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F.ロージ監督 OPERA-FILM《カルメン》その2 [《カルメン》FILMとオペラ]


《カルメン》3幕二重唱「俺はエスカミーリョ」
3幕、密輸団のあじとにカルメンを捜しに来たエスカミーリョは、ドン・ホセと対面、彼女を賭けての決闘となる。この場面は、一部をカットしている舞台をしばしばみかけるが、この映画が一番長いバージョンではないかと思う。舞台でもほとんどドミンゴがホセで、息もピッタリである。(スカラ座でカレーラスとの共演もあるが....)
  ロージは《カルメン》について、『実に特殊なオペラ、リアリズムのオペラであり、もしかするとその名に価する唯一のものかもしれない』と語っている。そのためいつも音楽映画を撮りたいと願っていた彼は、パトリス・ルドゥーから《カルメン》を提案された時、これまでの映画同様、『現実の背景を用い、この物語を生み出す条件となった社会的・文化的現実との密接な関連のうちに演出できる』ことを条件に承諾したのである。
  撮影するに際して、『場所や場面の真実性を何一つ切り捨ててはならない』と考え『素材に一種の創造的自立性を与えたい』という意図をもったロージが撮影場所に選んだのは、実際の物語の舞台となったセビリアではなく、同じアンダルシア地方の山間の小さな町ロンダであった。この映画のためにスペイン中を歩きまわってロンダをみつけたそうだが、その選択がいかに適切であったかは、この映画を見ればだれしもが納得できよう。
  さらに彼はオペラ《カルメン》が『台本にせよ、音楽の躍動感にせよ、まるで映画のために構想されたかのようにみえる』と言い、映画の問題点は『カメラを動かすことよりも、むしろ音楽的な物語を舞台上演のさまい制約から解放してやることにある』、あるいは『映画の本当の問題点は、映像やその言語表現をいかにも自然なもののように見せることだ』とも語っているが、これらの発言が、映画《カルメン》において、見事に達成されている。
  ビゼーのオペラといわば真正面から取り組んだ大作であり、冒頭の闘牛の場面から最後の悲劇にいたるまで一瞬たりとも目をそらすことができないと言っても過言ではないほど、きわめてリアルに、そして見事な映像美で描ききっている。
  そして、このオペラ映画が成功したもうひとつの大きな要因は、やはり端役にいたるまでの隙のない見事なキャスティングであろう。

  なおゼッフィレッリとロージは共に'40年代から'50年代にかけて、巨匠ルキーノ・ビスコンティの下で一緒に助手をつとめていた。
LD解説文より

関連記事:
2006-07-08 F.ロージ監督 OPERA-FILM《カルメン》その1
参考:映画「カルメン」キャスト詳細


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コメント 2

ヴァラリン

はぁ~~RR氏、颯爽としてますね。

>この映画が一番長いバージョンではないかと思う。

そうなんですか。確かに、CDをとっかえひっかえ聴いてますが、色んなバージョンがありますね。

この映画だと、飽きずに見られますけど、実際に劇場で見る場合とか、音だけだと、下手にやられると「もっと短くてもいいんじゃないの?^^;」と思えるケースもありますよね。

エスカミーリョ役の歌手のファンにとっては、長ければ長いほうが楽しめますけど(笑)
by ヴァラリン (2006-07-10 10:30) 

keyaki

一般的には、「俺の仕事は、人を殺すことじゃない」とエスカミーリョがかっこよくきめるところは、ないと思います。テノール歌手が転ぶのをいやがるのか、エスカミーリョが足をすべらせて転ぶ場面しかないのではないかしら?記憶だけで言ってますので、違うかもしれませんが。

まあ、エスカミーリョは、録音ならともかく、功なり名を遂げた歌手のやる役ではないと思いますけど。なかには、エスカミーリョのことを全く無視したレビューもありますしね。ソプラノとテノールしか眼中にない人が多いですからね。私なんか、ミカエラなんて誰でもいいよ、、なんて思っちゃいますけど (笑
この映画にしても映画評論家がみると、ロージ監督がエスカミーリョに重要な役どころを与えていると感じるようですが、日本のオペラ評論家のような人たちには、そんなことは関係ないようですよ。
by keyaki (2006-07-10 13:33) 

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