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大聖堂の殺人 ASSASSINIO NELLA CATTEDRALE [大聖堂の殺人]

クリスマスにちなんだオペラということで取り上げてみましたが、R.ライモンディが歌ったというだけで、私もよく知らないオペラです。
オペラ《大聖堂の殺人》は、T・S・エリオットの詩劇"Murder in the Cathedral"、、、、1935年のカンタベリー祝祭のために書き下ろした現代詩劇で、まさに殺人が行なわれた現場で、臨場感たっぷりに上演されたということだが、、、、、この詩劇をイルデブランド・ピッツェッティがオペラ化した。バス歌手のニコラ・ロッシ=レメニのために書かれ、1958年ミラノ・スカラ座で初演された
"one-singer opera"で、上演される機会もあまりなかったようだが、R.ライモンディが2000年3月トリノを皮切りに、2002年パルマ、2003年ローマ(歌劇場のサイトで舞台写真が見られます)と積極的に取り上げた。
R.ライモンディは、2000年トリノの《大聖堂の殺人》上演の功績が認められ、Best Bassを受賞。長男のラファエロが、代理で授賞式に出席。(写真右)

寺院の殺人トマス・ベケット(1118-1170)
1155年ヘンリー2世の大法官、王に協力して内政、戦争の実績をあげ、1162年カンタベリー大司教、64年教会裁判権の制限を意図したクラレンドン法に反対して王と対立、フランスに亡命。ローマに行き、教皇アレクサンデル3世を動かし争いを続行、1170年帰任したが、王の側近の4人の騎士により、カンタベリー聖堂内で殺害された。1173年列聖。

舞台はカンタベリー大聖堂内。ニ幕ものだが10分程度のクリスマスのミサの場面が幕間劇(間奏曲)として挿入される。
一幕
1770年12月2日、大司教トマソ・ベケットが亡命先のフランスからカンタベリーに帰ってくるところから始まる。
7年ぶりの帰郷で、大衆は歓迎するが、カンタベリーの女たちや司祭は、不吉なことが起こるのでは、と不安を感じている。トマソ自身もこの帰国がいかに危険であるかを理解しており、帰国の動機を彼等に語る。
殺されることを予感しているトマソは一人自室にいる。《4人の誘惑者》=《自分自身の思考の化身》が現れ、第四の誘惑者が、トマソに《殉教者》としての運命を選ばせようとする。
間奏曲
ベケット大司教がカンタベリー大聖堂でクリスマスのミサを行う。信者達に説教を行い殉教者の話しをする。
二幕
国王の使者を名乗る《四人の騎士》によって、大司教トマソ・ベケット殺害が実行される。
これで終わりではなく、この《四人の騎士》達が観客に向かって、自分達の正当性を訴え「トマソ・ベケット殺害は、逃げる事もできたのにそれもしないで我々を挑発した結果で仕方のないことだった。彼は精神錯乱の末《自殺》したも同然なのだ」と説明する。
最後に合唱が偉大な神をたたえ「聖トマソよ、私達のために神に祈ってほしい」と歌い幕が降りる。
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写真左:RAIの紹介番組の一部
写真中:1幕:大司教が司祭達の合唱に囲まれて登場「平和の祝福を!......」
写真右:2幕:騎士達がなだれこんでくる。「わが主のために、今喜んで死のう!」 司祭達は大司教を守ろうとするが....


※《大聖堂の殺人》公演記録2000年〜2003年
◇T・S・エリオット Thomas Sterns Eliot (1888-1965)
アメリカに生まれ、のちに英国に帰化した詩人・批評家・劇作家。1948年にノーベル文学賞を受賞。
1939年に発表した子供向けの詩の本" Old Possum's Book of Practical Cats "は、ミュージカル 『キャッツ』 に脚色されて1981年に初演、世界中で親しまれている。

◇Ildebrando Pizzetti (1880-1968)
◇ニコラ・ロッシ=レメニ: Nicola Rossi-Lemeni 1920.11.06-1991.03.12

Pizzetti: Assassinio nella cattedrale※ミラノ・スカラ座1958年3月1日ライブ
ガヴァッツェーニ指揮、ニコラ・ロッシ=レメニ
ドイツ語歌唱のカラヤン盤しか リリースされていませんでしたが、2003年にこのCDが発売されました。ライモンディ効果だと思います。

