ケン・ラッセル演出《ファウスト》:どのくらい画質がよくなったか [ファウスト/ファウストの刧罰]
R.ライモンディは24才で《ファウスト》のメフィストを歌い、現在に至るまで、主要なレパートリーの一つとなっています。ライモンディの演ずるメフィストは暴れん坊で、即興的によく動くのが特徴です。
1966年に、専属契約をしていたヴェネツィアのフェニーチェ座で、初の大役メフィストを歌うことになり、演出家のファジョーニの提案で、メフィストの演技と歌をいかにリンクさせるかの特訓をローマで行います。ヴェネツィアに戻り、最初のリハーサルで、ところ狭しと舞台を駆け回り、1メートルはあろうかというテーブルから飛び降りるのを目の当たりにして、ライモンディにはとてもこの役をこなす演技力はないだろうと踏んでいた合唱団員達は、大喝采したということです。
この時から、ライモンディの演ずるメフィストは「暴れん坊」で、くるくるめまぐるしくよく動くのが特徴だということですが、この「暴れん坊」のアイデアは、ファジョーニのものだと、後日、ライモンディが語っています。
1980年、ミュンヘンでのピッツィ演出のメフィストも大人気だったそうで、ライモンディの動きをまねしたりする人達もいたとか....。
『ピッツィは、ライモンディのメフィストを普通以上に中心に据えた。いわば、ピッツィはある意味で、ライモンディに演出させたのだった。このようにして、メフィストはただ知的になっただけでなく、視覚的に完全な存在感を得たのだった。
ライモンディの貴族的で、非常に印象的な地獄の主が舞台に立った。彼はお決まりのナンキン虫やドブネズミなどをお伴にしておらず、どこから見ても明らかにゲーテのファウストに登場する悪魔のようではなかった。それに、どんな種類の魔女を煩わす必要もなく、そのえじきをどんな姿にだろうが、若返らせることだろうが、自分の力で手はずを整えることができるという、彼の言葉をだれもが信じた。』
このメフィスト像は、ケン・ラッセルの演出でも同じで、《ファウスト》という題ですが、どうみてもメフィストが主役に見えます。
メフィストの合図によって現れたり消えたりする地獄の乙女たち(バレー団)を従えて、次々と即興的行動で駆け回ります。これは、ピッツィと同じく、ケン・ラッセルもライモンディにまかせているからでしょう。
伝統的な演出と異なるのは、メフィストの描き方だけでなく、マルガレーテがシスター(修道女)だということ、このアイデアはこの物語自体に説得力をもたせる効果もあるとおもいます。
関連記事:ケン・ラッセルの演出について、ライモンディのインタビュー
参考:《ファウスト》公演記録
※今回発売のDVDは、日本語字幕はありません。日本ドイツグラモフォンがいずれ発売するつもりかもしれませんが、わかりません。
随分画質が違いますね。このDVD入手しようと思ってて、忘れてました。
>マルガレーテがシスター
この辺の受け止め方は、やはりヨーロッパの人と日本人の決定的に違ってきそうですね。
ケン・ラッセルはカトリックなので修道女の堕落というのには、人一倍関心があるのかもしれませんが、普通の日本人にとってはあまり切実な問題にはなりませんよね。
euridiceさんとかのようにミッション系の学校で教育を受けてれば、またちょっと別でしょうけれど。keyakiさんもキリスト教系の学校でしたっけ?
by TARO (2006-09-09 13:56)
新国のシーズンといえば ドンカルロでVコワリョフのフィリッポが気になります アメリカのオペラ雑誌にもコワリョフが特集されてました、運力にはまた晴さんがでるそうです グアルディアーノは妻屋さんだそうです、イドメネオには同級生の中村恵理ちゃんがイーリアででて さらにムゼッタでボローニャ歌劇場にデビューします うらやましい・・
by ぉさむ (2006-09-09 19:21)
良い演奏ですね。日本語版を待たないで買おうかなあ....
