大聖堂の殺人 ASSASSINIO NELLA CATTEDRALE [大聖堂の殺人]
クリスマスにちなんだオペラということで取り上げてみましたが、R.ライモンディが歌ったというだけで、私もよく知らないオペラです。
オペラ《大聖堂の殺人》は、T・S・エリオットの詩劇"Murder in the Cathedral"、、、、1935年のカンタベリー祝祭のために書き下ろした現代詩劇で、まさに殺人が行なわれた現場で、臨場感たっぷりに上演されたということだが、、、、、この詩劇をイルデブランド・ピッツェッティがオペラ化した。バス歌手のニコラ・ロッシ=レメニのために書かれ、1958年ミラノ・スカラ座で初演された
"one-singer opera"で、上演される機会もあまりなかったようだが、R.ライモンディが2000年3月トリノを皮切りに、2002年パルマ、2003年ローマ(歌劇場のサイトで舞台写真が見られます)と積極的に取り上げた。
R.ライモンディは、2000年トリノの《大聖堂の殺人》上演の功績が認められ、Best Bassを受賞。長男のラファエロが、代理で授賞式に出席。(写真右)
※《大聖堂の殺人》公演記録2000年〜2003年
◇T・S・エリオット Thomas Sterns Eliot (1888-1965)
アメリカに生まれ、のちに英国に帰化した詩人・批評家・劇作家。1948年にノーベル文学賞を受賞。
1939年に発表した子供向けの詩の本" Old Possum's Book of Practical Cats "は、ミュージカル 『キャッツ』 に脚色されて1981年に初演、世界中で親しまれている。
◇Ildebrando Pizzetti (1880-1968)
◇ニコラ・ロッシ=レメニ: Nicola Rossi-Lemeni 1920.11.06-1991.03.12
※ミラノ・スカラ座1958年3月1日ライブ
ガヴァッツェーニ指揮、ニコラ・ロッシ=レメニ
ドイツ語歌唱のカラヤン盤しか リリースされていませんでしたが、2003年にこのCDが発売されました。ライモンディ効果だと思います。
※1960年3月9日カラヤン指揮、ウィーン国立歌劇場1960年3月9日ライブ
ハンス・ホッター、ドイツ語歌唱
1998年カラヤンの生誕90周年記念企画としてDGより世界初発売された。
いつも貴重な音源と映像をありがとうございます。
ピゼッティは通常カゼッラ、マリピエロと並んで両大戦間の「新古典主義」に分類されるけれど、初期にダヌンツィオに触発されてることが示しているように、後期ロマン派的感性も大いにある人だと思います。カラヤンの録音を一部聞いたとき、重めでロマンティックなのは晩年の作品の上独語上演のせいもあるかなと思ったけれど、トリノ上演のクリップ聞いてもやっぱり基本的にそういう方向みたいですね。合唱がコロスのように用いられ、オラトリオ的な性格もあると思います。
50年代のガヴァッツェーニだったら、「新古典主義」と「後期ロマン派の残余」が奇妙に混ざったようなこの音楽の両義性を浮き彫りに出来たかも知れませんね。聞いてみたいです。
フレーニの「フェードラ」、ドミンゴの「イル・グワラニー」、カレーラスの「スライ」とかのようにキャリア末期の名歌手が、「芸」で聞かせるタイプのオペラを復活させることには色々な評価がありうるでしょうが、このオペラが最近復活上演されたのはRRの大きな功績ですね。
by 助六 (2005-12-21 05:17)
助六さん、こちらこそいつもコメントありがとうございます。
無調性っぽい音楽で、ちょっと苦手なんですけど、、、間奏曲は、美しい馴染みやすい旋律ではありますが。ま、好みの歌手が歌えば、なんでも聴いちゃいます、、ということですね。
>キャリア末期の名歌手が、「芸」で聞かせるタイプのオペラを復活させる
キャリアを積んだ、それなりに集客力のある歌手じゃないと興行的にも難しいので、そうなってしまうんでしょうね。
by keyaki (2005-12-21 23:57)
>オペラ《大聖堂の殺人》
ベケットが主人公のオペラですか!全く知りませんでしたけど、トマスじゃなくてイタリア語読みでトマソなのが新鮮な響きです。エリオットの原作とは、また知的な感じですね。
by Sardanapalus (2005-12-22 07:57)
このあたりのイタリア音楽は時代状況とともに関心を持っています。
助六さんのおっしゃっているように、一度は「国民音楽協会」を結成した三人、のちにはピッツェッティがあとの二人を(間接的に)非難して袂を分かつことになるわけですが、このピッツェッティの一種のアナクロニズム、復古主義が、今でもこうして舞台で上演されるオペラの作曲を可能にしたと言えると思います。あとの二人より(カセッラの場合、ファシスト的内容が災いしている面もありますね)、「声」また「イタリア的な旋律」といったものを彼の音楽に感じます。RRが歌うのも、ピッツェッティの音楽に「歌」があるからではないでしょうか。あとこの時代の作曲家では、ダッラピッコラにも同じ「歌」を感じます。RAIが舞台を収録しているのなら、何年かのちにRAI TRADEから発売される可能性はありますね。
そういえば、オトゥールとバートンが主演した『ベケット』なんてありましたね。
by Bowles (2005-12-22 09:56)
Bowlesさん
>オトゥールとバートンが主演した『ベケット』
昔見た事があるのかもしれませんが、記憶にないです。
DVD化もされてないようですね。
オトゥールは「冬のライオン」でもヘンリー2世でしたね。こちらはよく覚えてます。
>RAIが舞台を収録しているのなら、何年かのちにRAI TRADEから発売される可能性はありますね。
ラジオ放送はあったようですが、TVでの放送はなかったようですので、期待薄ですね。
by keyaki (2005-12-23 21:41)
《大聖堂での殺人》のCDには、もう一種類、ピッツェッティ自らの指揮のものが出ていました。初演と同じ1958年の12月5日のRAIの放送録音で、ベケットはやはりロッシ=レメーニ。
いわゆる、ドラマティックな音楽のオペラではなくて、もっと音楽劇としての性格が強い作品ですね。ベケット役にはとりわけ存在感が必要なわけですが、これは間違いなくライモンディに打ってつけでしょう。CDになるといいですね。
by ミン吉 (2005-12-24 20:07)