歌手たち:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》 [《ドン・ジョヴァンニ》FILM]
映画出演初体験の歌手達のとまどいは相当なものだったようで、特に女性歌手たち、エッダ・モーザー、キリ・テ・カナワ、テレサ・ベルガンサは、一様にとんでもないことばっかり、、、まあ終わってみればすばらしい体験ではあったし、この映画に出演できたことは誇りだわ、、、と言っているが。さすがに男はぐちっぽいことは言ってませんね。 ライモンディについては、エグゼクティブプロデューサだったミシェル・セイドゥーが「彼はそれまでの殻を脱いで、俳優に変身.....彼は突如自分の才能を意識したのです。」と語っていますし、ヴァン・ダムもその後、映画「仮面の中のアリア」(こちらに紹介があります)に主演しているし、それぞれ貴重な体験を生かして飛躍したということでしょうか。 写真左上:結婚しよう!とゼルリーナの誘惑に成功...したかと思ったが.... 写真右:ドン・ジョヴァンニの仮面を持ったレポレッロ、よく似た主従で、ドン・ジョヴァンニの小型版のようです。 |
2006-06-19シェロー:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-17ロージー監督:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-15指揮者マゼール:ドキュメンタリーOPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-13米国では失敗?ロージー監督《ドン・ジョヴァンニ》
2006-06-10豪華版DVD(仏):ロージー監督の『ドン・ジョヴァンニ』
ビデオクリップも画質がものすごくいいですね!
ツェルリーナとドン・ジョヴァンニの転がりよう、映画より、
相当派手でびっくり。衝撃、大きそう・・・
by euridice (2006-06-23 23:09)
ほんとうに色彩クリアーですね。
D.G.もツェルリーナも衣装が白なのが、面白いです。レポレッロもドレスアップ?
ベルガンサのあのびっくり顔は演技じゃないんですねー。
今回のMETのは、若くて不良っぽいプレイボーイと小娘のツェルリーナ。
若かったのは、レポレッロもドン・オッターヴィオもドンナ・アンナもでした。
by なつ (2006-06-23 23:52)
euridiceさん、なつさん、きれいでしょう。これがイタリアなんですよね。
イタリアにいるときに、日本映画、大島渚のだったかな、を見て、全体に黄色がかって、色彩に透明感がないのにショックを受けた記憶があります。
これだけ素晴しい色彩の映画が、なぜか日本では○○がDVDを発売していて、無惨な画質に変身してます。
>ベルガンサのあのびっくり顔は演技じゃないんですねー。
映画では落ちたところは上からマゼットが見ているという設定なんですよ。撮影現場では、このあとスタッフが10人くらいかけよって起こしてました。ライモンディは楽しそうに笑ってますよね。
>D.G.もツェルリーナも衣装が白なのが、面白いです
ロージー監督によれば、
マザッチョ作品の色彩を念頭に置いて、衣装をできるだけくすんだ落ち着きのある色合いにして、屋外の光線の参考にしたのがジョルジオーネの絵。数学的なパラーディオ建築と調和させるために、衣装もみなシンプルなデザインで数学的にしたそうです。
なつさんは絵画は専門でしたよね、ピンときますか?
by keyaki (2006-06-24 00:39)
>マザッチョ作品の色彩を念頭に置いて、衣装をできるだけくすんだ落ち着きのある色合いにして、屋外の光線の参考にしたのがジョルジオーネの絵。数学的なパラーディオ建築と調和させるために、衣装もみなシンプルなデザインで数学的にしたそうです。
フィレンツェのスクロヴェーニ礼拝堂のマザッチョのフレスコ画を見て、なんというか他の画家の出せない色を出す人だと思いました(修復の結果とか様々な要素が絡んでいるのでしょうが…)
確かに鮮やかなのですが、けしてどぎつくなく、どこかくすんでいる…そんな色合い。
またマザッチョは完璧な遠近法を用いたことでも有名ですよね。パッラーディオの建築といい、ロージー監督の美術設計の意図が気になるところです。
DVDを買うなら、輸入版がよいのですね?
ジョゼフ・ロージーという人に関しては、私はあまりよく知らないのですが、赤狩りでヨーロッパに逃れた監督の一人でしたっけ…?
BSで『エヴァの匂い』というジャンヌ・モロー主演で、ヴェネツィアを舞台にした白黒映画を見たことがあります。ロージーは"イタリアに魅せられたアメリカ人"ということでしょうか。
by なつ (2006-06-25 16:02)
なつさん
>DVDを買うなら、輸入版がよいのですね?
