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毒舌評論家ロドルフォ・チェレッティとR.ライモンディ(1) [オペラ関連書籍&雑誌]

オペラに関心がある人なら、皆さんご存知の学者さんかもしれませんが、恥ずかしながら、全く存じ上げませんでした。いろいろ調べた結果、下記のようなことがわかりました。
ロドルフォ・チェレッティ(1917〜2004.10)
 作家で、オペラ史、演奏解釈、様式、歌唱テクニックの研究家でもあり、「演劇百科事典」「グローヴ音楽辞典」など多くの学術書の編纂にも携わっている。
 もともとは、法律を学んだが、長年にわたり音楽関係の週刊誌「エポカ」、月刊誌「ディスコテカ」、雑誌「アマデウス」や日刊紙「la Repubblica」にも執筆。「L'infermiera inglese」という小説も出版されている。


音楽分野の出版:
・L'insegnamento del canto nei Conservatori di Musica. Documento conclusivo del convegno nazionale di studio(1967) Campogallianiとの共著
・La vocalità (UTET, 1976)
・Il teatro d'opera in disco (Rizzoli, 1976)
・Le memorie di un ascoltatore (Saggiatore, 1985)
★Storia del belcanto/ベルカント唱法:技法と発展の歴史 (Nuova Italia, 1986,仏、独、英、米、日)上の写真は英語訳、日本語翻訳:シンフォニア発行 川端眞由美訳
★Voce di tenore/テノールの声 (Idea Libri, 1989)日本語訳:本の風景社発行 西村勝訳
・II canto (Vallardi-Garzanti, 1989)
・Grandi voci alla Scala+6CD(Milano : Teatro alla Scala, 1991)
・Storia dell'opera italiana イタリアオペラの歴史 全2巻+30CD(Garzanti, 2000)
・La grana della voce. Opere, direttori, cantanti(Baldini Castoldi Dalai, 2000)


 特にベルカント唱法の権威であり、現在活躍中のオペラ歌手、ブルーノ・プラティコ、ミケーレ・ペルトゥージ、ラモン・ヴァルガス、ラ・スコラ等の歌唱指導にもかかわった。1980年から1993年まで、珍しいオペラの上演で注目されているヴァッレ・ディートリア音楽祭 (マルティーナ・フランカ)Festival della Valle d'Itriaの芸術監督も務めた。2005年の音楽祭には、2004年に亡くなったチェレッティを追悼して、ケルビーニのレクイエムがBasilica di S.Martinoで演奏された。

現在のオペラ歌手には、大変手厳しい評論をすることで有名なようです。セガリーニのように特に嫌いな歌手がいるのかどうかはわかりませんが、おそらく全般的に批判的な論調の評論家ではないのかと思います。
ライモンディとの関係は次回にします。
※セルジオ・セガリーニ(フランス)
Opera Internationalの元編集長で、1994年から、ヴァッレ・ディートリア音楽祭 (マルティーナ・フランカ)の芸術監督、2003年からヴェネチア・フェニーチェ座の監督。
フランス・オペラ界の評論で活躍していた頃、1981年にルッジェーロ・ライモンディの本を出版している。
『セガリーニのグルベローヴァ、カバリエ嫌いは有名で、現在はジャーナリズム活動は中止しているようですが、挑発的意見を明確かつ説得的に書く人で、声と上演史の知識も豊富で、私見では仏オペラ批評界では、群を抜いて面白いものを書く人でした。ファンも嫌う人も多いです。10年位前からマルティーナ・フランカの監督として珍しい伊仏オペラのオリジナル版上演を次々と実行、伊批評家協会の最優秀上演賞を複数回取っており、その実績がフェニーチェ任命への布石になったようです。』(2005-06-30助六さんのコメント)
ロドルフォ・チェレッティの後を引き継いで、ヴァッレ・ディートリア音楽祭の監督になったということですね。
フェニーチェ座の芸術監督のサイトでは、芸術監督が空白になっていますが、セガリーニはやめたということでしょうか。 こちらには略歴詳細と写真が掲載されています。


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コメント 11

TARO

チェレッティの本は「テノールの声」しか読んだことがありませんが、とても勉強になりますね。たしかに現代の歌手が本来のベルカントからいかに外れているかについては、厳しく批判していますが、日本の批評家にしばしば見かける、個人の好き嫌いを基にした恣意的な批判ではないので、嫌な感じはしませんね。

