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パヴァロッティを偲んで:ヴェルディ《エルナーニ》3幕☆★VideoClip&MP3 [エルナーニ]

♪MP3:グロッソップ、カプッチッリ,ブルゾン、ヌッチ、C.アルバレス、ホロストフスキー、バリトン好きの方,お楽しみ下さい、ちょっと増えています(2007.10.13)
 さて、国王カルロ憎しで同盟を結んだエルナーニとシルヴァ。国王暗殺計画を企てますが、あっというまに発覚、捕らえられ、即刻打ち首じゃ! しかし、ここに、またまたエルヴィーラ、「どうか、お許しを....」。新皇帝に選ばれた嬉しさもあって、急に慈悲深い人にヘンシーンするカルロ。謀反人たちを許し、その上、エルナーニとエルヴィーラの結婚も許すと、慈悲の大盤振る舞い。一同、偉大なるシャルル・マーニュ大帝よ...と新皇帝の徳を讃えてシルヴァ以外全員で盛り上がり幕。これで終れば、ハッピーエンドですが、そうはいきません。カルロの暗殺も失敗したあげく、命まで助けられ、その上、結婚するはずのエルヴィーラも失ったシルヴァはひとり復讐を誓い、歯ぎしりするのでした。


(1)私の名を不滅のもにしよう

(2)合唱:われわれは、みな一家族

(4)どうかお慈悲を
↑♪VideoClipを視聴するにはQuickTime7以上が必要です(期間限定)

登場人物:
☆レオーナ・ミッチェル:エルヴィーラ(ソプラノ)

エルナーニと相思相愛、シルヴァの姪

★エルナーニ:ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)
実はアラゴンの若き貴族ドン・ジョヴァンニ。ドン・カルロの父に財産も奪われ父も殺されたためにエルナーニと名前を変え山賊となり、父の復讐を誓っている。

★カスティリアの王ドン・カルロ;シェリル・ミルンズ(バリトン)
エルヴィーラにご執心で、我がものにしようとしているような悪い王様なのに、神聖ローマ帝国の皇帝に選ばれた途端に、慈悲深い良いひとになる。
テノールに近い高音域のバリトノ・カンタンテの難役

★大公ドン・ルイ・ゴメス・シルヴァ:ルッジェーロ・ライモンディ(バス)
可愛い姪のエルヴィーラの後見人で、自分の花嫁に迎えようとしている。掟と名誉が、自分の首より大切な老貴族。
3幕:慈悲(神聖ローマ帝国皇帝シャルルマーニュの霊廟)
部下とともにカルロ登場、神聖ローマ帝国の皇帝選挙の結果を待ちわびると同時に謀反の企てがあると知り自らシャルルマーニュ大帝の霊廟に隠れ、謀反人たちがやってくるのを待つことにする。
部下に皇帝に選ばれたなら大砲を三度鳴し、そしてエルヴィーラをここに連れて来るように命じる。

♪写真(1)ビデオクリップ:私の青春時代の....(難易度の高いカルロのアリア)
 カルロ国王は富と権力のはかなさを歌う。王笏!富!名誉!美!青春!それらはいったい何なのだ.....カルロは霊廟に隠れる。
♪写真(2)ビデオクリップ:反逆者集結
 案の定、エルナーニ、シルヴァを始めとする国王の暗殺計画を企てる反カルロ同盟が登場。お互いの合い言葉は「アウグスタに!」、よりによって皇帝シャルルマーニュの霊廟の前で、作戦会議。暗殺者をくじで決めることにする。これも運命のいたずらかエルナーニが当たり、これで、父上の仇がうてると大喜び。シルヴァは、面白くありません。暗殺の役目を譲って欲しいと頼みます。しかも、預かっている命も財産もすべてやるから、という好条件。あぁ、それなのに、それなのに、断固拒否。またまたシルヴァの怒りを買ってしまいます。
 ともかく作戦会議終了、みんなで気勢をあげます。この合唱の「カスティリアの獅子は目覚めた....」は当時のイタリア人たちに愛好され、特に「われら一家族、腕と心で戦おう」という箇所は好んでうたわれたそうです。ナブッコの「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」みたいのもので、イタリア人の愛国心を燃え上がらせるものなんでしょう。