そうなんですよ、ぜんぜん違います。
>ロージーは"イタリアに魅せられたアメリカ人"ということでしょうか
ロージーは、戦前にヨーロッパを旅行したときは、信念としてムッソリーニのイタリアには行かなかったそうですが、1951年かな、映画制作のためローマに招かれて、(というか危なくなったので、アメリカから脱出するつもり)、その時イタリアの素晴しさに震撼したそうです。このときから、トスカーナとヴェニスを熱愛している、と語っています。
結局、赤狩りでイギリスに移り住んだのですが、ブラックリストにのせられて、10年位は、イタリアに入国するたびに、強制退去させられて、大変な思いをしたようです。
by keyaki (2006-06-26 01:51)
>"イタリアに魅せられたアメリカ人"
!!…これってふるってますねえ(笑)。そう言われてみると、確かにそんなところがあるのかも知れない。
▼《拳銃を売る男》(STRANGER ON THE PROWL : IMBARCO A MEZZANOTTE, 1952)
アメリカを追われたロージーが欧州で初めて撮ったフィルム。舞台は戦争直後の荒廃したジェノヴァの下町。拳銃の取引で糊口をしのいでいる男ポール・ミュニが食料品店の女主人を誤殺。同じ店でたまたま牛乳を盗もうとしていた少年を伴い、地下水道へ逃げ込む…。迷路のような地下水道内の場面。最後に追い詰められた男は建物の屋根へ逃れ、追っ手と群衆が下からこれを見上げ、男が上から見下ろしている。この見上げる視線と上からの俯瞰を交錯させたアンリ・アルカンの見事なキャメラ。イタリアのネオ・レアリズモの直撃を喰らったロージー初期の知られざる傑作。ただしロージーが本名を使えなかったためクレジットはプロデューサーの "Andrea Forzano"名義になってます。
▼《エヴァの匂い》(1962)
自作小説の映画化がヴェネツィア映画祭で大成功、イタリア人美人女優ヴィルナ・リージと婚約して有頂天のアイルランド人作家スタンリー・ベイカーが一夜トルチェロ島の別荘に帰ってみると、妙なフランス女ジャンヌ・モローが勝手に上がり込んで、ビリー・ホリデイの「Willow weep for me」のレコードを掛けながら風呂に入っている。作家は次第にこの神秘的な女にのめり込み、破滅の道を歩んでいく。ミシェル・ルグランによるヴェネツィアとジャズとの幸福な結婚。
▼《夕なぎ》 (1968)
ナポリ近辺の孤島に隠棲する大富豪未亡人リズ・テイラーは《エヴァの匂い》のジャンヌ・モローの成りの果てか、あるいは《唇からナイフ》でアラブの石油成金からダイヤを贈られたモニカ・ヴィッティのその後か?…、いづれにせよ《唇からナイフ》で盗賊ダーク・ボガートが拠点にしていた孤島と同じところだね。重病でこの一夏を越せそうにない彼女の孤島に詩人リチャード・バートンがふらりとやって来る。実は、この詩人は死の使者で、彼女を死の世界に導く。
▼秘密の儀式》 (1968)
これはイタリアとは全然関係のないフィルムですが、後半の舞台に使われるドーヴァー海峡の避暑地が、同年ルキノ・ヴィスコンティが撮った《ヴェニスの死す》の、ちっともイタリア的でないあの陰鬱なヴェネツィアとなんと似ていることか!…。
そう、ヴィスコンティが北イタリアの大貴族の出ならロージーはウィスコシン州の裕福なブルジョワ家庭の出。両者とも若くして共産主義の洗礼を受け、ジャン・ルノワールの影響下にヴィスコンティがイタリアでネオ・レアリズモを先鞭をつけるや、ロージーも伊ネオ・レアリズモの直撃を喰らったようなフィルムを撮る。ロージーが舞台演出家としてスタートしたなら、ヴィスコンティは1950年代さかんにオペラ演出に手を出す。年を取るに従い耽美的傾向を強める二人。…とヴィスコンティとロージーの軌跡というのがなんとも似てるんですよ。奇しくも二人は同年に《ヴェニスに死す》と《秘密の儀式》という似たようなフィルムを撮ってる。ちなみに《ヴェニスに死す》の主役ダーク・ボガートはそもそもロージーが発掘した人で(《眠れる虎》1954)、以後ロージー映画の常連になってきた人です。
▼《ガリレオ》(1975)
ルネッサンス時代のフィレンツェが舞台。ロージーが若い頃アメリカ西海岸初演を演出したブレヒトの戯曲《ガリレイの生涯》の映画化…というより、舞台演出そのものを素材に使ったフィルム。よく見ると判りますが、ただ単なる舞台中継ではありません。
そして
▼《ドン・ジョヴァンニ》(1979)
と来るわけ。
以上詳しくは:
>サイトCineKen2「追悼ジョゼフ・ロージー全作品」↓
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_losey/cineken2_losey.html
>「村田憲一郎」HP "euro_jazz"シリーズより↓
http://magicdragon-hp.hp.infoseek.co.jp/MK/euro_jazz/euro_jazz12/eurojazz_12.html