メフィストというとギャウロフという印象が強かったのですが、ライモンディのメフィストは(いい意味で)イヤラシくて素敵ですね。ギャウロフの声は深いですが少々年配風の落ち着いた雰囲気になります。ライモンディはもっと精力みなぎる若々しい悪魔ですね。静のギャウロフ、動のライモンディというところでしょうか。
クライバーのボエームやオテロなどベルカントソサエティの海賊盤でしか手に入らない映像はまだまだあるので大手のレーベルはもっともっと頑張ってほしいと思います。
by たか (2006-09-09 20:51)
おさむさん、
前回の新国は、原演出が、ヴィスコンティの豪華版でしたが、今回のは、写真を見ると舞台がシンプルなのはいいとしても、衣裳が、質素すぎるかんじですね。孫にも衣裳なんで、それらしく見えるようにして欲しいとおもいます。
>Vコワリョフのフィリッポが気になります
私には、まったく未知の歌手さんなんですけど、若い方のようですね。
by keyaki (2006-09-10 10:36)
TAROさん
再演をご覧になってるんですよね、レイミーの。
>マルガレーテがシスター
マルガレーテが普通の娘だと、今も昔もよくある話で、子殺しまでいくかなぁ、と思ってましたが、この演出でシスターの設定になっていたので、なるほど、でした。
実は私もシスターのいる学校だったんですけど、まだ、当時は、シスターがこういうかっこうをしていたんですよ、ピシッとのりのついた真っ白のカラーで、特別な人に見えました。
by keyaki (2006-09-10 10:56)
たかさん、
イタリア歌劇団のが、ギャウロフですものね、あれは、素晴しいキャストですよね。
ベルカントでは、ウィーンの「ランスへの旅」もあるので、いずれは、大手レーベルでと期待しますね。
by keyaki (2006-09-10 11:05)
牡牛がスロットマシーンとは、思わず笑ってしまいました~。本当にDVDだと画質が段違いですね。
>十字架を怖がってみせるが、喰ってしまう
十字架チョコレート!?美味しそうに食べてますね(笑)
by Sardanapalus (2006-09-10 18:18)
ずっと前の記事、TBします。
by euridice (2006-09-10 20:44)
TBありがとうございます。
そうそう、ロジェ・ソワイエですよね。
たしかに似てますね。ライモンディの方が、アクが強いですけど。パリ・オペラ座で、人気の歌手で、ドン・ジョヴァンニなんかもライモンディとソワイエでダブルキャストとかだったようです。
私も、このパリ・オペラ座のは好きです。メフィストがいかにもの悪魔のかっこうじゃないところがいいですよね。すてきな紳士ですものね。
悪魔歌手として人気の某歌手のすごいかっこうのメフィストがありますが、あれって、好きな歌手には絶対やってほしくないかっこうです。
by keyaki (2006-09-10 22:32)
Sardanapalus さん
この演出は、けっこう悪ふざけがあって、面白いですよ。
聖水に××なんか、もちろん後向きですけど、ちゃんとわかるところがさすがライモンディ、なんちゃってですよ。(笑
by keyaki (2006-09-10 23:20)
>keyakiさん
そうですね。レコードでも古いクリュイタンス盤を除けば手に入ったのはボニング盤とプレートル盤だけで、どちらもギャウロフでした。CD時代になって少し増えましたがライモンディのメフィストは意外にもこれまでなかったと思います。
大手レーベルが出してくれると画質が良いので歓迎ですが、でもこのファウストにしてもクライバーのカルメンやドミンゴ/サンティのアンドレアシェニエにしてもベルカントソサエティが海賊盤を出してしまったので(著作権者側の対抗上?)大手のレーベルでも発売されたという部分もありそうです。ですので海賊盤の存在価値というのも一概に否定はできないと思っています。
80年代から90年代のウイーンは商品化されていない映像がまだまだあるようです。たとえばアバドが振ったペレアスとメリザンドはLDの発売予告が出ていたのですが結局発売されませんでした。
by たか (2006-09-11 01:19)
>聖水に××
>後向きですけど、ちゃんとわかるところがさすがライモンディ
そうそう、そういうところが大切ですよ!いや、本当に(笑)知らずに使ったらイヤン、ですね~。
歌手が良いのは当然ですが、演出自体が楽しそうで気になってきたので今度購入を検討してみます♪
by Sardanapalus (2006-09-11 01:19)
偶然ですが、昨日「オペラ座の怪人」に関してYouTubeでいろいろ見ていましたところ1990年のアメリカのドラマ版でおもしろいものがありました。(コピット版)
ミュージカルとは全く違うのですが、このグノーの「ファウスト」がかなりの割合で登場します。(かなり重要)
しかも舞台の場面が長いのがオペラファンにはうれしいです。
「ファウスト」はアリアしかきいてなかったので、マルガレーテの格好をしたクリスティーヌが出て来て感動!
