルジュ・プレートル コメントに面白い話しがあります
スカラ座創立200年記念《ドン・カルロ》イタリア語5幕特別版1幕VideoClip
スカラ座創立200年記念公演《ドン・カルロ》TV中継にカラヤンがNo!
1977〜79年スカラ座《ドン・カルロ》死神の山車! VideoClip5幕フィナーレ



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コメント 4

たか

前にもコメントしたと思いますがプレートルが1973年にフェニーチェ座で演奏したときも前奏付き5幕版です。4幕のフィリッポのシーンも5幕フィナーレも通常の5幕版とは違います。この版がアバドが1977年に演奏したものと同じかどうか一度聞き比べなければと思っているのですが長い曲なのでなかなかしんどくって....
このフェニーチェ座の演奏はリッチャレルリ、コソット、カプッチルリ、ギャウロフというすごい顔ぶれです。最近店頭では見ませんがHMVのネットでは一応まだ取り寄せ可能ということになっているようです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/922789
by たか (2008-01-16 00:06) 

keyaki

たかさん、フェニーチェのMondoMusicaレーベルは、手に入りにくくなってますね。音質は良くないですけど、魅力的なキャストが多いですね。
ライモンディは、デビュー当初フェニーチェで大切に育てられた歌手なんで、そのときのライブがけっこう発売されたんです。火事で貴重なものもたくさん失われたんでしょうけど、こういうものは別に保管してあったんですね。

この1975年ミュンヘンのものは、あとは、通常のイタリア語5幕版です。
iTunesに取り込んで聞けば、その部分だけの聞き比べとかとても便利です。ウィンドウズ版も無償配布してます.....
by keyaki (2008-01-16 10:38) 

助六

ああプレートルはアバドに先駆け、オリジナルへの復帰を試行した人だったんですね。

1986年のガルニエのシーズン・オープニングに彼が指揮した仏語5幕版「ドン・カルロ」は、バレエをカットした以外は1867年版オリジナルのほぼ全曲だったと思います。もちろんきこりの合唱もあり。要所をチェックして行っただけだったんで、録音残っててちゃんと聴けば細部は色々あるかもしれませんけどね。

1シーズン中に仏語5幕オリジナル版と伊語4幕版を同じ演出で両方やるというボジャンキーノ監督らしい企画でした。もっともボジャンキーノ自身は企画しただけで、フィレンツェ市長に転出してパリ・オペラ座監督は任期終了以前にサッサと放っぽり出し、上演自体は後任監督下で行われたんですが。
そのせいか否か、エリザベートを歌うはずだったコトルバス初め歌手のキャンセルがずらりと相次ぎ、マレッリの演出が不評でフィアスコに終わってしまった公演でした。

プレートルって言う人、早くからカラスやシュヴァルツコプフの信頼を得、ヴィーン、スカラ、ザルツに招かれと、目に見えるキャリアは仏人指揮者としては例外的にスゴイけど、出てくる音楽はと言うと、オケをでかい音でカチッと鳴らす力は確かなものの、何だか何やっても同じ枠に荒っぽくはめ込んで大事なものはザルを通すみたいに抜け落ちちゃうみたいな音楽を長く聴かされた気がします。
国際キャリアの華々しさがちょっと不思議にも思え、仏での評価が長く安定しなかったのも道理に思えてたものでした。

およそ知的とは言い難い音楽と言う気がしてた一方、プーランクでエライ名演を聞かせたり、ヴェルディのオリジナル帰りを先導したりと何とも一筋縄ではいかない音楽家ですね。
最近は年のせいかエラいノスタルジックな演奏聞かせたりとか、あの年で予断許さぬ音楽をやり続けてるのは、やっぱりユニークですね。
by 助六 (2008-01-16 11:45) 

keyaki

助六さん、その1986年の「ドン・カルロ」騒動は、
「演出は当初、映画界の巨匠ルイジ・コメンチーニに予定されていたが、意見が合わずに降りたため、歌手陣もライモンディ、コトルバシュ、ブレンデル、スチルウェルという著名歌手が次々キャンセルした。」

ということで、演出は、猿之助演出の「金鶏」の模倣まであって、ご都合主義で、歌手陣もまったくさえなかったそうですが、プレートルは傑出していた....と「パリ・オペラ座」に書かれています。
トーマス・アレンがロドリーゴだったんですね。ブレンデルの代役ってことですか。アレンのヴェルディはめずらしいですね。「トーマス・アレンは、全13回の公演を交代なしで務めるため声をセーヴしてまるではえない、ドン・カルロのジャン・デュプイは、歌はましだが、見た目が幻滅。フィリッポのアルフレッド・ムッフは今ひとつ足りない、宗教裁判長は、なんとも不愉快だった....なんて書かれてます。(笑

これって、今思い出しましたが、きのけんさんだったかの話しでは、ルイジ・コメンチーニの娘フランチェスカ・コメンチーニがその当時トスカンさんの奥さんだったんで、ライモンディが降りちゃったようなことだったような......特にオペラってこういう人間関係で動いてるんですよね。

ウィーンのニューイヤー・コンサートは、プレートルでしたが、クラシック関連のブログをちょっと覗くと、最近はニューイヤー・コンサートは、パスしていたが、プレートルだから見た!という人が多いようです。
by keyaki (2008-01-17 01:07) 

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