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《ボリス・ゴドノフ》のワルラーム(乞食僧) [ボリス・ゴドノフ]

 R.ライモンディは、当たり役の一つボリスを1972年30才で歌っていますが、1980年ミラノ・スカラ座開幕公演の「ボリス・ゴドノフ」では、乞食僧ワルラームを歌っています。後にも先にもこれこの時だけです。(写真左:その時のライブCD)
 ワルラームがメインの居酒屋の場面は、《ボリス・ゴドノフ》にもこんなに面白可笑しい場面があるんだ・・というような愉快なものです。ライモンディのワルラームではありませんが、1980年パリ・オペラ座公演のその場面をご紹介します。ワルラームとミサイルの二人組は、《ファルスタッフ》のピストーラとバドルフォと同じノッポとチビのコンビなんですね。

 こっそりとロシアの年代記を書いている高僧ピーメン、そのかたわらにいた見習い僧グレゴリーにボリスによる皇子ディミトリー暗殺の一件をふともらしてしまう。(当時は、年代記を書く事が禁止されていた)
 そこで、グレゴリーは自分がディミトリーになりすまして一旗揚げる事を思いつきモスクワの僧院を飛び出す。

1幕2 場:リトアニアとの国境に近い居酒屋の場面
 グレゴリーと乞食僧ワルラームとミサイルが、居酒屋にやって来る。気持ちよく酔っぱらって陽気になったワルラームは、「カザンの町でイワン雷帝は酒宴をはり.....ダッタン人は、焼き殺された、なんとその数四万三千人、これがカザンの大殺戮....」とイワン雷帝のカザン襲撃を面白おかしく歌う。(左上ビデオクリップ)
 その頃すでにグレゴリーの逮捕状が出され、役人達が、居酒屋にも捜索に来る。逮捕令状には、グレゴリーの人相が事細かく書いてあるが、役人達は字が読めないので目の前にいる若者がグレゴリーだとは気づかない。
 役人は、乞食層ワルラームに、「お前がグレゴリーだろう、逮捕する」といいがかりをつけるが、ワルラームは暴れて役人を突き飛ばす。
 その時グレゴリーは、咄嗟の気転で自分は字が読めるから、その逮捕状を読もうといいだし、「年はおよそ50才、太鼓腹で、赤鼻....」などとワルラームそっくりの内容に変えて読み上げる。そこで、役人はワルラームを逮捕しようとするが、ワルラームは、「字ぐらい読んでやる! つづりだけなら俺にも読めるぞ、読んでやる、ぬれぎぬかぶるくらいなら....」と必死で人相書きをたどたどしく読み上げる。
「か・れ・の・ね・ん・れ・い・は、はたち! 背・の・高さ・は・中・ぐらい・で、う・で・の・長さは・左・短く、か・み・は・赤く、鼻の上にイボが....」とその人相は、グレゴリーそのものだった。「おまえじゃん!」と叫ぶワルラームを尻目にグレゴリーは、あっという間に逃げる。(右上ビデオクリップ)

※1980年、パリ・オペラ座、ライチェフ指揮、ロージー演出《ボリス・ゴドノフ》キャスト詳細

※参考:1980年ミラノ・スカラ座公演、アバド指揮、リュビーモフ演出《ボリス・ゴドノフ》キャスト詳細
※関連記事:2005-06-04オペラの演出(ジョセフ・ロージー監督)
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TARO

おまえじゃん!・・・って(笑
最近、ピーメンという名前を見るとバーコードしか浮かんでこなくて困っています。
by TARO (2005-12-18 21:11) 

euridice

ここのとこ、可笑しいですね。
いかにも必死って感じで読んでくれないと興醒めですけど・・・
by euridice (2005-12-19 07:52) 

Sardanapalus

楽しい場面の映像をありがとうございます。

>「おまえじゃん!」
ふふふ、この字幕上手いですね。オペラ映像は、こういう楽しめる字幕ばかりじゃないのが悲しいところ…。
by Sardanapalus (2005-12-19 09:41) 

ヴァラリン

TAROさん…
>ピーメンという名前を見るとバーコード
ニコニコ(⌒ー⌒ )。。oO("o( ∇ |||)プルプル)
いえ、いいんですのよ。誰にでもできることではないですからねっ。

それはさておき、この居酒屋の場面は私も大好きです^^
それと、この映像の字幕は本当にうまいですよね。
by ヴァラリン (2005-12-19 12:12) 

keyaki

みなさん、コメントありがとうございます。

>「おまえじゃん!」
これ、いいですよね。訳者は、横浜出身かしらね!
この場面は、どことは書いてないのですが、意訳してます、、、と説明がありました。こういうことが書いてあること自体めずらしいかもですね。
また、このワルラームの歌手さんの表情が愉快なんです。小さくてよくみえないのが残念ですが。

ヴァラリン さん
あのあり得ない「謎の場面」の情報、首を長くして待ってます。
by keyaki (2005-12-19 22:18) 

しま

はじめまして。しまと申します。いきなり過去記事へのコメントですみません。

エルネスト・ブランクが出演している『ボリス・ゴドノフ』の映像のことを調べていたのですが、ライモンディがボリスということで、keyakiさんのブログとサイトを思い出しました。(以前からROMさせていただいていました)
謎に包まれていた詳細が一気にわかり、とても感謝しています。

勝手ながら、サイトとブログの記事にリンクをさせていただきました。
問題があるようでしたら外しますので仰ってください。

それでは、これからもROMさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
by しま (2007-06-10 11:15) 

keyaki

いらっしゃいませ。しまさんのブログには、いろいろなところを経由して密かにお邪魔してました。
ブラン先生がボリスってことはないでしょうから、怪僧ランゴーニかしら...さっそく記事を読みに行かなくては.....リンクありがとうございます。
by keyaki (2007-06-10 12:26) 

しま

keyakiさん、ありがとうございます。

>密かにお邪魔してました
あわわ、そうだったのですか。今のうちにお下品な記事を隠しておこうと思ったのですが、後の祭りでございました・・・;;;

金の玉を持つブランの姿に感激しました。いつも声を聴くだけで、衣装をつけて舞台に立っているのを見たことがなかったものですから。
それと、ライモンディ、かなり若いですが、この演出だとなんかすごいハマっていてちょっと驚いてしまいました。
無知なもので、「ライモンディがボリス?」と初めは意外だったのですが、当たり役だったんですね。

『ボリス』のショスタコーヴィッチ版も聴いたことがなかったので、とても興味深かったです。
by しま (2007-06-10 23:32) 

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