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最後に:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》 [《ドン・ジョヴァンニ》FILM]


OPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》を序曲にのせて紹介

このドキュメンタリーで、世界初のOPERA-FILMの制作が、新しいジャンルへの挑戦、ロージー監督自身が『完成にこぎつけただけでも奇跡だ。』と語っているように、いかに前代未聞の大変な企画だったかが伝わってきました。関係者の制作秘話ともいえる興味深い話がいろいろありました。なかでも気になったのは、ポール・マイヤーズ(当時録音を担当したCBSプロデューサー)の『三人の歌手』の件と、この映画の成功の鍵となったヴィチェンツァのパラディオの建物を撮影場所に選んだのは誰かということでしょうか。
『三人の歌手』は、いろいろ考えられますが、はっきりはわかりませんので、まあ、おいておくとしましょう。
さて、撮影場所を決めたのは誰か、ということですが、ロージー監督と考えるのが妥当かもしれません。流れとしては、こういうことでしょうか。
この映画制作の発案者であるリーバーマンは、セビリアで撮影することに捕われていたが、シェローから「音楽的には18世紀イタリアであり、撮影場所はヴェローナとヴェネチアの間に美しい場所が幾つもある」という意見を聞いていた。そこで、恐らくロージーから撮影場所はイタリアにしたいと言われた時も、それをすんなりと受け入れたのではないかと思います。
ロージーとリーバーマンは、1978年のはじめにイタリアを訪れ、ヴェネツィアから西に70Km離れたヴィチェンツァを映画の主な舞台にすることに決めた。というのも16世紀イタリアのパラディオの手になるラ・ロトンダとテアトロ・オリンピコをはじめとするいくつかの建物がまさに彼らの意図する今日の「ドン・ジョヴァンニ」に相応しかったからで、全体のプランはこの街を基準に組み立てられることになり........
   ー映画パンフレット(木村重雄)よりー

と映画のパンフレットにも書かれている。また、ロージー自身次のように語っている。

ロージーは、1951年にはじめてイタリアをを訪れ、その素晴しさに衝撃を受け、この時から、ずっとトスカーナとヴェネツィアを熱愛している。.........

インタビュアー:
《ドン・ジョヴァンニ》であなたが手にした予算と技術面での充実ぶりは、ちょうど《ガリレオ》のときに実現できなかったものに当たるようです。つまり、空間と広がりと本物の舞台背景こそが、あなたが《ガリレオ》に望んだものでした。
ジョセフ・ロージー:
その比較は正しい。《ドン・ジョヴァンニ》は、ある意味ではそもそも私が《ガリレオ》でやりたかったことだったと言える。
実際《ドン・ジョヴァンニ》の時代背景は、《ガリレオ》と同時期に当たっている。服装のことをいうのではなくて、その建築様式においてだ。そして皮肉なことに、《ガリレオ》の主要な舞台だったパドヴァから数マイルばかり離れたところで《ドン・ジョヴァンニ》を撮影していたわけだ。
...........私が魅力に感じたのは、モーツァルト、「ドン.ジヨヴアンニ」の主題、パラーディオ建築、この三つの組み合わせだ......
   ーJoseph Losey 追放された魂の物語 抜粋ー



アンケンブランド著『ルッジェーロ・ライモンディ 仮面の人』"ドン・ジョヴァンニ 映画"

ジョセフ・ロージーに関するサイト:
■サイトCineKen2「追悼ジョゼフ・ロージー全作品」
■「村田憲一郎」HP"euro_jazz"シリーズより
関連記事:
2006-06-19シェロー:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-17ロージー監督:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-15指揮者マゼール:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-13米国では失敗?ロージー監督《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-10豪華版DVD(仏):ロージー監督の『ドン・ジョヴァンニ』


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コメント 4

きのけん

 おっ、また新しいのが出ましたね。
 そうそう、上の写真の背後に映ってる子供が重要な役割を果たしていたように憶えてるんだけど、どんなんだっけ?…忘れちゃったよ。思い出させてちょうだい!…。
 それから《ガリレオ》は実際にフィルムを見た人は少ないから要注意だね。こいつ、実物を見てないで想像で物を言ってるなあ…というコメントが多いですよ。これはほとんど全部舞台中継みたいなフィルムなんで、ロージーの意図としては、むしろベルイマンの《魔笛》(1)に近いものじゃないかと思います。二人とも舞台演出家でもあるし、芝居でできないこと、映画でできないことがよく判ってるんだ。

(1):orfeo.blogへどうぞ。
http://orfeo.cocolog-nifty.com/orfeoblog/2006/03/post_2b1b.html