「ベルカント唱法」は読まなければと思いつつ、まだ読んでないんですが、特にヘンデルなどのバロック・オペラに興味のある人にとっては、必読の書のようです。
by TARO (2006-11-28 13:12) 

keyaki

TAROさん、やっぱりさすがに読んでいらっしゃるんですね。こういう本があるのも数日前に知りました。
>「ベルカント唱法」
のほうが、各国語に訳されているんですね。

30枚のCD付きの「イタリアオペラの歴史」なんかも面白そうですね。4、5年前には日本でも買えようです。でも¥129800ですって。ちょっと高すぎるような気がしますけど、5万円くらいなら、欲しいですね。
by keyaki (2006-11-28 22:15) 

Bowles

チェレッティの『ベルカント唱法』はまさに目から鱗の一冊でした。それ以来「ベルカント」という言葉をたやすく使うことができなくなってしまいました。TAROさんもおっしゃっているとおり、バロック・オペラはもちろん、(かなり多くのページを費やしている)ロッーシニの歌唱を考える上で、たいへん参考になる本でした。

多分今でもネットで検索すると、ロッシーニ・ルネサンスの黎明期のSemiramideの公演について書いた彼の批評等が出てくると思います。
by Bowles (2006-11-29 10:11) 

keyaki

やっぱりBowlesさんも愛読なさっているんですね。
バロック・オペラには、今のところ興味がないのですが、毒舌チェレッティ氏の著書には興味がありますので、まだ届いていませんが、『ベルカント唱法』買いました。
by keyaki (2006-11-30 00:54) 

助六

チェレッティとライモンディの間に交友があったのは知りませんでした。チェレッティがロッシーニ歌唱でフィリッポ・ガッリの再来として評価するバスはレイミーで、ライモンディはいかにも好きそうじゃないなとか思ってましたので。続き楽しみにしています。
チェレッティが、マルティーナ・フランカの監督として、キャリア飛翔を大いに助けた歌手は、すぐ思いつくのはクベルリとデュピュイでしょうね。

小生も10数年前位は、チェレッティの論考セッセと集めて読んでました。ロッシーニ以前のベルカントの他、ドニゼッティ・ベッリーニ、ヴェルディ、ヴェリスモについて書いたものもあって、17-19世紀イタリア・オペラのvocalitàについては一通り揃います。当時は(多分今でも)、歌唱様式という結局のところ捉えどころがないシロモノについて、ある種の厳密さをもって書かれたものは他に見あたらなかったから、大変教えられました。音楽院出でも、大学人でもなかった氏の著作が今のイタリアでどんな評価を受けているのかは知りませんが、譜面、初演歌手のレパートリー、曲の美学的背景を手掛かりに各役の声楽的アイデンティティを確定するという氏の方法の枠内に留まる限り、氏の結論が大きく変更されることはなさそうに思います。

ただ気が付いてみると、最近引っ張り出して読むことが余りなくなってしまったのは、「様式」や「声楽的アイデンティティ」といったものを正確に確定しようとすればするほど、逆に人間各人の現実の声が有している多様性が浮彫りにされてしまうという逆説の前に、「様式」や「声楽的アイデンティティ」の細部に拘泥する気持ちが個人的には段々薄れてきているせいかも知れません。コルブランの声質を知ることは、ロッシーニ・セリオの本来の姿やカラスの歌唱の意義を理解することに役立つでしょうが、そのカラスはヴェリスモでも説得的歌唱を聴かせ、コルブランの性質には遠いと思われるデヴィーアが、様式の許す枠内で個性的で説得的なロッシーニ・セリオ歌唱を実現する可能性もありそうです。
あと、初演歌手から推定される役の声楽的アイデンティティを、現代の実際の演奏に適用する場合、氏が殆ど触れていない、当時のピッチや小屋の大きさ、オケの厚さをどう判断すべきかという問題もあります。

要するにドンブリ勘定から抜けようとして、調べるうちに再びドンブリ勘定に戻りつつあると言いますか(笑)。
最近は、「様式」も「バロック・ベルカント」「ロマン派ベルカント」「ヴェルディ」「ヴェリスモ」の差を意識すると程度でとりあえずいいかななどとと思うようになりました。「ベルカント」の「厳密な」定義など人間の声の実体の捉えがたさからしてありえないし、氏が唱える「ベルカントはロッシーニまで」という議論も言いたいことはよく分かるものの、字義通りにとる必要はなく、ドニゼッティやベッリーニを「ロマン派ベルカント」という「形容矛盾」の語で呼ぶことも許されると考えています。少なくとも「ロマン派ベルカント」は「様式的には」、ヴェルディを予告するよりロッシーニを継承する部分の方が大きそうな気も。氏もロッシーニ歌いはベッリーニを歌うなとは言わないでしょうし。