CineKen2=きのけん
by coneKen2 (2006-06-26 09:31)
サイト「CineKen2」の関連箇所に keyakiさんの《OPERA-FILM《ドン・ジョヴァンニ》》関連記事5本+コメントへのリンクを貼っておきました。
リンクの場所は
1/「CineKen2-FORUM」(掲示板)アーカイヴ 10 (No. 901-1000) の No. 941-942-943
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/forum0604.html#941
2/「CineKen 2版:ジョゼフ・ロージー全集 (1909-84)」内の「1979《ドン・ジョヴァンニ》」のコメント末で、メニュー・フレーム(左側のフレーム)の「1979《ドン・ジョヴァンニ》」の直ぐ下の「>ブログ「keyakiのメモ、メモ.........へ」をクリックすると中央のフレームにリンク表が表示され、keyakiブログ各記事へ飛ぶようになってます。
ロージー全作品ページ表紙へは↑から、リンク表へは↓から
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_losey/losey_last.html#keyaki
以上、ご確認ください。
CineKen2=きのけん
by CineKen2=きのけん (2006-06-26 17:50)
きのけんさん、
かっこよくリンクしていただいて、恐縮です。ありがとうございます。
《拳銃を売る男》と《エヴァの匂い》の間が10年あいてますが、この時、イタリアに入国するとすぐに捕まって強制退去させられた時期なんでしょうね。
《ガリレオ》は、パドヴァで撮影したとか、ヴィチェンツァとヴェネツィアのすぐ近くですよね。
by keyaki (2006-06-27 01:17)
この10年間にロージーは英国で大活躍してます。ただ、《眠れる虎》なんちゅう傑作が日本未公開なんてのがいとも不思議なんですが…。
ロージーをさかんに持ち上げたのはエリック・ロメールが編集長をやっていた時代の仏《カイエ・デュ・シネマ》誌なんです。ゴダール、トリュフォー、シャブロル、ロメールなんかがさんざん入れ上げたわけよ。それでフランスでの活躍がスタートしたというわけです。
《ガリレオ》はほぼ全部舞台中継みたいなフィルムなんで、外にロケした箇所なんてあったかな?…。
CineKen2=きのけん
by CineKen2=きのけん (2006-06-27 16:58)
つい数日前小平市の市立図書館へ行ったら、こんなのを発見。こんな本の邦訳が出てたなんてビックリ仰天!。早速借りてきました。原題 "Le Livre de Losey"(ロージーの本)がなんか、すごい仰々しい邦題になってるんだよねえ(笑)。これ、3年前にパリのシネマテークでロージーの全作品回顧上映を追っ掛けた時、まだロージー関係のリファレンス、決定版として通用してました。
ミシェル・シュマン=著、中田秀夫+志水賢=訳
『追放された魂の物語・映画監督ジョセフ・ロージー』(日本テレビ放送網株式会社、1996、525 p)
著者のインタビューに答える形でロージーが自身の一生を振り返るという体裁のロージー自伝で、500頁以上に及ぶ大部の代物です。原著が出版されたのが 1979年だから、この時点でのロージーの最新作が《ドン・ジョヴァンニ》…というわけで、「第九章・《暗殺者のメロディー》から《鱒》まで、1970年代」章でこの映画について約10頁にわたり著者の質問に答えてます。
「ライモンディは見事の一言に尽きる」(p. 446)
ただし、R・Rは本書では一貫して「ルゲーロ」と表示されてます。邦訳は、現在では監督として国際的に有名になっちゃってる《リング》の中田秀夫で、彼はロージーについてのドキュメンタリー映画も撮ってますが、この時点ではにっかつロマンポルノの助監督出身の監督だったから、訳者紹介のフィルモグラフィーでは《女教師日記・禁じられた性》だとか《マル秘・盗撮ナンパ道》しか掲げてないんだよね(爆)。
でも、ロージーなんか扱うには英語の他に、ロシア語、仏語、イタリア語もちょっとはできないと、「ルゲーロ」になったり、パドーヴァが「パジュア」になっちゃう。でも、「訳者あとがき」によると、原著者からオリジナル・テープ(英語)を借りて参照したなんて書いてあるけど、どうも英訳本だけを使ったみたいね。テープを聞いていたら、固有名詞の読み方くらいはわかるでしょ。
きのけん
by きのけん (2007-11-10 09:29)
きのけんさん、この本ときのけんさんのロージーのサイトは、私のネタというかバイブルみたいなものです。
中田秀夫って《リング》の監督なんですか。私は、こういうホラーはダメですが、TVで放送したのをちらっと見ましたが、二度とみようとは思いません...だからぁ貞子ってなんなのさぁ....です。
まったく「ルゲーロ」には恐れ入ります。出版社も知識がなさすぎ....