Pizzetti: Murder in the Cathed※1960年3月9日カラヤン指揮、ウィーン国立歌劇場1960年3月9日ライブ
ハンス・ホッター、ドイツ語歌唱
1998年カラヤンの生誕90周年記念企画としてDGより世界初発売された。


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コメント 6

助六

いつも貴重な音源と映像をありがとうございます。
ピゼッティは通常カゼッラ、マリピエロと並んで両大戦間の「新古典主義」に分類されるけれど、初期にダヌンツィオに触発されてることが示しているように、後期ロマン派的感性も大いにある人だと思います。カラヤンの録音を一部聞いたとき、重めでロマンティックなのは晩年の作品の上独語上演のせいもあるかなと思ったけれど、トリノ上演のクリップ聞いてもやっぱり基本的にそういう方向みたいですね。合唱がコロスのように用いられ、オラトリオ的な性格もあると思います。
50年代のガヴァッツェーニだったら、「新古典主義」と「後期ロマン派の残余」が奇妙に混ざったようなこの音楽の両義性を浮き彫りに出来たかも知れませんね。聞いてみたいです。
フレーニの「フェードラ」、ドミンゴの「イル・グワラニー」、カレーラスの「スライ」とかのようにキャリア末期の名歌手が、「芸」で聞かせるタイプのオペラを復活させることには色々な評価がありうるでしょうが、このオペラが最近復活上演されたのはRRの大きな功績ですね。
by 助六 (2005-12-21 05:17) 

keyaki

助六さん、こちらこそいつもコメントありがとうございます。
無調性っぽい音楽で、ちょっと苦手なんですけど、、、間奏曲は、美しい馴染みやすい旋律ではありますが。ま、好みの歌手が歌えば、なんでも聴いちゃいます、、ということですね。

>キャリア末期の名歌手が、「芸」で聞かせるタイプのオペラを復活させる
キャリアを積んだ、それなりに集客力のある歌手じゃないと興行的にも難しいので、そうなってしまうんでしょうね。
by keyaki (2005-12-21 23:57) 

Sardanapalus

>オペラ《大聖堂の殺人》
ベケットが主人公のオペラですか!全く知りませんでしたけど、トマスじゃなくてイタリア語読みでトマソなのが新鮮な響きです。エリオットの原作とは、また知的な感じですね。
by Sardanapalus (2005-12-22 07:57) 

Bowles

このあたりのイタリア音楽は時代状況とともに関心を持っています。

助六さんのおっしゃっているように、一度は「国民音楽協会」を結成した三人、のちにはピッツェッティがあとの二人を(間接的に)非難して袂を分かつことになるわけですが、このピッツェッティの一種のアナクロニズム、復古主義が、今でもこうして舞台で上演されるオペラの作曲を可能にしたと言えると思います。あとの二人より(カセッラの場合、ファシスト的内容が災いしている面もありますね)、「声」また「イタリア的な旋律」といったものを彼の音楽に感じます。RRが歌うのも、ピッツェッティの音楽に「歌」があるからではないでしょうか。あとこの時代の作曲家では、ダッラピッコラにも同じ「歌」を感じます。RAIが舞台を収録しているのなら、何年かのちにRAI TRADEから発売される可能性はありますね。

そういえば、オトゥールとバートンが主演した『ベケット』なんてありましたね。
by Bowles (2005-12-22 09:56) 

keyaki

Bowlesさん
>オトゥールとバートンが主演した『ベケット』
昔見た事があるのかもしれませんが、記憶にないです。
DVD化もされてないようですね。

オトゥールは「冬のライオン」でもヘンリー2世でしたね。こちらはよく覚えてます。

>RAIが舞台を収録しているのなら、何年かのちにRAI TRADEから発売される可能性はありますね。

ラジオ放送はあったようですが、TVでの放送はなかったようですので、期待薄ですね。
by keyaki (2005-12-23 21:41) 

ミン吉

《大聖堂での殺人》のCDには、もう一種類、ピッツェッティ自らの指揮のものが出ていました。初演と同じ1958年の12月5日のRAIの放送録音で、ベケットはやはりロッシ=レメーニ。
いわゆる、ドラマティックな音楽のオペラではなくて、もっと音楽劇としての性格が強い作品ですね。ベケット役にはとりわけ存在感が必要なわけですが、これは間違いなくライモンディに打ってつけでしょう。CDになるといいですね。
by ミン吉 (2005-12-24 20:07) 

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