もちろん氏が精緻な議論を心がけているのは、「様式」を一旦はできる限り明確化しようという知的企図からして当然ですし(もっとも氏の議論も必ずしも「明快」ではなく結構「融通の利く」ところもあって、氏の才能は「音楽」の本質に対応したこの辺のバランス感覚にあるとも言えるかも)、こんな当たり前のことに氏が気付いていないはずもなく、氏の歌手評を見ると、自分が確定したある役の声楽的アイデンティティにある歌手が合致してないから斬るという訳ではなく、柔軟性をもって歌手の声楽的可能性を判断してるようにも思えます。
氏の新聞・雑誌の公演評は読んだことがないので、どれくらい「毒舌」なのかは興味を引かれます。74-84年に「エポカ」に批評を書き続けてたようですが、これはどういう雑誌でしょうかね?「レップブリカ」は公演評というより、論考の類でしょうか?

セガリーニは、今年4月に、イタリアのオペラ劇場がさらされている予算カットに抗議して、フェニーチェ芸術監督を辞任しています。本当にそうならその潔さはリッパですけど、あるいは総監督あたりとぶつかったとかかな(下司の勘繰り!)(笑)。
マルティーナ・フランカの監督は続けるそうです。
セガリーニの基本的典拠も多分チェレッティだと思います。
by 助六 (2006-11-30 12:38) 

keyaki

助六さんも、チェレッティの本をいろいろお読みになっているんですね。
チェレッティのことを全く知りませんでしたし、ライモンディと親しいことも知りませんでしたので、今から、ちょっと読んでみようかな...と思っています。

>チェレッティがロッシーニ歌唱でフィリッポ・ガッリの再来として評価するバスはレイミーで、ライモンディはいかにも好きそうじゃないなとか思ってましたので。

私もそう思います。短いインタビュー記事ですが、考え方は、かなり違うようです。

>氏の新聞・雑誌の公演評は読んだことがないので、どれくらい「毒舌」なのかは興味を引かれます。
自分で「悪名高い」なんて言ってますから、相当なものなんでしょうね。

セガリーニはやっぱり芸術監督を辞任したんですね。ありがとうございます。
by keyaki (2006-11-30 21:24) 

yumemi

チェレッティさんについてはバスティアニーニを酷評したというのを伝記で読んで良く思っていなかったのですが、バロック期からのベルカントの研究をされている方からみれば、あの50年代のオペラ界はマルカントの集まりだったのかもしれないですね。 それは一理あると思います。 私はむしろ、そんな酷評をくれた批評家にあえて歩み寄って、自分の芸の向上に役立てたライモンディの偉さに感嘆しています。私も『ベルカント唱法』を買って読んでみる事にします。
by yumemi (2006-11-30 22:13) 

keyaki

yumemi さん
ブログのバスティアニーニの連載、興味深く読ませていただいています。チェレッティのバスティアニーニに対する批評のことも、はじめて知りました。

バスティアニーニが早世しなければ、ライモンディと共演していたでしょうね。ライモンディにとっては、歌の勉強をはじめた頃、活躍していた憧れの歌手だったんでしょうね。はじめてミラノに行って、スカラ座のポスターの歌手の名前を見て感動した話があります。
http://blog.so-net.ne.jp/keyaki/2005-11-06
by keyaki (2006-11-30 23:47) 

yumemi

きっとライモンディがご両親を説得して音楽の勉強にミラノへ行った頃は、バスティアニーニの全盛期だったのでしょうね。 

あの私のバスティアニーニ連載は、御恥ずかしい限りの愛だけで書いてる文です^^;;。
某コミュニティではフローレス・ファンで通っているので、フローレスの事はそのコミュニティ日記で書いているため、このブログはほぼバスティアニーニに特化されてしまっています。 でも、最近はバスティへの愛の方が強いかも^^;;
by yumemi (2006-12-01 02:35) 

yumemi

チェレッティ氏について言及した日記を書きましたので、こちらとトラックバックさせて頂きましたので、ご報告申し上げます。
私も彼の『ベルカント唱法』、読んで観ようと思っています。
by yumemi (2007-02-17 08:51) 

keyaki

yumemiさん、TBありがとうございます。『ベルカント唱法』買っただけで安心してまだ読んでいません。
助六さんも、
>歌唱様式という結局のところ捉えどころがないシロモノについて、ある種の厳密さをもって書かれたものは他に見あたらなかったから、大変教えられました。
ということですので、読まなくては...と思っているんですけどね。
by keyaki (2007-02-17 21:38) 

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