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オペラの演出(アバド&ジョルジョ・ストレーレル) [オペラの演出]

ジョルジョ・ストレーレル(Giorgio Strehler 1921-1997)
ヴィスコンティ亡きあとのイタリアが誇る名演出家。ミラノ・ピッコロ座の創立者の一人として知られ、一方、オペラの演出も1947年スカラ座の「椿姫」を皮切りに数々の名舞台を残した。1971年12月、ミラノ・スカラ座のシーズン開幕公演のアバド指揮、ストレーレル演出『シモン・ボッカネグラ』は、特に有名である。RRは、1973年12月の再演時にフィエスコを歌い、その後もアバド指揮、ストレーレル演出で、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場で歌った。


『シモン・ボッカネグラ』は、複雑で分かりづらい内容のオペラであるが、ストレーレルの演出は、「ヴェルディの政治ドラマ」と解釈し、政治に関わる人間とその人間的苦悩をシモンを通し、切々と訴えた。奇をてらうことのないわかり易い演出、簡素で美しい舞台で、人間の心理を、人間の真実を描いた。
オペラの演出に対して、ストレーレル次のように述べている。
「作者と作曲家が、総譜に書いたすべてを描き出せるような演出は存在しない。出来ることは、彼等が書いた当時、言おうとしたことを単に理解するだけでなく、今日生きている我々の感覚に訴え、共感するものを見出し、その作品に描かれている真実に少しでも近づくこと。これが古典を同時代の作品にする鍵だ。

ついでの話:
二月末のCagliariでの「ドン・ジョヴァンニ」は、ストレーレル演出の再演で話題になりました。その時のインタビューで、RRは、ストレーレル演出の「シモン・ボッカネグラ」の成功後、80年に、ストレーレルに「ファルスタッフ」をやるように提案された。彼の演出には非常に興味を持ったが、その時はまだ、完璧に準備ができていなかったので、申し出にに添えなくて残念だった・・・と話しています。

Verdi: Simon Boccanegra 参考)1984年ウィーン国立歌劇場ライブCD、その他の「シモン」のCD
    アバド指揮の公演一覧
   1981年ミラノ・スカラ座来日公演でも上演された。

※ビデオクリップ:ウィーン国立歌劇場「シモン・ボッカネグラ」リハーサル(ブルゾン、リッチャレッリ、カレーラス、アバド、ストレーレル)
★ ストレーレルのオペラの演出に対する部分のPDF:Yahoo ブリーフケースストレーレル,オペラの演出
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TARO

このストレーレル/アバドの舞台は来日公演でみました。いまもって私の全オペラ体験のナンバーワンです。(フレーニ、カップッチッリ、ルケッティ、ギャウロフ、アバド指揮)

>80年に、ストレーレルに「ファルスタッフ」をやるように提案された。

これはスカラ座でマゼール指揮で上演された時のでしょうか?ポンスが歌った。
by TARO (2005-05-27 23:41) 

keyaki

そうですね、ポンスが歌ってますね、ずーっと。
その後、カンヌでストレーレルに会った時も「どうしてやらなかったのかな」といらついた感じで言われたそうですけど、「キャラクターの完全な解釈ができないと歌えない」と説明したら、理解してくれたそうです。

アバドは、シモン・ボッカネグラは、ずーっとストレーレルの演出でやってましたが、2002年でしたか、フィレンツェ5月音楽祭では、新演出でやりましたね。
ストレーレルのは、パリ・オペラ座のDVDがありますが、画質がちょっとですよね。
最高のキャストの来日公演だったんですね。

ペーター・ホフマンもストレーレルの演出でローエングリンを歌ってるんですね。どんな演出だったんでしょうね。
by keyaki (2005-05-28 01:32) 

euridice

>ペーター・ホフマンも
1981年と1983年にミラノ、スカラ座のローエングリンに出演してますが、伝記には「前の年にはミラノのスカラ座に『ローエングリン』でデビューした」としか書いてありません。共演者や詳細な公演日などは、アバドのサイトの管理人さんのお陰でわかりますね^^;

この演出、プレミエはルネ・コロですが、演出家と意見が合わないという理由で突然キャンセル、荷物をまとめて帰ってしまったといういわくつきのようです。上記サイトによると、二日目と三日目は、ジークフリート・イェルザレム、残りの五日間をP.ホフマンが担当しています。1983年は全公演、P.ホフマンです。

残念なことに、どんな演出だったのかわかりません。
by euridice (2005-05-28 07:34) 

keyaki

>演出家と意見が合わないという理由で
ということは、ストレーレルと合わなかったということですね。
んんー、ルネ・コロがどういうタイプの歌手かわかりませんが、今は、過激な新演出も一緒にノリまくっているようですから・・・
ひどい演出なら、ホフマンがなにか書いているはずですよね。
「演出」が受け入れられないんじゃなくて、「演出家」がダメって・・・まあ、たしかにストレーレルはうるさそうですね。
by keyaki (2005-05-28 09:37) 

