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《ルクレツィア・ボルジア》4番目の夫ドン・アルフォンソ:中くらいの役(2) [ルクレツィア・ボルジア]

バス歌手が歌う、小さい役より、ちょっと大きい、中くらいの役シリーズ第2です。
ドニゼッティ作曲の《ルクレツィア・ボルジア》のフェラーラ公ドン・アルフォンソもその一つでしょう。今さかんに歌っている《コジ・ファン・トゥッテ》の老哲学者と同じ名前ですが、こちらは、ルクレツィアの4番目の夫(史実では3番目らしい)で、妻に愛人(実は息子)がいると疑い、復讐に燃える男なんです。物語としては、簡単に言えば、ルクレツィアは、生き別れの息子ジェンナーロを見つけますが、ボルジア家を侮辱された仕返しに、息子の友人達の殺害を企て、結局息子の命も奪ってしまうという、なんともおぞましい悲劇的結末の物語。

1967年ローマ歌劇場:レイラ・ジェンチェルとR.ライモンディ
舞台写真がないので、肖像画を拝借しました


※ひどい録音でも聴いてみようという、奇特な方いらっしゃいましたらどうぞ。
25歳の新人バス歌手ライモンディと名歌手ジェンチェルの共演に大喜びの観客の熱気が伝わってきます。
"復讐よ 来れVieni la mia vendetta"
 ルクレツィアは、ジェンナーロの身の上話から、彼が、生き別れになっている自分の息子だと知る。一方、夫のフェラーラ公、ドン・アルフォンソは、ジェンナーロが、ルクレツィアの愛人だと疑い部下に見張らせている。おりしもジェンナーロは、敵方の傭兵隊に入り、ヴェネツィアからフェラーラにやってくる。ドン・アルフォンソは、復讐のチャンスとほくそ笑む。ここで歌われるのがドン・アルフォンソのアリア「復讐よ来れ」
"二人きりだ Soli noi siamo "
 フェラーラに到着したジェンナーロ達は、宮殿の壁のBorgia家の紋章のBをはがし、orgia(=狂宴)としボルジア家を侮辱します。怒ったルクレツィアは、夫の大公に犯人を捕らえて処罰するように要求します。ところが捕まえてみれば、なんと我が子、一転、大公に助命を嘆願します。 最初は、低姿勢で、「あの若者の命を奪って何になるでしょう、私は許しますわ、私の気紛れでした...それに、あの若者があなたに何をしたというの?... 」しかし、二人の関係を疑う大公は、「公約は守らなければならない。それに、彼はお前の愛人だろう、ヴェネツィアで一緒にいただろう、慈悲などない」と突っぱねます。懇願していたルクレツイァも、業を煮やして、「4番目の夫よ、用心なさい」とおどしにかかりますが、大公はひるむことなく「ジェンナーロを剣で殺すか、毒殺にするか選べ」と迫ります。非常にドラマティックな場面です。凄い夫婦ですね、でも夫婦の間では、意見が食い違うと、よくこういう争いになりますね。「もう、いいわよ、あなたには頼まないわ、そのかわり覚えときなさいよ、、、」なんちゃって。結局、ルクレツィアは、ボルジア家のお家芸である毒殺を選び、すぐに解毒剤を飲ませ、ジェンナーロをひそかに逃がします。ここまでは、めでたし、めでたしなんですけど、その後、しつこく仕返しを計り、意に反して息子のジェンナーロまで、殺すはめになるのですけどね。こんな悪女でも、最後の歌は泣かせるのが、オペラのオペラたるゆえんでしょうか。
▼レイラ・ジェンチェル (レラ・ゲンチャ、レイラ・ゲンジェル):1928.10.10生まれ、トルコ出身。1950年アンカラでデビュー、イタリアデビューは1953年ナポリ、1957年スカラ座デビュー。
※キャスト詳細と公演記録はこちら、歌詞もあります。

 あまり上演される演目ではありませんが、ジェンチェル(ゲンジェル)、カバリエ、サザランドが好んで取り上げていた時期もあったようです。ライモンディも、ごく初期、1967年にジェンチェル(ゲンジェル)と、1968年にカバリエと共演しています。
 最近、ミラノ・スカラ座のデヴィーア、アルバレス、バルチェッローナ、ペルトゥージという豪華キャストでの公演が放送されましたので、ご覧になった方も多いと思います。ウーゴ・デ・アナの演出舞台衣裳で、この演目にふさわしい、豪華で不気味な雰囲気でした。

■参考:オペラ御殿で解説と、粗筋があります。こちら
■関連記事:

2006-04-28R. ライモンディ、23歳の時のライブCDリリース!