人名をどう日本語で表記するかは、出版する側にとっては、重要なことだとおもいますけど、そうでもないのかしら。
ルッジェーロかルッジェロかそれが問題だ!ならわかりますが、ゲロゲロでは、穴に入っていただきたいですね。
どこかでお会いになったら、言ってやって下さいね。(笑
by keyaki (2007-11-10 12:15)
>keyakiさん、
>きのけんさんのロージーのサイトは、私のネタというかバイブルみたいなものです
…そんなあ!、困りますよ。あれはねえ…。サイトを立ち上げたはいいんですが、コンテンツなんか何も入ってないもんで、恥ずかしいから、当時パリのシネマテークでたまたま全作品回顧上映をやっていたロージーを、よしっ全部見てやれ…なんて、なにせすごい大成功で全サイクルがなんと4度も組まれちゃったもんで(2回の予定が追加2回!)…4回も再映してくれたら、なんとか全部見れるよね…というわけで大急ぎでコメントを入れたもんなんで、もうかなり不十分だと思ってるんですよねえ…。
そうそう、《ドン・ジョヴァンニ》を最終回に組みやがって、夜の10時なんかに始められちゃったら、地下鉄の終電に全然間に合わないんだよね。映写技師が友人だったんで「なんだ、バカヤロ!」って言ったら、オレは自転車だからいいんだ、なんてヌかしやがる!。じゃあ、途中まで乗せてけ…なんて、タクシー代を倹約して途中から歩いて帰りました。
きのけん
by きのけん (2007-11-13 08:37)
>「ルゲーロ」
(笑)…ところが、フランスでは時々これがあるんですよ。オリジナルのテープで著者がこう発音してたのかもよ?…。僕の友人のオオペラ評論家でジャック・ブルジョワさんというフランスのオペラ評論界の第一人者みたいな人がいるんですが、どういうわけだか彼がイタリア語の gi, ge…を必ずドイツ風に発音しちゃうんだよね。ヴェルディなんか「ギュゼッペ」なんて言うから、そうじゃないでしょう…なんて注意したって、意地はって直さないんだか、もう惚けてて忘れちゃうんだか、絶対に直らないんだよね。それでいてプッチーニはちゃんと「ジャコモ」って言うからおかしいんですが、そうそう、彼も「ルゲーロ」って言ってたなあ…。ああいう爺さんになると間違いだって何だって一度発音を暗記しちゃうと、もう治らないのかもね?(笑)。
いや、最初彼があまり頑固なもんで、ひょっとしたらかつてのオーストリア=ハンガリー帝国領だったロンバルディア方言ではこういう発音になるのかな?…なんて思ったりして(笑)。イタリア人の友人に訊いたら、そんなことないってちゃんと言ってましたが…。ただ、アクセントが付く場所は方言によって随分異なるそう。
きのけん
by きのけん (2007-11-13 08:58)
きのけんさん、フランス人って、イタリア語の発音、超下手クソですよね、違いますか....
>「ギュゼッペ」
おそらく、ジュセッペって言えないだけですよ。(笑
いえ、いえ、きのけんさんには感謝しています。今でこそ、インターネットで情報が簡単に手に入りますが、映画の「ボリス・ゴドノフ」の情報もレコード芸術のきのけんさんの記事で、はじめて詳細がわかって、感激でした。これも今は、きのけんさんのサイトで見られるので、便利な世の中になったものですよね。
by keyaki (2007-11-14 00:28)