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RRのエピソード:声楽授業(18)ボローニャ音楽院-7- [ L.Magiera著:RR]

9月10日の記事の続き。
1964年ボローニャ音楽院での勉強も3年目、ルッジェーロ(22才)は、音楽院の発表会でドン・ジョヴァンニのセレナータ" De vieni alla finestra "グノーのファウストの"Tu che fai l'addormentata"を歌うことになった。
(私=レオーネ・マジエラ)

《ボローニャ音楽院でのデビュー》
G.B.Martini音楽院では、5月という月は、ひどく興奮した雰囲気で始まった。テアトロ・コムナーレでの発表会の日が迫って来ていた。選ばれた若者達すなわち音楽院の花形は、先生と監督によって、愛情を込めて指導され、おまけに、幸運でなかったクラスの仲間の同志的熱狂によって見守られた。もちろん、彼等も音楽院内にあるホール、サラ・ボッシのいつもの気楽な雰囲気の中で発表会をすることになるのだが、、。

私達のクラスにルチアーノ・ロサーダが度々やって来た。彼は、イタリア中で評価の高い指揮者というだけでなく、スカラ座のバレエ団の常任指揮者だった。そして、また音楽院で、オーケストラの指導の教授でもあったし、生徒達と劇場のオーケストラを一緒にした混成のオーケーストラの監督指揮も彼の任務であった。

ロサーダは、ルッジェーロを聴くために初めて来たとき、オーケストラの指揮者達が、若くて未経験な歌手達に対して持つ一般的な不安感を持っているように感じたことを私は言っておく必要がある。彼は、遠く離れたところにいて、彼のヴェネト地方独特の口調で愛想よく感謝の気持ちを述べたが、ドン・ジョヴァンニのセレナータの伴奏に優秀なマンドリン奏者をなかなか見つけられないことについて、ブツブツ文句を言いはじめた。彼が、プログラムからオペラの曲を取り止めた方が良い望んでいるのではないかという印象を私に与えた。

「私は、今朝、マンドリンの練習を聴いたが、、」とロサーダは、口を開いた。「私は、彼等が、楽器を演奏しているというよりは、引っ掻いているようにしか思えなかったね。私達は、どこでこの青年の身長に見合った"高さ"のマンドリン奏者を見つけることがでるのかな?」彼は,ルッジェーロの背の高さをじっと見つめて、軽く冗談めかして言った。
※注)ルッジェーロの背の高さ(198センチ)とマンドリン奏者のレベルの高さをかけた駄?洒落、、のようです

私は、昔の有名な指揮者、Gino Neriにちなんで名前を付けた、フェッラーラのマンドリン合奏団に尋ねるように提案した。これ以上彼の不満の相手をしたくなかったので、直ちに学生のオーディションを始めるように申し出た。

ルッジェーロも、恐らく自分の立場を理解していたが、彼もまたロサーダの不平不満のおしゃべりから逃れたいと思っていたようだった。それでも、彼は、冷静で落ち着いていた。そして、私のピアノ伴奏で、彼は二つのアリアをすばらしくみごとに歌った。

歌い終わるとすぐに、指揮者の態度が、一変した。
「すばらしい、この青年は。ほんのわずかなミスもなかったし、その上なんと美しい声! 我々は成功間違いなし、、、だね」
「それで、マンドリンは?マエストロ」ルッジェーロは皮肉な調子で尋ねた。
「ああ、君が心配することはないです。私達が探しますから。君は、冷気を吸い込まないように注意して、いつも今歌ったように歌いなさい。」
彼が行ってしまうとすぐに、ルッジェーロは、「感じが良い人ですが、ちょっと辛辣ですね。あの指揮者は」とロサーダのアクセントを完璧にまねして、コメントした。
「そうだね、だけど君は、本当に素晴しかったし、君は、あっという間に評価を一変させた。」
ロサーダは、リハーサルをするために度々戻った。特に彼に関心を寄せて、いくつかの楽想について質問したが、ルッジェーロは、直ちに、臨機応変すばらしく柔軟に答えた。
ついにオーケストラリハーサルの日がやって来た。

すでに、音楽院のレベルで、器楽奏者と歌手の間の奇妙な壁が存在した。前者は、後者が音楽に関して無知であると確信していた、、、続く

※Luciano Rosada 1923.02.19- [イタリア]指揮者
※Ochestra a Plettro GINO NERI :フェッラーラの有名なマンドリン合奏団

注)写真は本文とは関係ありません。クリックするとギュンター・レンネルト演出のドン・ジョヴァンニの舞台写真が見られます。


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