http://jp.youtube.com/watch?v=endVuoQu0iU
(「ファウスト」はだいぶ経ってから出て来ますが。)
しかもフランスのキャロルが出て来ました。「あらののはてに」ではない別なキャロルです。
これはもしかして「ファウスト」に出てくるのか・・・と思いました。
ビデオクリップ、拝見させていただきます。
by Cecilia (2008-04-29 08:28)
Ceciliaさん
ご紹介のテレビ映画,全部見ちゃいました!暇人ですね...(笑
バート・ランカスターがでてるんですね。
グノーの《ファウスト》は、最初のファウストが毒を飲もうとしたところにメフィストが現れる場面、マルガレーテの宝石の歌、それから、ドラマの最後には、オペラでも最後に歌われる、ファウスト、マルガレーテ、メフィストの三重唱が使われていました。《ファウスト》がちゃんと順番にドラマに組み込まれていて、重要な要素になっていますね。
あと、オペラで使われているのは、《ノルマ》と《椿姫》がちょこっと。
>マルガレーテの格好をしたクリスティーヌが出て来て感動!
最近の演出ではそんなことはないですが、昔は、マルガレーテといえば、三つ編みだったようですね。
カバリエのマルガレーテ↓
http://keyaki.blog.so-net.ne.jp/2007-04-25
メフィスト役の歌手を、警官が、ファントムと間違えて逮捕しようとしたら、「ファントムじゃない、メフィストだ..」なんて...(笑
映画は、完璧ホラー仕立てのものも多いのですが、これは、とても楽しめました。リンクありがとうございました。
by keyaki (2008-04-29 14:21)
そうなんです!
「椿姫」が出て来るのはありがちですが、「ノルマ」が出てくるところが通好みだと思いませんか?
あともしかして「連隊の娘」が出てきたのかなあ・・・と思いました。
"Convien partir"と似たメロディーが出てきたので。
ベルカントについてカルロッタが「自然には身につかない」と言っているところがとても興味深かったです。
(私も暇なので全部見ました。目が離せませんでした。)
個人的にファントムがどんなレッスンをしていたのかずっと興味があったのです。
これからカバリエのマルガレーテの記事を拝見させていただきますね。
by Cecilia (2008-04-29 15:25)
こちらのビデオクリップ、やっとゆっくり見ることができました。
金の牛さん、おもしろい!
最後にメフィストが十字架を食べているのもおもしろいですね。
グノーは宗教曲ばかりを聴いたり歌ったりだったので、もっとオペラが見たくなりました。
「ファウスト」はシューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」にも関係するので、以前ちゃんと読もうとして挫折していました。
オペラも見たことがありませんでしたが、”金の牛”が出てくるのですね。
旧約聖書に出てくるし、”金の牛”といえば「ナブッコ」でしたっけ?
「ファウスト」では台本自体にこれがあるのでしょうか?
それとも演出ですか?
by Cecilia (2008-04-29 15:40)
Ceciliaさん、私も見ました。
ご紹介くださり、ありがとうございます。
おもしろかったです!
>「連隊の娘」が出てきた
クリスティーンがビストロでカルロッタと歌っているのが
そうだそうです。9/24
ファウストのフィナーレ、巧く使ってますね^^+
by euridice (2008-04-29 21:57)
書き忘れたので、連続ですが・・
>ベルカントについてカルロッタが「自然には身につかない」と言っているところがとても興味深かったです。
さすがにカルロッタもちゃんとしたオペラ歌手ということですね。
生まれつきの才能も不可欠ですけど、たとえそれがあっても
専門的な勉強と訓練抜きでオペラを歌うことは不可能らしいですから。
by euridice (2008-04-30 10:54)
Ceciliaさん、euridiceさん
テレビドラマ、全部をYoutubeで見たのはじめてです。
これって、原作に忠実なのかどうかはわかりませんが、オペラ好きが見ても、なかなかよくできてますよね。
今までの映画は、現代に置換えたり、スプラッターホラーですものね。
by keyaki (2008-04-30 15:27)
ミュージカルよりは忠実だと思いますが、ちょっと違っていると思います。
よくよく考えると、ドラマ版のファントムの実の母は「ファウスト」のマルガレーテのような存在ですね。
私もこれだけYouTubeで見たのは初めてです!
by Cecilia (2008-04-30 16:14)