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オペラ歌手のオペラ演出:R.ライモンディの場合(2) [オペラの演出]

フランス北部ロレーヌ地方の都市ナンシーは、ロココとアール・ヌーヴォーの街、エミール・ガレのガラス工芸が有名です。ここで、1976年11月にプレートル指揮、ルイ・デュクルー演出で《ドン・ジョヴァンニ》を歌っています。共演者は、ルネ・オーファン、イルヴァ・リガブーエ、エディト・マルテッリ、ガブリエル・バキエ、エルネスト・パラシオです。そして、10年後の1986年に、自らの演出でドン・ジョヴァンニを歌いました。演出初挑戦です。

《ドン・ジョヴァンニ》
マルク・スーストロ指揮、ルッジェーロ・ライモンディ演出、Carlo Tommasi舞台美術衣装
ドン・ジョヴァンニ:Ruggero Raimondi

ドンナ・アンナ:Karen Huffstodt
ドンナ・エルヴィーラ:Mariette Kemmer
ゼルリーナ:Lilian Watson
ドン・オッターヴィオ:Jerome Pruett
(他のキャストはわかりません)
1986年2月、ナンシー大劇場
Janine Reiss

注)現在は「ナンシー市&ロレーヌ地方歌劇場」という名称に変わっているという情報をきのけんさんからもらいました。

 プレミエにはヨーロッパ中の観客が押し寄せ、フランスのマスコミからは、非常に好意的な批評が寄せられた。ル・マタン紙はこう評した。「元気ではちきれんばかりのドン・ジョヴァンニだ。彼は、自らの人生に、出会った人々を次々と巻き込み、彼らに向かって猛烈なエネルギーを発散する。このプロダクションには一瞬たりともたるみがない。全てが常に動いている。場所、衣服、相手役を慌ただしく取り替え、肉体同士をぴたりと寄り添わせ抑圧から解放することによって、緊迫感と率直な官能性が自ずと浮かび上がってくる。ここで扱われているのは、優しさや怖れではなく、意気揚々と愛を渇望する人生なのだ。しかも今回は、プロデューサーと主役が同一人物であるため、二者間の見解が完全に一致している。タイトルロールの歌唱は、空前のすばらしさであった。(略)ドン・ジョヴァンニのパワーが、他の登場人物にタブーを破らせ、本性を現させた。」
 このプロダクションはけっして《ドン・ジョヴァンニ》という作品の絶対的解釈を究明するものではなく、1986年における、彼なりの、現代的な解釈を表現したのだと、彼は述べた。
 ヘレナ・マテオプーロス著"ブラヴォー ディーヴァ"より抜粋

 他のインタビューで、この時の演出について次のように語っています。「自分が考えるドン・ジョヴァンニ像を描くことができたと思っています。その時は歌って演出するという、非常に大変な自殺行為でしたから、以後2度とはやらないと思っています。」

写真:街の中心であるスタニスラス広場はロココ建築の傑作。市庁舎や美術館など複数の建築と広場が一体となって設計され、優雅な空間を創り出している。特にライトアップされる夜間は素晴らしい
ライモンディのオペラ演出記録
■1986年ナンシー《ドン・ジョヴァンニ》
■1992年ナンシー《セビリアの理髪師》
■1996年アテネ《ドン・ジョヴァンニ》:ブログ記事はこちら
■2003年モンテカルロ《ドン・カルロ》

※ルイ・デュクルー Louis Ducreux(1911.9.22ー1992.12.19 パリ):

俳優、演出家でマルセイユ、モンテ・カルロ、ナンシー(1973-1977)のオペラ監督を務めた。映画「田舎の日曜日」「二人のベロニカ」に出演

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