2006-03-10ケルビーニ作曲《メデア》:Leyla Gencerのメデア


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コメント 8

euridice

相互TB、ありがとうございます。シドニーのも見たことがありますが、話の筋がよくわかりませんでした^^;; スカラ座のは、ダニエラ・バルチェッローナがほんとに立派な青年に見えて、目立ってました。
by euridice (2006-09-25 22:24) 

にぃにぃ

ご無沙汰しております。
いつも楽しく拝見していますが、コメントは久しぶりです(^^ゞ
この『ルクレツィア・ボルジア』、リッチャレリとリサイタルで歌っているのを聴いたのが初めてでした。
”二人きりだ”の二重唱がとても好きです。ぞくぞくしますね(^o^;変?
”海賊版の女王”ジェンチェルの声を初めて聴きました。劇的でしかも澄み切った美声がすばらしいです。
観客の大喝采!25歳のライモンディ、渾身の歌唱ですね。
by にぃにぃ (2006-09-25 23:19) 

keyaki

にぃにぃさん、お元気でしたか。
ファルスタッフはご覧になったのかしら。

私も、あのスペインのコンサートではじめて聴いて、わぁお、すごい歌だわ、とほんとゾクゾクしました。変じゃないですよ。
この時期、ジェンチェルとの共演が多いですよね。ジェンチェルもキリリと美しい方だし、25歳のライモンディなんて、お父さんもほれぼれするくらい舞台姿が美しかった(今でもですけど)わけですから、お客さんがうらやましいですね。

音が相当悪いので、コンサートの方にしようかともおもったんですけど、ちょっとリッチャレッリが最後の方で息切れしているので、ジェンチェルのほうにしたんですよ。最後まで迫力がありますからね。
最近放送された、デヴィーアとペルトゥージのと比べると、スケールが違うな、とおもいました。
by keyaki (2006-09-26 01:31) 

keyaki

euridiceさん
シドニーのは、サザランドが似合うんですよね、あいう豪華な衣裳が。この話は、粗筋を知ってないと??ですよね。
サザランドのを見た時は、ライモンディが歌っているのを知らなかったので、熱心にみてなかったということもあるんですけど、、(笑
by keyaki (2006-09-26 01:38) 

ジェンチェル大好きです。しかし25歳のライモンディ、さすがに若々しいですね。
ちなみにルクレツィア・ボルジア、2008年にグルベローヴァが歌うらしいですね。その頃まで歌えるのかしらと思ってしまいますが。
by (2006-09-26 23:43) 

にぃにぃ

はい、「ファルスタッフ」初日に観にいきました。
keyakiさまとニアミスだったんですね!
ひたすらライモンディの声に聴き惚れて、あっという間の3時間でした。
実はそれ以外があいまいで(^^; Keyakiさまのレポートを読んで、ちゃんとご覧になっていて、えらいなぁ~と思いました。

「ルクレツィア…」リッチャレリは、歌い終わった後、感極まって涙が出てましたね。役になりきる集中力ってすごいのね~と感心しながら観ていました。
>変じゃないですよ。
ありがとうございます。
ライモンディは、こういう役(スカルピアのような、悪役でなおかつ色気のある役…うまく言えませんが)にとてもはまりますね。ライモンディがこの手の役をやっているの、好きなんです。
またコメントさせて頂きます。よろしくお願いいたしますm(_ _)m
by にぃにぃ (2006-09-27 00:39) 

keyaki

gon さん、グルベローヴァのルクレツィア・ボルジア、楽しみですね。10年先の話ではないので、大丈夫でしょう。

Nice!ありがとうございます。プロフィールのアイコン変えたんですね。
by keyaki (2006-09-27 01:17) 

keyaki

にぃにぃさん
そうでしたね、早めにちゃんとチケット買ってましたよね。
お目にかかりたかったですね。
今回のファルスタッフを見て、もう一回くらい、来日してくれそうな気がしてきました。
by keyaki (2006-09-27 01:23) 

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