 そこに、皇帝が選出されたことを知らせる3発の砲声が轟き、霊廟の扉が開きカルロ登場、反乱者たちは、シャルル大帝が生き返ったのかと驚き慌てふためきます。そこにカルロの皇帝選出を祝賀する一団とともにエルヴィーラも登場。カルロは、手際よく反逆者を貴族と平民に分け、貴族は断頭台行き、平民は牢獄送りを命じます。
 平民に入れられたエルナーニは、自分もアラゴンの貴族出身のドン・ジョヴァンニであると身分を明かし、他の貴族とともに斬首を願う。カルロもそれを聞き入れる。

♪写真(3)ビデオクリップ:エルヴィーラは、お慈悲をと....カルロに、皆の助命を嘆願する
 エルヴィーラがカルロに駆け寄り反逆者たちの助命を嘆願する。カルロは、名前だけでなく、皇帝シャルルマーニュの徳、慈悲の心を受け継ぐのだと考え直し、反逆者全員を即座に無罪放免、エルナーニとエルヴィーラとの結婚を認める。
 シルヴァだけは、復讐を誓うが、あんなに父の仇とこだわっていたのに、エルナーニも皆と一緒にカルロ新皇帝の慈悲を讚え、栄光と名誉をと歌い幕。
 
♪バリトンのアリア:"Oh de' verd'anni miei"私の青春時代の....
ビデオクリップ(1)の国王カルロのアリアは、テッシトゥーラが高く、難曲とされているようです。最後を上げて(Ra♭ As)終わると、観客が熱狂します。すべてのバリトン君が余裕で出せる高音でもないんでしょうね。指揮者から、上げちゃダメって釘をさされる場合もあるかもしれません。ビデオクリップのミルンズも見事に上げて終わってます。手持ちの音源をいろいろアップしてみました。
※楽譜はParte Terza: La ClemenzaのPreludio, scena e cavatina: Oh de' verd'anni mieiをクリック、223頁から

 ↑ピーター・グロッソップ(スタジオ)
1969年ガヴァッツェーニ指揮 (プレヴェディ、カバリエ、クリストフ)

 ↑ピエロ・カップチッリ
1972年ヴェローナ:デ・ファブリッティーズ指揮 (コレッリ、リガブーエ、RR)

 ↓レナート・ブルゾン
1982年ミラノ・スカラ座:ムーティ指揮 (ドミンゴ、フレーニ、ギャウロフ)

 ↑レオ・ヌッチ(スタジオ録音)
1987年ボニング指揮 (パヴァロッティ,サザランド,ブルチュラーゼ)

 ↓カルロス・アルバレス
1998年ウィーン:小澤指揮 (シコフ、クライダー、スカンディウッツィ)

  ↓ディミトリー・ホロストフスキ(コンサート)
コンサートで取り上げているのは、めずらしいのではないかしら。

関連記事:
パヴァロッティを偲んで:ヴェルディ《エルナーニ》2幕☆★VideoClip
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オペラファンならニヤリ!とする映画(9)《フィッツカラルド》続き:エルナーニ


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コメント 6

euridice

「アラゴンのドン・ジョヴァンニ!」の場面ですね^^!
シャルルマーニュの霊廟の前で反逆の密議とは間抜けですが、全員で剣を抜いて歌うところ、わくわくしますね。
by euridice (2007-10-12 13:21) 

Sardanapalus

keyakiさんの分かり易い解説とクリップのお陰で、存分に楽しんでいます♪カルロのアリアの時、後ろにカール大帝(シャルルマーニュ)の像がしっかり建っているので雰囲気があっていいですね。最後のアリア比較も面白かったです。チェロとバリトンの響きが素敵~。こうして比べると、各劇場で音の癖が全く違うのも分かりますね。どうでもいい話ですが、ウィーンの音源でチェロの伴奏が始まる辺りでぶつぶつ言っているのはプロンプターでしょうか?気になります(^_^;)

あれだけ大人気なかったカルロの豹変振りにも笑っちゃいますが、エルナーニがさっきまで「親の敵」だった相手を称えるというのもオイオイ!ですね。こういうツッコミ所の多いストーリーは大好きです。今週末は通して見れる時間を取りたいと思ってるんですけど…。
by Sardanapalus (2007-10-12 21:39) 

keyaki

euridiceさん、この荒唐無稽ぶりがたまんないですね。
内心、おいおいと思いながら見るのが楽しい.....