きのけん
by きのけん (2006-06-29 16:47) 

keyaki

きのけんさん、これが最後です。
"黒衣の従者"、子供というか少年、イザベル・アジャーニの弟のエリック君ですね。あっ、でもこの写真の後の方にみえるのは、ヴァン・ダムのレポレッロです。
このドンの小型版の少年は、要所要所に出てきて、ドンのことを憧れの眼差しでじっとみつめています。

インタビューをコピペ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
無言のキャラクターの"黒衣の従者"を編み出したのはどうしてでしょうか?
JL:それは完全にサリエリのアイディアだった。私としては、同性愛をほのめかすものと誤解を招かないかと心配だった。しかしそれは避けることができたと考えている。"黒衣の従者"は、ドン・ジョヴァンニが使用人の女に生ませた私生児なのかもしれないと考えている。従者の中でも特別な身分にあるので主人の側にいつも仕えており、それでデウス.エクス.マキナ(時の氏神)のような役割を果たしてくれている。つまり、演出家が常に苦労させられる、ダ・ポンテ台本のちよつと信じ難い筋の展開のつじつまを合わせてくれるのだ。たとえば第一幕の終わりのところでは、ドン.ジヨヴァンニがどうやってオッターヴィオの手から逃れたのか、どうやつて集団リンチから抜け出せたのかよく分からないが”黒衣の従者”の何らかの手助けがあったことになっているのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
>同性愛をほのめかすものと誤解を招かないかと心配だった。しかしそれは避けることができたと考えている

誤解している人も多いようです。なんでもそうとっちゃう人っているんですよね。

>ドン・ジョヴァンニが使用人の女に生ませた私生児なのかもしれないと考えている

きのけんさんは、ジャコ監督のトスカをご覧になってなかったかしら。
関係ないですけど、この映画のスポレッタもスカルピアが誰かに生ませた子供ではないかと思いました。ライモンディの彼を見る目つきにそういう雰囲気が漂ってました。
by keyaki (2006-06-29 20:31) 

きのけん

 うん、メインのソニーじゃ見えなかったけど、iBookの液晶で見たらちゃんと見えた。うんうん、あれはヴァン・ダムだよね。
 でも、ロージーはサリエリだなんていい加減なことをホザいてますが、あれはベルイマン《魔笛》に出てくるベルイマン娘の真似をしたのに違いない。自分でそんなこと白状するわけはないからね(笑)。

 でも、同性愛云々というのは、そう解釈した方が面白いと思う人はそうとればいいだけの話。
 ただ、ロージーがそうとられちゃ困るって思うのは理由のないことではありません。彼は昔からペドファイル的な指向がかなり強いんですよ。彼のフィルムを見てると一目瞭然。
 僕が見たうちでは最も古い《A CHILD WENT WORTH 》(米、1941)という短編があるんだけど、これがなんと、米国務省の注文(!)で撮った教育映画で、夏のヴァカンス村ではしゃいでる子供たち、素っ裸になって池でキャッキャはしゃいでる子供たちを、本当に嬉っれしそうに撮ってるんだよね。長編デビュー作が《緑色の髪の少年》(1948)だろ。《M》(1951)が連続子供殺人犯の話じゃない。《大いなる夜》(1951)の男の子はもうちょっと年上だけど、《拳銃を売る男》(1952)でまたまた男の子が主人公。しばらく収まっていたと思うと、《呪われた者たち》(1962)でまたまた放射能に汚染され隔離された子供たちが主人公。《夕なぎ》 (1968)のミア・ファーロウが少女。多分ロージーの最高傑作じゃないかと思われる《恋》(1971)でまた主人公が男の子、《南への道》(1978)のミューミューちゃんと《鱒》(1982)のユペールちゃんが二人共ロリちゃん…。と子供が主人公だったり、重要な役割を果たす映画が半端な量じゃないんだよね。だからペドファイルというのは短絡だけれど、少なくともその傾向は相当強くて、それを映画的に見事に昇華させてることは確かだよね。ヴィスコンティのホモと同じだ。
 うん、ホモ的傾向というのは、あまりほじくってもしょうがないと思うけど、ペドファイル的傾向というのはロージー映画のごく本質的なテーマとつながってくると僕は思ってます。
きのけん
by きのけん (2006-06-30 05:11) 

kametaro07

事後承諾で申し訳ございませんが、拙宅にこちらのリンク張らせていただきました。
映画「ドン・ジョバンニ」実に美しいですね。
by kametaro07 (2009-09-26 19:24) 

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