TARO

ストレーレルの「シモン」は、全幕とも紗幕をおろした状態で上演されるため、普通のTVカメラでは追いきれないようですね。
81年にNHKが中継した時には、超高感度のカメラを使用したことで話題になりました。それでも(それだから?)画質は良くなかったです。

オペラ演出の極致とまでよばれた舞台なので、できればシェロー・リングのように客席を空にした状態で、紗幕をはずし映像収録してほしかったなと思います。スカラでもウィーンでもかまわないですが。

フィレンツェ5月祭のはDVDになってるやつですね。その前にザルツブルク復活祭で上演したペーター・シュタイン演出のプロダクションをそのまま移行したものですね。
by TARO (2005-05-28 10:04) 

keyaki

>全幕とも紗幕をおろした状態で上演

紗幕は、撮影のないときでも観客側ではなしにしてほしいという意見もあるようですね。
チューリッヒのドン・キショットで、ゲネプロを見たファンの方が言ってましたけど、演出家にはこだわりがあるので、絶対はずさないようですね。

そうなんですか、すでにザルツでやってたわけですね。カリタ・マッティラが、古風でないアメリアで、なかなかよかったです。
by keyaki (2005-05-28 14:30) 

euridice

1974年ザルツブルク音楽祭での、カラヤン対ストレーレルの話がルネ・コロの自伝にあります。天才対天才はなかなか一筋縄ではいかないようです。コロの観察では、二人は外見もまるで一卵性双生児(背格好、髪の色=シルバーグレイ)、黒い服など)で、遠目には判別がつかなかったとか。こんなのは絶対うまくいくはずがないとコロは思ったそうです。

最高に傑作なシーンは、最初のオーケストラ練習のとき。ストレーレルはいつものように、客席、舞台上を駆け回り、舞台装置関係者たちと、乱暴なイタリア語で、大声で叫びまくっていたそうです。カラヤンはここぞとばかり、指揮を中断、「今、ここではオーケストラ稽古をしているのだ!」と怒鳴ったのだとか。ストレーレルは真っ青になって、いたずらをして叱られた子どもみたいに「次からはもうしゃべりません」と謝ったのだけど、次からは全て、助手の女性に任せっきりになったらしいです。
by euridice (2005-06-04 11:07) 

TARO

あ、そんな話があるのですか。
このときの上演は当時「魔笛」を上演するのに最高のメンバーを集めて、とても期待されていたのに、ストレーレルの演出が大不評で、失敗に終わったとされていますけど。なるほど。
演出を投げちゃったんでしょうかね。
by TARO (2005-06-04 11:35) 

keyaki

カラヤンとは、ミラノ・スカラ座のカヴァレリアで、意気投合して、ザルツの魔笛の演出をやって、「後宮からの逃走」も・・・という予定だったようです。ストレーレルに言わせれば、魔笛に対する考え方が、根本的に違っていたそうで、ギクシャクしたそうです。ストレーレルは、自称モーツァルトオタクだそうです。
興味がありましたら、ストレーレルのオペラの演出に対する部分だけ読めますので、どうぞ。
http://briefcase.yahoo.co.jp/bc/mitodellopera3/lst?.dir=/&.src=bc&.done=http%3a//briefcase.yahoo.co.jp/&.view=l
by keyaki (2005-06-04 13:51) 

euridice

>モーツァルトオタク
コロの自伝からもうちょっと引用すると、ストレーレル、歌手たちを前に、演技指導どころか、舞台での動きかたとかもそっちのけで、毎日何時間もひたすらモーツァルトについて講義していたとか。歌手たち、モーツァルトについて知らない事はないほどになったけど、舞台でどこに立つか、どう去るかなどは全然知らなかったんですって。
by euridice (2005-06-04 14:58) 

TARO

>keyakiさん

ストレーレルのインタビュー、ありがとうございます。
ストレーレルが「魔笛」にどういう解釈を施しているのか、非常に興味あるところですが、映像すら残されていないのが残念です。

ストレーレルは大物なので、アバドでもちょっと遠慮するところがあるんじゃないでしょうか。「マクベス」でマクベス夫人が手紙を読む部分、舞台では夫人ではなくマクベスに読ませて、その声をスピーカーで流したらしいんです。が、DGの録音ではアバドは、ちゃんとマクベス夫人に担当させています。ここはアリアのシェーナにあたる部分なので、それが当然の処置なのですが。舞台ではアバドがストレーレルをたてて、妥協したんじゃないかという気がします。

>euridiceさん

それはまた・・・なんか笑っちゃいますが、いったいストレーレルさんの頭の中は、どうなっちゃってるんでしょうね??
しかもその歌手たるや、ヘルマン・プライとかエディット・マティスとかレリ・グリストとか、代表的なモーツァルト・シンガーですよね。
ストレーレル以上にモーツァルトには詳しいかもしれないのに(笑
by TARO (2005-06-04 23:06) 

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