平民のほうが命が助かるのにね。わざわざ名乗らんでも..と思うのは平民だからなんでしょうね。(笑
by keyaki (2007-10-12 22:31) 

keyaki

Sardanapalus さん、お楽しみ頂いているようで、嬉しいです。これはムーティのスカラ座のより、絶対にこっちが面白い。こんな荒唐無稽な話なんだから、音楽もオリジナルとかこだわるより、あとから挿入したのでもなんでも入れてくれた方が楽しめますね。

>ウィーンの音源
小澤のでしょ、こういうめずらしいのを取り上げるんだったら、もうちょっと頑張って欲しいっていうような,練習不足か実力不足かは分かりませんけどね。
私は、どうしてもバスに注目しちゃいますけど、あの1幕のedcさんいうところの「おぉ,牧場は緑」の威勢のいい歌なんか、もうその前のInfelice のアリアで体力使い果たしたのか、メロメロ、ヘロヘロ、ライモンディのように2回繰り返しは明らかに無理というような歌唱ですわ。若いのに....スカンディウッツィって、この時、まだ40なのにどうしちゃったのですよ。やっぱり練習不足かもね、貴重な録音かも。(笑
エルナーニって、テノール以外が特に難しい曲だとおもいます。
by keyaki (2007-10-13 02:05) 

助六

>急に慈悲深い人にヘンシーンするカルロ

この豹変ぶりはズッコケかつ愉快ですけど、ユーゴーの原作でも似たようなもんなんですわ。ただユーゴーでは、もっとずっと騎士道倫理が強調されてるから分からんでもないが、ヴェルディの場合は、何せハプスブルクのオーストリアの検閲が難癖つけてたわけだから、カルロはとてつもなく慈悲深ーい人でなければならなかったんでしょうね。

でもヴェルディはこのカルロのアリアで、突然の心境変化を音楽的にはまあ一応納得させるいい音楽書いてると思います。
これまでのスッチャカ調(もちろんそこがいいんですが)に変わって、突然内向調に変わるし、出だしの「王笏!富!名誉!」の節回しなんかシモン・ボッカネグラに似てますよね。
伴奏がチェロとコントラから総奏に変わるあたりで、慈悲の人に成長するということなんでしょうが、マンマと乗せられちゃいますね。


>国王カルロのアリアは、テッシトゥーラが高く、難曲

このアリアはいわゆる「ヴェルディ・バリトン」の誕生にも関わってると思います。
つまり力強いけれど、明るくて高い声も出るバリトン。後のリゴレット、ルーナ、ロドリーゴの類。

このオペラ、声域配分の裏話も、今の感覚からすると筋に劣らず荒唐で、フェニーチェが最初に提案したのは驚いたことに、

エルナーニ: アルトの男装
エルヴィーラ: ソプラノ
カルロ: テノール
シルヴァ: バリトン

だったんだそうで、ヴェルディも一応OKしてたらしい。まだまだベルカント時代の伝統は残ってて、フェニーチェではつい14年前アルトがベッリーニのロメオ創唱してたわけですもんね。
ヴェルディも内心は不満で、結局エルナーニをテノールにして、カルロの声域を下げることに成功したわけですが、その結果確立したヴェルディ・バリトンが男らしさと同時に高い音域への引力を持つことになったのは、こうした事情も関係してるかも知れませんね。
男声主役が3人も必要になったのは、この経緯によるとこも多いんでしょう。

ヴェルディ・バリトン成立後も高声域への引力は消滅せず、「エルナーニ」が47年ロンドンで再演された時には、カルロに予定されてたバリトンのタンブリーニのキャンセルを受け、何とアルトの女性歌手アルボーニがカルロ歌ってます。当時24歳のアルトが男装して王様。
高い声のプレスティージュは性別のリアリティを凌駕してまだまだ健在で、ヴェルディ・バリトンはそうした嗜好に拮抗しなければならなかったんでしょうね。
by 助六 (2007-10-18 12:24) 

keyaki

助六さん、
>エルナーニ: アルトの男装
ロメオなら宝塚風もいいですけど、エルナーニは山賊なのに.....
それにバスがなくなっちゃうんですか、それは困ります。(笑

>アルトの女性歌手アルボーニがカルロ歌ってます
山賊のエルナーニが女声歌手よりはましかも....
バルチェッローナなんかいいかもしれませんね。体型的にも。
by keyaki (2007-10-19 00:41) 

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