SSブログ

舞台人R.ライモンディ (2)ファジョーニとの出会い [オペラの演出]

  ファジョーニには、すごい特技がある。いわゆる舞台人をみつけることができるのだ。彼は歌手が好きだし、俳優も好きだ。だから、彼の俳優全員から、個々人の性質に合った表情や所作を引き出す方法がわかっている・・・ 
  ファジョーニは、ライモンディに初めて出会ったとき、彼の感傷的多感さ、ものを感じる能力、詩情に満ちた感覚、つまり、詩的なセンスを把握しようとした。こういう感性がこの歌手のぎこちなさの裏に隠れていると感じたからだ。そして、そのときは声にしか現れていなかった感情を、目に見える外へ出すように、一歩一歩指導した。

  なによりもまず最初に、彼自身の大きさを受け入れさせた。彼は青春時代からずっとこの「問題」に悩んでいた。だから、よけいにどっしりと見えてしまう舞台衣装のことでも嫌な気分を味わっていた。彼はファジョーニと共に、自分の身体を利用すること、自分の姿勢で生きることを学んだ。
そして、あっという間に感情のないロボットが生命を得て、非常に優れた演奏を伴った役者が姿を現したが、当時は大げさだと感じた人もいた。
ライモンディ自身の語るファジョーニ:
   「グノーのファウストを演出している間、ファジョーニは私のためらいを取り除いてくれた。身体的にも心理的にも緊張せずにリラックスするようにしてくれた。」
Ankenbrand著-Ruggero Raimondi Mensch und Maske-※オペラ好きの友人訳
※身長6'6"(198センチ)
  フェニーチェ座でライモンディと一緒に初めて仕事をしたのは、《イェルザレム》と《ファルスタッフ》の小さな役だった。直ぐ後に初めての大役「ファウスト」のメフィストフェレが続くのだが。1965年の5月から1966年の2月までの数ヶ月の非常に厳しい仕事によって、我々は意気投合した。 ルッジェーロは24才、私は28才という若さも手伝って、それぞれのポジションを楽しんだ。決して我々の間には意見の隔たりとか相違又は、対抗意識は存在せず、我々の可能性の発見に対する愉快な競争において兄弟のような同志的な繋がりがあった。
  このような若者同士の関係なくして、決して《ボリス・ゴドノフ》や《ドン・キショット》のようなオペラで到達した完成度の高い結果を達成することはできなかっただろう。
  この当時のライモンディは、舞台での天分ともいえる歌唱力、声の表現力と威力、それに反して、あの肉体的に不十分なコントロールのコントラストによって、強く印象づけられた。事実、彼は、運動競技と様々なスポーツの実践の経験が充分にあったが、自然な動きができなかった。彼の背の高さはともかく、舞台でのある程度の自然な動きよりも、彼の非常な内気さが優位に立ち、彼の身体を緊張させた。結局、すばらしい声であったが、対立する身体の虜だった。
  時々、非常に難しい音楽のパッセージで、ルッジェーロにこの敵対行動が身体の動き、たとえば、ゆっくりと剣を鞘から抜いたりするような初歩的な仕草までも不自然にした。
-次に続く- Leone Magiera著"RUGGERO RAIMONDI"《ファジョーニの序文》より

※関連記事:オペラの演出(ピエロ・ファジョーニ/ドン・キショット)


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 1

euridice

かつては動きがぎこちなかっただったなんて想像もできません。人間、良い「教師」との出会いは宝ですね。
by euridice (2005-11-16 08:06) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。